表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深淵の王  作者: 伊里谷あすか
二、兆しは夕闇に
28/90

2―12 疑問

 

「綾、どういうこと?」

「何がだ?」

 あのあと、美咲たちは揚羽に連れられ屋敷の一角にある和室にやって来ていた。

 ちなみに、揚羽はさっき

「ごゆっくり〜」とのんきな笑みを浮かべて部屋を出ていったのだが、このメンバーが集まってゆっくりできるのか甚だ疑問である。

 そして案の定、彼女が居なくなった途端なんとも気まずい空気が流れた。と言ってもそれは美咲と鳴海にとってだけであったのだが。

 三人とも無言のまま時間がたち、結果しびれを切らした美咲が言ったのが先程の言葉なのである。

「まず私のところに来た妖精のこと。もうひとつは封筒に入ってた紅い石について。とぼけたりしないでよ」

 詰め寄る美咲に綾はあっさりと言った。

「その妖精はこいつだろう」

「え?」

 パキン、と彼が指を鳴らすと一瞬視界が歪んだ。そして気付いた時には先程までいなかったものが現れていた。

「あ、さっきの!」

『わわっ!?』

 美咲が声を出すと、それはかなり慌てて綾に飛び付いた。

『ちょっとマスター、勝手に術解かないでください!』

「ああ、悪い。こうした方が手っ取り早かったんでな」

 そう言って軽くあしらわれ、妖精――ルキウスは膨れっ面で黙りこむ。

「なんなんだ、これ」

 それらの一連の出来事をぽかんとした顔で見ていた鳴海が、ようやく口を開いた。

 その直後、ルキウスの言葉の矛先が彼に向かう。

『これって言うな!私は風妖精ピクシーのルキウスだ。お前とりあえず謝れ』

「やめろルキア。無駄にややこしくなる」

 そう綾に言われ、しぶしぶながら体を引くと彼の肩に座った。だがその目は警戒心丸出しで鳴海を睨んでいる。

 ふと、美咲は綾の言葉に違和感を感じた。よくよく考えてみると、自分が知っているものと違う部分があることに気づき彼女は声をあげる。

「………綾、さっきルキアって言った?」

「ああ。…………もしかしてこいつ、ルキウスって名乗ったか?」

「うん」

「こいつの名前はルキアだ。ルキウスっていうのはルキアの男性名のことで、こいつが勝手に名乗ってるだけ」

『マスター、なんで言っちゃうんですか……』

「隠すことでもないだろう。女なんだから女名名乗れ」

 そんな会話を見ながら、美咲が精霊たちにも性別あるんだ……と考えていると、鳴海が苛々したように言った。

「………つまり、よくはわからないがそのルキアとやらはお前の契約精霊なのか?」

『マスターをお前呼ばわりするな!』

「あれ?契約精霊のこと知ってるの?」

 口を挟んだルキウス、いやルキアを無視して美咲は鳴海に尋ねる。

「え?まあ一応。呪術以外でも基礎的な術の種類と仕組みは一通り」

 とたん無言になる美咲。つられて鳴海も黙っていると、綾がおもむろに口を開いた。

「美咲、僕には小学生のときお前と一緒に揚羽さんから精霊術について教えてもらった記憶があるんだが」


読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