第47話 この世界にクリスマスがあるとしたら
クリスマスイブの夜。
カフェ・白猫は、いつもより少し早めに閉店した。
母さんが「今日は特別よ、ゆっくり楽しんでね」と笑って、店を明け渡してくれた。
店内には小さなツリーが飾られ、淡い電球の灯りが暖かく揺れている。
三人でクリスマスパーティーを楽しんだ。
カウンターの上には、食後のホットチョコレートの甘い香りが漂っていた。
ロマはソファに座るシキとルキの前に、そっと二つの小さな包みを置いた。
「えっと……二人とも、クリスマスプレゼント」
包みはシンプルな紙袋に、淡い青のリボンが結ばれている。
手作り感が満載でちょっと恥ずかしいけど気持ちはたくさん込めた。
「クリスマスプレゼントに特別なのを作りたくて」
ロマは少し照れくさそうに言った。
「開けてみて」
シキが優しく微笑んで、包みを手に取った。
ルキはすぐにリボンを解いた。
中から出てきたのは、二つの手編みのネックウォーマー。
シキのものは、柔らかい桜色を基調にした紫のグラデーション。
首元に小さな花の刺繍が入っていて、シキの髪色にぴったり合うように選んだ。
ルキのものは、深い水色に淡いラベンダーのライン。
銀の星の刺繍を散りばめている。
「これ……ロマが編んだの?」
ルキが驚いたように目を丸くする。
「うん。ソルティ先輩に教わってちょっとは上手になったと思う」
ロマは指を絡めて、不器用に笑った。
「刺繍とか、模様とか……二人のこと想いながら編んだから」
「すごい……」
シキがネックウォーマーをじっと見つめる。
「花の刺繍、すごく細かいね」
「寒い日に、首元を温めて欲しいな」
シキがネックウォーマーを手に取り、頰にそっと当てた。
「温かい……ロマの手作り……」
紫色の瞳が、柔らかく細まる。
ルキもすぐに自分のものを首に巻いてみた。
「あったかい。嬉しい」
ルキの声が、少し震えている。
「ぴったりだ……ありがとう、気に入った」
少し照れ隠しのように、ルキは髪を掻き上げる。
「本当にありがとう、ロマ。すごく嬉しいよ」
シキがロマを愛おしそうに見つめる。
二人が同時に微笑むのを見て、ロマの胸がじんわり熱くなった。
「僕からもロマに渡したいものが」
「俺も」
二人がそれぞれ自分の荷物を探る。
シキが鞄から、細長い箱を差し出した。
「僕から」
ルキはポケットから、もう一つ小さな箱を取り出す。
「俺からも」
ロマはドキドキしながら、まずシキの箱を開けた。
中には、細い銀のチェーンに小さな紫の石がついたブレスレット。
シンプルなデザインで綺麗だ。
「ロマのそばで守ってくれるように、願いを込めて作ったよ」
シキの声は穏やかで、でもどこか熱を帯びていた。
「手作り? すごいね!」
そう言うとルキが、
「俺のも見て!」
と焦ったように言うので可愛くちょっと思えた。
次にルキの箱を開くと、中には小さな水色の石のリング。
「俺の髪と同じ色……って、ベタだけど」
ルキは照れくさそうに目を逸らす。
「少しでも、いつでも俺の存在を意識してくれたらって……」
ロマは二つのプレゼントを交互に見つめて、目頭が熱くなった。
「二人とも……ありがとう」
声が少し泣きそうに震える。
「俺、こんなに嬉しいの、初めてかも」
シキがそっとロマの手を取り、立ち上がった。
ロマの腕にブレスレットをつける。
シキの手が触れて、くすぐったい気持ちになる。
「似合うよ」
シキが耳元で囁く。
ロマは変な声が出そうになるのを手で覆ってなんとかこらえた。
ルキはロマの左手を取って、水色の石のリングを――少し迷ってから――薬指に滑らせた。
「ぴったりだ」
ルキが安堵したように小さくため息をついた。
ロマは手首のブレスレットの温もりと、指に光る水色の石を感じて、涙がこぼれそうになった。
「俺……本当に幸せだよ」
ロマは二人を交互に見つめて、笑った。
「大事にするね……」
シキが優しく頷き、ルキが少し照れくさそうに頷く。
「おう」
「気に入ってもらえて良かった」
店内の灯りが、三人を優しく包み込む。
外では雪が静かに降り始めていた。
クリスマスの夜は、まだ始まったばかり。
三人はホットチョコレートを手に、ツリーの灯りを見上げながら、ゆっくりと、温かな時間を重ねていった。
窓の外の雪が、白い世界を作っていく。
――幸せすぎて、俺良いのかな。
ロマは心の中で、そっと呟いた。
特別で、温かくて、かけがえのない時間。
今はただ、それを大切にしたい。
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