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深淵の王  作者: 伊里谷あすか
三、血の円舞曲
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3―11 反発

 綾が立ち去ったのち、遅れて来た揚羽たち情報部の術師に後を任せ美咲と鳴海、そして陽方は煉賀家当主である絢斗へ報告を行なった。そして絢斗の意向により、空嶺に協力を仰ぐため礼を兼ね翌日二人は空嶺の家を訪れたのだが………



「確かお昼過ぎに来てください、って陽方さん言ってたよね?」

「そのはずですけど……えっと、今一時半だから、普通にお昼過ぎですよ」

「本当にここなのかな?」

 門より先に見えるのは緑の木々ばかり。人が住んでいるとは到底思えない有り様だった。

「一応教えてもらった通りに来ましたし、表札もあるから場所は間違ってないはずです」

「だよね。……どうしよう」

 二人そろって途方に暮れる美咲と鳴海。しばらくして、美咲が口を開いた。

「結局、綾来ないみたいだねー……」

 一応後から電話して一緒に行ってくれないか尋ねたのだが、『用事があるから』と切られてしまった。(しかも掛け直したところ携帯の電源ごと切られていた)

「………来なくてもいいですよ、あんな奴」

 不機嫌そうな声色で鳴海が応える。その目にはわずかに剣呑な光が宿っていた。

 そんな従兄弟の様子に美咲は呆れたように溜め息を吐く。それを見て鳴海が少し眉を寄せ、あさっての方向を向いた。

 沈黙が広がり、居心地の悪い空気が二人の周りを漂う。穏やかな昼下がりには似つかわしくない雰囲気のせいか、街の喧騒がやけに遠く聞こえた。

「……美咲さんは」

 意外にも、先に話しかけたのは鳴海だった。

「どうしてあいつと普通に話せるんですか」

「……どういう意味?」

「…何年も行方不明で、久しぶりに帰って来たと思ったら名前が違うだの精霊術だの勝手なことばかり。美咲さんに心配かけてたのまったく理解してない。…………俺の記憶が正しければ、絢文は(・・・)あんな自己中な奴じゃなかった。落ち着いてるのは変わってないけれど、喋り方も違うしそれに」

「――もっと穏やかで優しかった?」

 一瞬、鳴海は目を見開いて美咲を見、直後慌てて目を逸らした。その様子から自分の言葉が正しかったとわかり、思わず美咲は笑ってしまった。

 どうやら、鳴海の綾に対する反発は昨日の試合が原因のものではなく―――幼なじみだった絢文との違和感のせいであるようだ。

 遠くを見ながらも、突然笑い出した美咲が気になるのかちらちらと視線を向けてくる鳴海を視界に入れながら、美咲はゆっくりと口を開いた。

「私はさ、確かに心配もしたし突然すぎてずっと怒ってばっかりだったけど……落ち着いたらすごく安心したんだよね」

「……………」

「良かった無事だったんだ、って。それに、――――私は綾の今の性格嫌いじゃないんだ」

「……どうして」

「昔、綾が…絢文がいなくなる少し前なんだけど………」

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