第46話 約束の絵
ロマがシキとルキと特別な関係になってから数日後。
今日は家庭科部の活動日。
被服室にはソルティ先輩と他の部員たちが数名、それぞれ小物作りなどに励んでいた。
ソルティ先輩は手作りの暖かそうなストールを羽織っている。
長い黒髪を緩くリボンで結んで椅子に座って、編み物でマフラーみたいなものを編んでいた。
「ソルティ先輩、作業中すみません。今大丈夫ですか?」
「はい、何でしょうか?」
ソルティ先輩は編み物の手を止めて答えた。
ロマは丁寧に包んだ絵を、ソルティ先輩に差し出した。
「展覧会からすごくお待たせしてしまって、すみません!」
「いつでも大丈夫ですよ」
先輩は編みかけのものを机に置いて、大事そうに受け取る。
「完成したのですね。ありがとうございます。さっそく見てもよろしいですか?」
「はい!」
ソルティ先輩が包みをゆっくりと開けた。
包みから現れたのは、黄昏に染まる秘密の庭園。
澄んだ小さな泉があり、その傍らの花壇には白や紫の花が咲き誇っている。
小さな白いガゼボには、薔薇の蔦が絡まっていた。
空には、ちらほらと星が瞬き始めている。
「これは……」
ソルティ先輩の声が、わずかに震えている。
「秘密の庭園ですね。黄昏時の小さな星も見え始めていて……まるで、庭園の美しさが永遠に閉じ込められているようです」
「前に相談に乗ってもらった時に、先輩がこの庭園を管理してるって知って……」
ロマは少し照れくさそうに言った。
「やっぱり、この場所を描いて贈りたいなって思って」
「わたくしの大切な場所を、こんなに美しく」
ソルティ先輩は慈しむように絵を見つめた。
「嬉しいです。本当に、ありがとうございます」
しばらく絵を眺めていたソルティ先輩が、ふとロマを見た。
「何だか……ロマ君の絵が変わりましたね」
「そ、そうですか?」
「展覧会で見た時よりも、絵に何というか……艶っぽさが出ている気がします」
思わずシキとルキの顔が浮かんで、顔が赤くなってしまう。
最近、絵を描く時、二人の笑顔が自然に浮かんでくる。
それが筆に乗って、色に混ざって、キャンバスに溶け込んでいくのかも。
「艶っぽい」なんて言われると恥ずかしいけど……確かに、言われてみれば何か変わった気がする。
「素敵な変化ですよ」
ソルティ先輩が優しく微笑む。
「人を想う気持ちは、創作にも現れるものです」
ロマは顔が火照りながら小さく頷いた。
ソルティ先輩は絵をもう一度見つめて、静かに言った。
「この絵、わたくしの部屋に大事に飾らせていただきますね」
「はい。先輩に喜んでもらえて、本当に嬉しいです」
ロマは胸を撫で下ろした。
「ロマ君、一緒に編み物しませんか?」
ソルティ先輩が様々な色の毛糸を籠から出して並べる。
「はい!編みたいです!」
ソルティ先輩と一緒に編み物を楽しんだ。
シキとルキのために心を込めながら。
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