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始まり

更新はあまり早くありませんが確実に少しずつ進めていこうと思いますので、どうか長い目で見てやって下さい

 うだるような暑い日差しが照りつける。

あたりでは同じ薄茶色の格好をした人々が黙々と作業を続けている。

ある人は土嚢を運び、またある人は、人の頭ほどある石を運ぶ。

その頭に犬のような耳が付いているものがいれば、羽を生やしているものもいる。

見ればその首には皆同じように黒い刺青入の首輪をしている。

まるで首を締めるかのように描かれるその茨の紋は人々を強制させる戒めの証。



「俺は何をしている」



天高く輝く陽を見上げ思う。

先ほどまでの記憶はある、この体にも見覚えがある、不意に視界の端に見えた髪の色も俺のものに違いはない。

俺は何故こんなところで立ち尽くしている?

いや、彼ら彼女らと同じで俺もその命令に囚われていたはずだ。

俺も奴隷に身を落としこの終わりの見えない建造に着手していたはずだ、いや違う。



『暗愚な王のもとで絞り取られるだけの生活に何がある!! 剣を持て、これは聖戦だ! 民の手に国を取り戻す!! 』

『『『『うぉおおおおおおおおおおおおお!! 』』』』



俺は……そうだ俺は反乱軍を率い国を……国を国民の手に取り戻したはずだ。



『隊長、順調ですね』

『慢心するなよ、俺たちはこんな所では終われないからな』

『はい』

『行くぞ、俺についてこい、これで決着をつける』



違う!

取り戻してなどいない!!

最後の戦いだと思っていた、あの戦い。

俺たち総勢80万による最終決戦に挑んだはずだ、王を守る盾は15万、勝つハズだった!!

忘れるものか!



『白旗です! 隊長』

『ああ、行こう、裏にも部隊を配置しておけ、逃げ場はないぞ王よ』



開かれる門、俺たちの事を歓迎する国民の声。

王城へと導く人々の列。

熱狂に包まれる大通りに響くは賞賛の声。

そして――

人の波より駆け出すは裏切りの刃。



『む、娘が、命が……ぁあ、ごめんなさい! ごめんなさい! 』

『貴様っ!? 隊長!! 何故です! 何故――』



副隊長である彼女の抜剣を咄嗟に制し口を開く。



『――』



ああ、俺はなんと言ったのだろうか。

泣き崩れる彼女に俺はなんと言ったのだろう、消え行く意識の中そう思う。


思い出した!! 俺は勝利するはずだった、なのに、なのに!!

膝から崩れ落ちる。



「うぅ……ぅ……ぁあああああああああああああああ――」



ここは何処だ?

人以外の人種など聞いたことはない。

こんな場所は聞いたことない!

俺の記憶にあるこの奴隷とは何だ?

そんなおとぎ話のような首輪など知らないぞ俺は!

理不尽な世界に慟哭する、理解の追いつかない思考を吐き出す。

黙々と作業を続けるものの中で雄叫びをあげる彼の姿は異質だった。

慌てたように奥から騎士の格好をした者たちが現れる。



「初期のものが何事だ!? 」

「まさか効力を失ったか! 」

「それともその身が壊れたか? 」

「ちっ、連れて行け」



彼らが何を言っているのかわからない。

強引に両腕を取られ連れられていく、その痛みも気にならなかった。

ただ漠然と思い浮かぶ思考は後悔。



「何故俺は生きているのだ」



理不尽なまでに残酷な世界への怒りと弱い自分への怒りだった。

一連の出来事にすら見向きをせず光を宿さぬ目で黙々と作業を続ける人々の姿が、彼の目に強烈に焼き付いた。







 連れてこられたのは地面に埋め込まれた囲の形の鉄格子の前。

鈍い音を上げながらその扉が開かれ、俺は後ろからきた衝撃でその中へと飛び込んだ。

自然と怒りが湧いてこなかった、そこまで頭が回らなかったというのもある。

一瞬の暗闇の後とても広い空洞に出る、目の前に岩でできた円柱の群れが見える、所々から差し込む光が幻想的だ。

この下は岩だろうか、このまま行けば俺は死ぬのだろうか。

考える暇もなく景色は一瞬で流れ豪快な水柱を上げ俺は水面へと突っ込んだ。

水か!?

