家庭科部
ロマは家庭科部にも向かっていた。
被服室が部室になっている。
被服室はミシンが整頓されて並べてあり、美術部よりも派手さは控えめだけどなんとなく居心地が良い感じ。
「家庭科部へようこそ!!」
と迎えてくれたのは赤い髪のウェーブがかかった三年のエリザベス先輩だった。
つい最近手芸部と統一されて家庭科部の部員は10人ほどいるそうだが幽霊部員も多く、男子はロマを含めた二人だけらしい。
家庭科部は女子に人気だよね……。
「他にも男子の部員がいるんですか?」
「ええ、ソルティっていうの。三年生よ」
エリザベス先輩が少し照れているように見えた。
「わたくしに何かご用ですか?」
少し低い声に驚いて振り向くとソルティ先輩が現れた。
ソルティ先輩は腰のあたりまである黒髪を深い赤色のリボンで一つ結びにまとめている。
制服を独自にアレンジしてあり、レースがあしらわれたブレザーや長いスカートを綺麗に着こなしている。
ソルティ先輩ってぱっと見は凛とした女性みたいな見た目だ。
背が高めで立ち姿がとても格好良い。
「新入部員のロマ君よ、ソルティ色々教えてあげて?」
「かまいません」
ソルティ先輩が調理室のルールや部活動の事などを教えてくれた。
「ロマ君は家庭科部で何かしたい事はございますか?」
ソルティ先輩がきりっとした声で言う。
「ええっと、具体的にはまだ決めてません。でも美味しい料理が作れるようになりたいです!先輩はどんなことをされてるんですか?」
「わたくしは服やぬいぐるみ作り、編み物が好きで作っています」
「すごいですね!」
「美味しい料理が作れるようになりたいのはわたくしも同感です。なのに練習のために私が料理を作ろうとするとエリザベスにいつも全力で止められて……」
ソルティ先輩料理苦手なんだ、意外だな。
「レシピ通りに作っているのに……不可解ですよ」
ソルティ先輩が苦笑する。
「またソルティ先輩と料理作りたいです!あの、もし良かったら先輩の作品見たいです!」
ロマはソルティ先輩に興味が湧いた。
「ではこちらにいらしてください」
ロマは眼を輝かせてソルティ先輩の作品を見せてもらった。
美しい花模様の刺繍が施されたブラウスや繊細なレース編みの服、ぬいぐるみなど。
一つ一つの作品が丁寧に作られていて温かい気持ちになる。
「ソルティ先輩、編み物やってみたいです!教えてください」
「構いません。ではかぎ針編みをやってみましょうか」
ロマはソルティ先輩に編み物のやり方を教わった。
ちょっと難しかったけどソルティ先輩が優しくも厳しく教えてくれたおかげでかぎ針編みの基本ができるようになった。
「ロマ君は飲み込みが早くて素晴らしいです」
ソルティ先輩に褒められて嬉しくなった。