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深淵の王  作者: 伊里谷あすか
三、血の円舞曲
39/90

3―5 作戦

 黒い液体からなんとか逃れた美咲と鳴海。

 息を弾ませている二人の隣で綾がゆっくりと息を吐いた。

「……ふう、危なかっ」

「「あんたが言うか!!?」」

 二人の声が重なるが、綾は気にせずルキアに話しかける。

「にしても風じゃちょっと無理そうだな。切り刻んでもまた溶けて復活しそうだし」

『ですね……。今のが効かないってことは、風での攻撃じゃ倒せそうにないです』

「ってことは“あっち”か……」

「ちょっと綾。結局あれを引き離して“歪み”を封じるってどうやの?」

 会話を遮り、美咲が言った。この二人(?)を放っておいたら延々と話し続けていそうだ。危機的状況にある今、悠長に会話している場合ではない。

「そう難しいことじゃない。囮を使って引き付けつつ、“歪み”から遠ざかった瞬間に封じればいいだけだろう」

 確かにそうだ。あの異形が“歪み”の近くにいるからこそ厄介なのであって、離れてしまえばただいつも通りに封じることができるのだから。だが……

「まぁ、その方法なら確実だろうけどさ……」

「……囮って、誰がするんだよ」

 そう、この作戦に必要不可欠なもの。それは囮。

 当然誰もやろうとする訳がなく、再び攻撃してきた異形の龍を避けた三人は全員ばらばらの方向に散った。“歪み”と美咲たちを頂点として、異形を囲むように四角形が描かれる。黒い龍をやや横側から見据えながら美咲が言った。

「このままじゃ、おんなじことの繰り返しよね……」

 その言葉に、美咲の反対方向にいる綾が言う。二人の距離はそれなりに離れているのだが、何故か普通に聞こえているらしい。

「だったら美咲、お前が囮をすればいいだろう」

「冗談!!絶対イヤ!」

「美咲さんにそんな危ないことさせれません!」

「じゃあお前がやれ」

 綾の言葉の矛先が鳴海に向いた。突然だったためか一瞬詰まったあと、噛みつくように言う。

「はぁ!?お前がしろよ!」

「どうやら敵さんはお前をターゲットに決めたらしいぞ」

「そんなわけ……って、え?」

 綾に反抗したものの、ふと異形に目を向けると鳴海は目を見開いた。

 直後、黒い龍の正面にいた鳴海は大きく後ろに跳んだ。一瞬にして鳴海が移動する前にいた場所の地面が抉り取られる。そしてそのまま――――鳴海に突っ込んできた。

「なっ!?」

 慌てて回避する鳴海を執拗に追いかけ回すように攻撃する異形。鳴海はできる限り小さな動きで避けながら、“歪み”から離れるように走り出した。

 後方から淡々とした声が聞こえる。

「その調子でよろしく」

「不本意極まりないけどな!!」

 綾に対して叫ぶ鳴海だが、徐々に異形の龍を引き連れて離れていく。一応囮を務めはするらしい。

「じゃあ、こっちも始めるか」

 刀は抜かず、いつの間にか片手に三本ずつ計六本の透き通る剣を持って、綾が呟いた。

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