2―15 虚偽
「はあ、お前何言って…」
「言っとくけど、話したこともあるから」
「はぁ!?」
いきなり自分のことを知っていると言われた鳴海は驚いて声を上げた。だがそんな彼の反応を見つつ綾は続ける。
「お前小学校に上がる直前まで煉賀にいただろう?」
「あ、ああ」
「よく考えてみろ、その時僕がここにいなかったと思うか?」
「あ」
「え、ってことはつまり……………鳴海、小さい頃私らと会ったこと忘れてたの?」
「い、いえ。美咲さんのことはちゃんと……」
「ほおぉ、美咲のことは覚えてて僕のことは忘れてんだ?」
「いやそうゆう訳じゃ…」
「悲しいなぁ。同い年とはいえ、一番年長だった僕のあとを付いてきて『兄ちゃん』と呼んでいたお前がこんな薄情者だったなんて」
「う、嘘だ………」
「嘘じゃないよ?私も呼んでたし」
すると美咲は少し考えこんだように黙り、やがて思いついたように顔を上げた。
「そっか!小さい頃仲良かったのに、何で鳴海は綾のこと毛嫌いしてるんだろって思ってたんだけど、これで納得!忘れてたんじゃ警戒もするよねって鳴海?どうしたの鳴海?」
美咲の真横で正座をしたまま鳴海は固まっていた。そして綾はとても気の毒そうな目で二人を見た。
「な、なによ綾その目は」
『まだ気付かないのか?ほんっと鈍感だな』
綾の肩の上で偉そうに言うルキアを、むかついた美咲はつかんだ。そしてそのまま障子を開けてふりかぶり――――
『ちょっとやめ、やめろってば!どうにかしてくださいマスタ〜!!』
大切な自分の契約精霊のピンチ(?)に対して綾は、
「口は災いのもとだよ、ルキア?」
そう言って口元を指しながらにっこり微笑んだ。なんとなく、顔に『自業自得』って書いてある気がしてくる。
『そんなぁ〜!助けてくだ』
「逝っけえぇぇぇぇぇーーーーーー!!!」
『ぎいぃゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!』
ものすごい勢いで外に放り投げられたルキアの姿が見えなくなってから、美咲は改めて綾に向き直った。鳴海もなんとか復活したらしく、頭を抱えながらも口を開く。
「そ、そんなことはどうでもいい」
「そんなこと、ねぇ…?」
「そんなことはどうでもいい!!何でお前は嘘をついたんだ?」
「嘘!?え、どこが?何が?」
思いもよらない質問に驚いている美咲に説明するように鳴海は続けた。
「最初、当主様の部屋で俺たちと会った時、こいつは『水流術師』と名乗りましたよね?でもさっきの集まりの時は『精霊術師』だった。まぁこれは別にいいんです。今の……その、信頼?の違いで説明できますし。でも、『水流術師』ってどう考えても水の精霊術師でしょう?なら水の精霊と契約してるはずですから、氷を出せるのは当たり前です。けど風の精霊と契約してるなんておかしい。だから、なんか嘘をついてるんじゃないかって」
少し考えている様子だった綾は、そう言われて何か思い出したらしく、唐突に言った。
「ああ、そういや言ってなかったな。‘協会’の術師の呼称と階位」
明けましておめでとうございます。石榴石です。
今回綾が変だなぁ。