とっさに閉じてしまっていた目を開く、光がある方へと必死に藻掻く。



「ぷはっ」



水を吐き出し水面へと上がる、泳ぐ方向は間違っていなかったようだ。

なんだ俺、生きあがいてるじゃないか、自然と笑みが漏れる。

改めて空洞内を見渡すとその広さに驚く、そして地面が岩で出来ていることに。

ここが深い水たまりなのは偶然かそれとも自然のイタズラか。

水面とはいえ打ちどころが悪いと死ぬという、まだ俺にチャンスは残っているということか。

ふと水際を見ると黒猫が一匹こちらを向いて佇んでいた。



「にゃー」



そう一声鳴いた後振り返り向こうへと歩いて行く、一度振り返りこちらを見た後また歩みだす。

誘っているのか?

水に浮かびながら考える、まるで催促するようにもう一度泣いたその猫へと泳いでいった。

水から上がる、意外と綺麗な水であることにも驚いた、藻が生えていない。

柱の陰を縫いながら黒猫を追いかける。

ひょいひょい進んでは振り返ってこちらを向く黒猫に心が落ち着いていくのを感じる。



「どこに連れていくつもりなんだ? 」



猫だから当たり前だがこちらには返事をしてくれない。

黒猫がふと、岩陰へと進んでいく、慌てて追いかけたがそこにその姿はなかった。



「おい」



呼びかけには答えてくれない、どういうことだ?

背後に気配を感じて振り返る、まただ、見たことない人間が現れた。



「ようこそ」



少女の声音でそういった小さな女の子、ローブを纏っているがフードを被っていないので顔がよく見える。

藍色の毛並みで、あるべき場所に耳がなく上に猫の耳に酷似したフサフサの耳が付いている、ローブの裾からは細い尻尾も見える、心なしか目の虹彩が縦に割れている気がした。

それらはまるで生きているかのようにぴくぴくと動く、なんの冗談だこれは?



「すまない、ここらで黒猫を見なかったか? 」

「いえ、猫を見たのですか? 」

「ああ、つい先程までいたのだが」

「猫が落とされるとは、いえ何処かに抜け道があるのでしょうか……」



咄嗟に現実逃避気味に、当たり障りの無い話題を選んでしまった。



「ついてきてください」



少女は口数少なにそう言う。

害がないというのは気配から感じられる。



「その耳、触ってもいいか? 」

「貴方の首輪、初期の首輪を嵌めた貴方がここにいる理由、先程からのあなたの様子を見ている限りあなた自身は狂ってはいないようです、ならば記憶に一時的な障害があると私は推測します。

 ですので今回は見逃しますが次はありません、異性の獣部に触れることは立派なセクハラです、貴方は無いのですか? 」



獣部? まさかそれが本物の体だとでも言うのか?



