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『元イージス艦長(50歳)、異世界で最高裁判官になる。〜背中の仁王が火を吹くぜ! 遊び人シンさんが裁く、太郎国・大江戸捜査網〜』  作者: 月神世一


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EP 10

煙の向こうの外交

 タローポリスの人気ファミリーレストラン『タロウ・キング』。

 その一角にある喫煙席は、分厚いガラスのパーテーションで区切られ、紫煙とコーヒーの香りが漂う大人の聖域となっていた。

 ボックス席に座っているのは、三人の男たち。

 一人は、スーツ姿に戻った坂上真一。

 向かいには、気だるげにアイスコーヒーをかき混ぜる鮫島勇護。

 そして上座には――アロハシャツに短パン、サングラスという、リゾート帰りのような格好の男が、大盛りのオムライスを頬張っていた。

「ん〜! やっぱタロキンのデミグラスソースは最高だねぇ!」

 この男こそ、タロー国国王・太郎である。

 彼はスプーンを置き、ナプキンで口を拭うと、ニカっと笑った。

「あ、そうそう。ガルーダの件だけどさ」

「……どうなりましたか、陛下」

 坂上が静かに尋ねる。

 外交官の死。それは通常なら、国家間の戦争に発展しかねない重大事案だ。

「んー、握り潰しといたよ」

 太郎はあっけらかんと言った。

「向こうの政府には、『貴国の貴族が精神錯乱を起こして、市中で暴れた挙句に自殺した。遺憾である』って公式文書を送りつけといたから」

「……向こうの反応は?」

「ぐうの音も出ないって感じ? 証拠映像(キュララ撮影)も添付したし、何より『恥』を晒した貴族なんて、あっちの国じゃ一族ごと処分対象だからね。むしろ『迷惑かけてごめん』って謝罪文と賠償金が届いたよ」

 太郎はケラケラと笑う。

 その政治手腕――というか、相手の弱みを突いて完全に黙らせる剛腕ぶりは、坂上ですら舌を巻くほどだ。

「……ご苦労をおかけします」

 坂上が深々と頭を下げる。

 汚れ役を引き受けたつもりだったが、結局、一番の汚れ役(政治的後始末)を担ったのは、この若い王だった。

「いいってことよ。坂上さんが身体張って『害虫駆除』してくれたんだし」

 太郎は懐から、豪奢な銀のシガレットケースを取り出した。

 パカッ、と開くと、中には太い葉巻が並んでいる。

「これ、新しく攻略したダンジョンの深層で見つけた『竜の葉タバコ』なんだけどさ。……吸ってみる?」

「……頂こう」

 坂上が一本手に取る。

 鮫島も、「……珍しいな」と言いながら手を伸ばした。

 シュボッ。

 太郎が指先から魔法の火を出し、三人の葉巻に点火する。

 スゥー……プハァ……。

 濃厚で、どこか甘く、そして脳の芯まで痺れるような紫煙が、喫煙席に充満していく。

 言葉はいらない。

 法で裁けぬ悪を斬り、その業を煙と共に吐き出す。

 それは、この世界を守る男たちだけの、静かな儀式だった。

「……ふぅ。悪くない」

 坂上が目を細める。

「ああ。……たまには、こういうのもいい」

 鮫島が天井のシミを見つめる。

 太郎は満足げに煙をくゆらせ、窓の外――東の空を見た。

「さて、と。街の掃除も一段落したし……坂上さん、次はどうする?」

 坂上は、葉巻の灰をトントンと落とし、ニヤリと笑った。

「そうだな……。最近、肉料理ばかりで胃がもたれてきた」

 彼は、遠くに見える水平線を思い浮かべるように言った。

「次は、美味い魚が食いたいな」

 その言葉に、太郎はサングラスの奥で目を輝かせ、鮫島は呆れたように、しかし楽しげに笑った。

 陸の事件は終わった。

 次なる舞台は、青き大海原。

 仁王が波涛を越え、鋼鉄の城(イージス艦)が異世界の海に浮かぶ日も近い――。

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