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同じ映画にはならない

作者: 濁冷 呑
掲載日:2026/06/16

朝の光がまだ柔らかい。

まだ冷たい風の中、映画館に着く。

中では驚くほど人が並んでいて、なんだか熱く感じる。

みんな笑顔でドリンクやポップコーンを買い込んでいる。

私は買わずに、それを見つめている。

それぞれが話したりドリンクを飲みながら待ち時間を過ごす。

ちらちらと時計を見つめ、待ち構えている。


入場の時間になる。


別々に居た人間が、鰯の群れのように一ヶ所に向かっていく。


すっと、暗くなる。

映画は、淡々と始まる。

物語の中にいるはずなのに、暑いというには寒く、寒いというには暑くて、海流の中みたいに落ち着かない。


中盤から暗がりの中、ぽつりぽつりとスマホの画面。

海中のクラゲのように、やけにふわふわと浮かぶ。


エンドロールとともに出ていく人もいれば、最後まで見続ける人。

明かりがつくと、群れは個になり、散っていった。


私も静かに席を立つ。

次に来ても、同じ映画にはならない気がした。

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