「獣部とはその耳のことを指すのか? それは本物だと言うのか? 」

「……本物、とは異な事を聞きますね、差別として受け取りますよ? 次からは気をつけてください」

「ああ、済まない気をつける……俺にはそれはないな」

「目で見える範囲でなくとも構いません、背中に小さな羽や獣毛があったりしませんか? 」



言われると気になるのが人間というものだ、咄嗟に服を脱ぎ背中を触って確かめる。

もどかしい自分ではどうなのか分からないものだ。



「どうだ? 俺にその部位はあるか? 」

「お、お兄さん!? いきなり脱ぐとは、こ、心の準備がまだです」

「お兄さん? あ、ああ済まなかった、そう言われると気になってしまって」

「こほん! えー、そうですね、立派な体です……ほんとに無いですね、とても珍しいことです」

「そうなのか? 」

「そうです……色々と聞きたいことがあるでしょう、もう少し行けば私たちが居を構えている開けた場所に出ます、そこで話しますので行きましょうか」

「私たちというのは俺のように、上で何か問題をおこし、ここに入れられた者のことか? 君といい他にもいるということか」

「そうです、ですが一つ訂正を、入れられたのではなく、ここに捨てられたのです」



濡れている服を一度脱ぐともう二度と羽織りたくないものだ、幸いここはそよ風が吹くぐらいで寒くはない、上着は腰に巻いておくことにする。

そうして彼女の後ろをついて行く、捨てられたのならいかにして生き延びているのだろう、ふと思った疑問もそこにつくまでは胸の内に閉まっておくことにした。







 居を構えていると言ってももそれは布を張っただけの簡易のテントのようなものだった。

こちらに気づいた男性が声をかけてくる。



「よぉ、こいつが新入りか? よろしくな」

「ああ、よろしく」



気さくな男性だった、無精髭が似合っている、ガタイもそこそこいい。

ただ差し出された右手ではなく、左手は毛に覆われ、なかなかに凶暴そうな爪を持っていた。



「おう? この手が珍しいか? そういやお前さん少ないほうなのか、どこにも見えないが」

「獣部というものを指しているのなら俺にはないみたいだ」

「そのようです、私が確認しました」

「へぇー、おうおう、隅に置けねえなお前さん、あってそこらの少女に裸を見せるとは」



少女が冷たい目をしたまま口を開く。



「取り消しを要求します、目が届かない所を見ただけです」

「わかったわかった、冗談だからそんなに睨むなって」

「それで、話を聞いてもいいか? 」



俺がもっとも気になっていることに話を戻す。



「その前に自己紹介をしましょう、私はミア・ローウィン、こちらの彼はラウル・ロンドルフ」

「俺はルイス・アルベルト、だ、それで獣部とはどういうものなんだ? 」

「何だお前さん、記憶喪失か? そんなもん髪の毛ってなんだって言ってるようなもんだぞ」



嫌味のない声でバカにしたようにラウルが言う。

それほど初歩的なこととは、根本的に俺が知ってる世界とは違うようだ。



「ラウルは黙っていてください、貴方はデリカシーが無いので話がややこしくなります」

「おうおう、嬢ちゃんも何時にもましてきついぜ」

「こほん、ラウルの言い方はちょっとあれですが、実際にそれ程に当たり前の事なのです」



咳払いをしてこちらに向き直したミアはそう言う。



「誰もが獣部を持ちます、その大小はあれ体の3割に満たない場合がほとんどです。

 貴方のように何処にもない所謂人間、もしくはその逆である全てが獣部である所謂動物、この2つは神格化されるほどに貴重です、特に動物の方は」



だから猫がいるというのはただ事じゃないのですと彼女は付け足す。



「何故獣部を持つのかは定かではありません、一説には力に関係しているとも言われていますが真実はわかりません」

「力? 」



ここに来てまた知らない言葉が出てきた、口調からして腕力などとは違うようだ。

そう思っていると彼女が両手を差し出す、手で作られた器の中に水が満たされる。



「これが力です、貴方が落ちてなお、生きていられるのは私の力です、打ち所悪く死ぬ人もいますがそれは私にはどうすることも出来ません」



悔しいですがと彼女は言う。



「ちなみにこんなことも出来ます、元が私の水なら消すのも簡単です」



そう言って彼女はこちらに手をかざす、服が軽くなる、水を飛ばしたということか!?

