10月30日ロマ君お誕生日おめでとう
カクヨムさんの方ではシキ君バージョンが読めます。
放課後の美術室。
もうすでにあたりは日が落ちて暗くなっている。
軽音学部の練習の帰り。
扉の前に立って、リディはあやしげな会話にそっと耳を寄せた。
中から聞こえてくるのは、美術部のロマとルキの声――。
ふたりは文化祭のホログラムフィールドでのライブペイントの練習をしているはずだった。
……だったよね?
「ルキくんっ、あっ……いたっ、だめ、それ以上はっ……!」
「我慢しろ。力抜いて……そう、ゆっくり息を吐け」
「んっ……無理、もう、これ以上はいかないってば!」
「お前、ほんと固すぎるな」
「そんなことない……っ」
……え、え、なに、えっ!?
リディの脳内に邪な妄想が膨らみ始めた。
お、おかしいでしょ!?ここ、美術室だよね!?
「うぅ……も、もう少し優しくして……?」
「無理させすぎたか。……でも、慣れてくるからあと少しだ」
「っ……あ、ちょ、もうだめぇっ!」
おいおいおいおいおい!!
扉の外のリディの顔は一瞬で茹でダコのように真っ赤になった。
ルキ、何してんの、ロマに!?
「動いたあとは、ちゃんとケアしないとな」
「……はぁ、なんか熱くなってきた……」
「こんなところで寝るな。まだ終わってないぞ」
「ルキの手、大きくて……あ、そこ、気持ちいい……」
「ここが一番固まってる。……よし、次は反対だな」
実際の美術室の中では――
ロマがストレッチで悲鳴を上げ、ルキが淡々と筋肉をほぐしているだけ、なのだが。
⸻
リディは耳まで真っ赤にして、ドアに手をつく。
あんな声……ロマ、無防備すぎるだろ……
胸の奥がもやもやと熱くなり、息が詰まる。
混乱、羞恥、そして……少しの嫉妬。
ガラッ。
「――リディ?」
ロマが首を傾げてドアを開けた。
頬を上気させ、前髪が少し乱れている。
その隣でルキが腕を組んでため息をついた。
「何してんだよ、お前」
「な、なにも!? 通りかかっただけだから!!」
「通りかかっただけでそんなに顔真っ赤になるのか?」
「う、うるさい!!」
ロマがきょとんとした顔で覗き込む。
「リディ大丈夫? 熱でもあるの?」
「違うっ!!もう知らない!!」
リディは逃げるように廊下を駆けだした。
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