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深淵の王  作者: 伊里谷あすか
一、始まりの邂逅
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1―2 封印

(お義父さんは代理を‘協会’から寄越してもらうって言ってたけど、そんなやつ信用できるのかな?)

実のところ、美咲は‘協会’――正式名‘術師支援協会’を好ましく思っていない。そしてそれは鳴海を含むほぼ全員の煉賀家の呪術師が同じように考えている。

‘協会’といえば聞こえは良いが、実際はどこにも所属していない、いわゆるフリーの術師を登録し、仕事を斡旋するという機関だ。世界中に支部があり、様々な能力を持った術師が登録されているが、所属がない術師はつまり煉賀のような一族から追われた術師や独学で能力を得た者であるため、あまりよい評判がないのだ。

だが質が高いことは確かで、今回のように特定の能力が必要な場合は特に頼りにはなる。

それでも好感が持てないのは、今まで‘協会’から派遣された人物にろくなやつがいなかったからだろう。

以前の数人の行動を思い出し、美咲は頭を抱えた。

とにかく、‘協会’のやつは信用できない。


ピシリ、とひび割れる音が聞こえた。


「――来た!」

美咲が叫ぶと同時に鳴海が太刀を抜くと、抜き身の刃が月光を映して煌めいた。

それに呼応するかのようにピシ、ピシという音が大きくなっていく。

やがて窓ガラスが割れるように、鳥居を門として空間にヒビが入り――歪んで割れた。

出現した“歪み”から犬らしき姿の異形が二匹飛び出し、鳴海に襲いかかる。

「鳴海、いつも通り足止めお願い!“歪み”を封じるわよ!」

「了解、です!」

“歪み”はこちらに出た異形が倒されるたびに新たな異形を吐き出す。なので“歪み”を封じるまで異形を倒してはならないのだ。

鳴海は太刀を器用に扱い異形を翻弄している。今のうちに封じなければ。

右手の人差し指と中指を重ねて剣印をつくり呪力を集め、鳥居と直線に並ぶようにして構えて空を薙いでいく。

「我が地に災い為すモノよ――」

右下に一閃。

「汝此処に留まることを赦さず――」

左上に一閃。

「其処より戻り還り給え――」

右真横に一閃。

「此岸に渡ること叶わず――」

左下に一閃。

「彼岸の果てにて朽ち去り給え――」

右上に一閃。

そして呪力で描いた五方星が完成し、

「これにて因果は成った。汝在るべき処へ還りて終結と為す」

剣印を大きく振り下ろすと、“歪み”は砂のように砕け散り消え去った。


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