正直に言って理解が追いつかなくなってきた。

他の力を見ないことには自分を納得させることが出来なかった、だからラウルに問う。



「ラウルも力があるのか? 」

「いや、俺のこれは少し腕力が強いってぐらいのもんだ、大剣が使えるぐらいのもんだよ」

「そうか」

「ああそれと、ここにいるミアもお前さんほどではないが稀少だ、肘から先、膝から先、それと顔以外は覆われているからな」

「ラ、ラウル!? 貴方それを何処で」



顔を真赤にして慌てている、表情のコロコロ変わるやつだ。



「何処ってそりゃ、エマに教えてもらったんだが」

「なっ!? あの子は! 」



言い争っている二人を見ていると旧知の仲のように見える。

俺よりだいぶ先に落とされたのだろう。

そう思いながらふと二人の首にはめられた首輪に気づく。



「そう言えばこの首輪、どういう仕組みで命令を強制するんだ? 」



言い争いを終えてこちらに向き直ったミアが言う。



「そもそもここに捨てられた人々は皆首輪の効力が切れたものか、首輪に、力をもってして抗った者です、ここにはいませんが後数名暮らしています。

 首輪についてはどのくらい知識がありますか? 」

「いや、奴隷になるとしか」

「それでしたら根本からお話する必要がありますね。

 首輪には効力はありません、首輪に描かれたこの紋様、それに私たちを強制する力があります。

 これを作ったのは今は亡き呪術の力を持った一人の女性です」



そう言って一旦間を置く。



「呪術が持つ強制力はその人の力量に左右されるといいます、いかなる言葉でも従わせる者から、ひとつの命令しか行えない者もいます。

 そして彼女は正にその力の頂点にいました、彼女が作った刻印は彼女亡き後も効果を発しあらゆる命令を可能にしたと聞きます。

 ここに来て聞いたことですが、彼女亡き後もにたような力を持つものが何人かは現れているそうです。

 私達が嵌めている首輪はその人々が作ったものでしょう。

 貴方のそれは初期の頃のものだと言われています、紋様の精密さが違うそうです、その貴方が自我を取り戻した」



つまり、と彼女は言う。



「効力が切れた、何者かがそれを破壊したもしくはその身がもたなくなった、原因は色々と考えられます。

 なんにせよ、その力の強さのせいなのか記憶はなくなっていますが、命令されるだけのお人形さんからは脱出できたのです、よかったですねお兄さん」

「詳しいんだな」

「私は結構前からここにいますので」



抑揚のない声で彼女はそう言った。

おとぎの国に迷い込んだ気分だ、頭が痛くなってきた。

気分転換にと周りを見回す。

それにしても他の人というのは何処にいるのだろうか。



「ふと気になったんだが、俺はこの作業着だがミアにラウル、それにテントに使われている布、差し入れでもあるということか? 」

「皆に紹介するついでにそこにも案内しまよう、貴方もその格好はいやでしょう? 」



作業着の上着を腰に巻いた俺を見て言う。

確かにこれは嫌だな。

それにしても二人共この首輪、効果がなくなっても取れないのだろうか?



「では行きましょうか、移動ばかりで申し訳ありません」

「いや構わない、むしろ教えられるばかりで申し訳ないくらいだ」

「……先程から不思議そうに見ているこの首輪、私達が効力が切れて尚、これを外さない理由は貴方にもわかるでしょう」



心がこもってないことを悟られたのか、見透かしたようにそう言われる。

頭をかきながら二人の後ろについていった。







見えてきた景色は成る程、と納得するには十分だった。



「ゴミ溜りか」

「ええ、ここに色々なものが放り込まれるのです」



人と物を捨てる場所が違うのは確実に殺すためか?

水に気づいていないのだとすればそうなのだろう。



「おい皆、新入りだぜ」

「ふんっ」

「ルル、行こ」

「うん、ロロ」



青年に、敵意をあらわにする女性、双子? の兄妹。

そしてフードに顔を隠した小さな子。

その子が口を開く。



「力は力を呼ぶ、それは偶然でも必然でもない」



いきなりで驚いたが少女のようだ。



「それはどういう」



意味が無いことだと知っていても、つい問い返してしまう。

彼女が答えるよりも先にミアが彼女に詰め寄った。



「エマ!! ラウルに私のこと教えたでしょ! 」

「必要」

「いらないからね! そんな事教えてもなんにもならないよ! 」



話がそれていく、流れを見てラウルが代わりに口を開いた。



「エマは予言者だそうだ、確率は6割くらいだな、結構当たるぜ」



仮にそうだとするならその言葉の意味は俺も力を持つということなのだろうか。

エマに躱され不機嫌なミアが戻ってくる。



「まったく、こほん、私たちはこれがあるからこそかろうじて生きているのです」

「食料も落とされるのか」

「腐っているものがほとんどですけどね」



布はあまり多くなく、残飯の異臭と廃材が多く存在している。

いくらゴミ山といえど上には戻れそうにない。

どうする?

いや何がしたい?

混乱する頭が自然と答えを求め、意味もなく彼女らの話を聞いていたことは冷静になりつつある今ならわかる。

俺は何をしたいのだろう。



「それにエマはすごいんだよ、首輪を壊せるの」

「壊せるの、予言の恩恵なんだって」



双子がそう言う。

思考が邪魔をし、そんな事すらどうでも良くなっていた。



「自己紹介しないとな、俺はマイルズ、こっちの彼女はライラ」

「ちょっと! 」

「僕はロロ」

「私はルル、私がお姉ちゃんですのでお間違えなく」

「僕のほうが年上だろ? 」

「私なの! 」



ああ、本当に何がしたいのだろうか。

ところどころに見え隠れする彼らの獣部を見て思う。

ここは本当に俺の知っている場所ではないのだろうか……



「ん? どうしたの? 」

「おい大丈夫かルイス、お前さん力のない目をしてるぞ? 」

「あ、ああすまない、俺はルイス・アルベルトだよろしく」



ふと、視界の端を黒い影が通り抜ける。

さっきの猫か!?

