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深淵の王  作者: 伊里谷あすか
三、血の円舞曲
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3―6 術式

 透明な剣はどうやら氷でできているらしく、お互いが軽くぶつかる度に澄んだ硬質な音を立てる。

「美咲」

「な、なによ」

 急に話しかけられ、なんとなく警戒しながら美咲は応えた。綾が続ける。

「“歪み”の封印は頼んだ。僕にはどうにもできないからな」

「え、私が!?」

「お前以外に誰がいる」

 突然のことに呆然とする美咲。その様子を見て綾は溜め息を吐いた。

「あのな………、僕は呪術を使えないんだ。一時的に抑えこむことはできるかもしれないが、封じるのは無理だ」

 あまりに堂々としているので忘れていた。綾は呪術が使えない。呪術抵抗がない彼には、呪力を扱うことさえ危険が伴うのだ。つまり、“歪み”を封じるのは美咲の役目。

「わかった……。私の力、しっかりと見ときなさいよ。あんたがいなくなってから、どれだけ強くなったのか!」

「ああ、もちろん」

 綾の返事を聞くと同時に、美咲は駆け出した。目指すのはもちろん“歪み”。少しずつ巨大化する黒い円を、一刻も早く封じなければならない。

 美咲は走りながら、左手に持った何十という符の中のうち五枚の符を引き抜いた。自身が用意できる符の中でも最高クラスの呪符で、五行の力をこめてある。

「まず―――木!」

 投げられた呪符は矢のように飛び、“歪み”の上端で静止した。

「次―――火!」

 もう一枚、今度は右上で止まった。

「――――土!」

 続いて右下で動きを止める。

「――――金!」

 左下の空中で固定された。

「ラスト――――水っ!」

 美咲が叫び、呪符が左上に浮かんだ。が、まだ完成ではない。この五枚をベースにして術式を編む必要がある。

 大きく深呼吸をすると、美咲は柏手(かしわで)を打った。

 パン、パンッ!

 その音が辺りに染み込むようにして、周りの空気が変わる。

 ―――神社などで行われる柏手は、本来不浄を追い払う為のものだ。音の届く範囲を浄化し、守る為の結界。それをすることによって、術は安定した効力を発揮できる。

 柏手の音に反応したのか、異形の吼える声が聞こえた。だが美咲はそれを無視する。今しなければならないのは、“歪み”の封印ただ一つのみ。

「木は力を奪いて土に()つ。よって五行は流転す」

 美咲は“歪み”を囲む呪符のうち、上――木の符を指差すと、右下――土の符に向かって移動させた。それをたどるように白い直線が一本呪力で描かれ、木と土の呪符を繋いだ。


中途半端ですみません。もう少しで異形との戦闘は終わりです。

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