2―2 精霊
「契約精霊?」
『そうだ』
「あなたが、綾の?」
『そうだ。わたし以外に誰がいる』
「…………」
『なんだその目は』
「いや、あのさ………………契約精霊ってなに?」
盛大なため息をつく妖精――ルキウス。美咲の目線より若干高いところに浮いているので見下された感があり、少しイラついてくる。
『まさかここまで無知だとは………』
「む、無知で悪かったわね。そんな哀れむような目で見ないでよ」
『哀れむような、じゃない。実際哀れんでいる』
「何よっ。人がせっかく恥をしのんで尋ねたっていうのに!」
『ばっ、馬鹿!大声出すな!』
顔を赤くして叫ぶ美咲の口をルキウスは慌てて塞ごうとする………が、サイズ的に断念。仕方なさそうに耳元に回りこみ、少し警戒しながら言った。
『わたしが此処にいるってばれたらまずいんだ。マスターからも注意されたし』
「なんで?」
『まぁ、理由は色々あるんだ。………で、契約精霊が何かだったな?』
誤魔化された気がしたが、確かに知りたいことではあったので素直に頷いておく。
内容を考えていたらしく、少しの間をおいてルキウスは話し始めた。
『とりあえず、精霊には階位があることは知っているな?』
「そりゃ、まあ…」
『で、そのランクの最も低いのが《元精》、略してフェノ。自我を持っていないから、自然現象そのものを指す。台風なんかもこの《元精》の集合体だ』
「はぁ」
『次が《精霊》。一般的に精霊と言ったらこのフォースを指す。各個としたものではないが自我を持つ。精霊術の強さは《精霊》の数で決まる』
「んー?」
『その次、わたしが当てはまるのが《妖精》、または上位精霊。現象ではなく生命がある、つまり《元精》や《精霊》と違って死ぬこともある。種族があって、もし死ねば同じ種族から新しい生命が生まれる。種族の例は、ピクシー以外の風妖精でシルフ、水妖精のケルピーやウンディーネだ』
「へぇ…」
『最後が《竜》。常に各属性に一個体しかいない究極存在で姿形さえ不明』
「ほー」
『そのうち《妖精》と《竜》には《元精》と《精霊》を操れる力がある。個体によって力の強さは違うけど、《妖精》たちと‘契約’を交わすことでその力を借りて自由に使えるようになる。そして‘契約’を交わした人間を精霊術師、精霊のことを契約精霊と呼ぶわけだ』
「…………」
『……わかってないだろ?』
「………はい」
『だろうなぁ』
ものすごくむかつくが反論できない。本当にわかっていないのだ。
美咲の顔は妙な具合にひくついていたが、何とか自制出来ているらしい。かなり怖いが。
『……とりあえず、精霊には階位があって下から《元精》、《精霊》、《妖精》、《竜》。その中でも人間と‘契約’した《妖精》と《竜》を契約精霊と呼ぶ―――これだけはわかったな?』
美咲はしばらく唸ったあと、頷く。
「まあ、なんとか」
『なら良い』
はぁ、とため息混じりでルキウスは言葉を続けた。
『同じ一族、年齢なのに何故理解できないんだ。マスターはこれより難しい言葉をいくらでも使っているというのに』
「それは失礼しましたっ。で用件は何なのよ?」
説明ばかりですみません。しかもわかりにくいです。
ちなみに精霊の区別は作者の創作です。この小説だけの設定ですので、一般的なものと違いますが気にしないでください。