振り向いてみるものの姿が見えない、気のせいか?

ふと目線の先にボロいマントを見つける、灰色のそれに目を引かれる。

少し冷えてきたこともあり上着を羽織直してそれの元へ近づく。



「これはもらっても構わないのか? 」

「ああ、別に構わないぜ」



膝裏あたりまであるものだったが、動きは阻害されないし風は通さないから便利だ。

少しずつ先が見えてくる。

理由なんてどうせ後から付いてくるのだ。



「探しものは見つかりましたか? 」



エマという少女が声をかけてくる。

予言者と言っていたが成る程。

あたりを見回す。

どうせ俺が出来ることなど限られているのだ。

今までもこれからも、俺はそうして生きていくしかないのだから。

一箇所にまとめられた錆びた鉄の山に近づく。



「それは武器を集めてるんだ、いずれ反旗を翻すために」



そう言った彼はマイルズと言ったか?

ラウルよりは若く見える、ガタイは良いわけではないが細くはないといったところか。

鉄の山から一本の刃が盛大にこぼれ、錆で茶色くなった剣を引き抜く。

持ち手のところにそこら辺に落ちていた布の切れ端を巻く。



「おいおい、やる気があるのは構わねえがどうするつもりだ? 出口は上にしかないぜ? 」



呆れたようにラウルが言う。

先にここに来た彼が言うのだからそうなのだろう。



「力で何とか出れないのか? 」

「そう誰もが持ってるもんじゃなくてな、ミアにエマ、後ロロとライラ、おっと結構持ってるじゃねえか」

「ロロは火をともせるんだよ」

「ミアは聞いたかな? エマは予言だね、それでライラは魔剣を使える」

「おいマイルズ、いい加減にしろ」

「魔剣? 」



なんだそれは?



「力ってのは本人に引きずられると言うか本質をあらわすといった感じでな、ライラにとってそれが魔剣だってことさ」

「死にたいのかマイルズ」

「いいじゃん別にそれくらい」



そう言って彼女は虚空から剣を取り出した。

必死に逃げるマイルズは滑稽だったが驚いている暇はない。

我が目を疑ったのは言うまでもなく、そして力というものが少しづつではあるけれどわかってきたのも確かだ。

ではこの感覚もそれなのだろうか。

無意識にこの剣、かつて使っていたような直剣に迷わず手を伸ばしたのも、俺が生きているのもそうなのだろうか……

だったら俺は――

まるでパズルのピースが綺麗にはまった時のような感覚に陥る。



剣を右手に持ち、腰だめにする。

収まる鞘はなく役目を終えたその剣をもう一度舞台に引きずり戻す。

まるで俺みたいだと自虐の笑みを携える。



「何をしているのですか? 」

「下がってろ」



不思議だといった顔で聞いてくるミアを制する。

この感覚がそうだというのならなんとかなるだろう、違うというのなら……それもまた楽しいかもしれない。

剣を振りぬく、目指すは直径5メートルはある石の柱。



「冒涜する」



今までだってそうして俺は生きてきた。

平等などひとつも存在しないこんな世界だから。

無いからこそ俺は平等であらんとしてきたのだ。


まるでバターを切るように柱が切り裂かれる、不自然なことにその柱だけが綺麗に切れた。

絶妙な均衡を保っていた天井は唸りを上げ、残った柱を巻き込み少しづつ崩れ落ちる。

地下大空洞に光が差し込みだす。



「平等なんて存在しないこの世界に復讐と行こうか」



悲鳴をあげるミアや笑うマイルズ、焦るラウル、抱きあう双子、驚愕をあらわにするライラ、そして静かに俺を見つめるエマを尻目に俺は不敵に笑うのだった。

おかしな点、問題等ございましたら指摘いただけると幸いです><

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