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色彩のきずな  作者: 潮騒めもそ


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第34話 協力

 リディたちのライブを聴いた後、美術部のみんなは講堂地下のホログラムフィールドに移動した。

 まだ耳の奥に、あの熱いリズムが残っている。


「まずは、リディたちの曲を感じたまま表現してみましょうか」

 ミカソ先輩がホログラム用の筆を手に、穏やかに声をかける。

 その声に導かれるように、みんなが筆を動かし始めた。


 描かれた絵は、見事にばらばらだった。

 赤と青がぶつかるような抽象画。

 楽しそうな子供の絵。

 駆けまわる動物たち。

 淡い花びらのような光。

 歪んだ都市のシルエット……。

 それぞれの心が、音に反応して形を変えていく。


 ホログラムの粒子が舞い、空間全体が光で満たされていく。

 誰かの感情が、誰かの色と重なって――不思議な調和が生まれる。

 胸の奥がふわっと揺れた。

 色も音も、みんなの想いも混ざり合って、ひとつの作品になる。

 この場所が好きだと、改めて思った。


「これ、全部使えそう。みんなの絵を合わせて――ひとつの映像にしてみようか?」

 ルキの声が響く。

 フィールドの空気がぱっと明るくなった。


「ミュージックビデオにすれば、素敵な演出にもなりそうだね」

 シキが穏やかに微笑む。

「いい考えだよ。ルキは映像の感覚が鋭い」

「そ、そう?」

 少し照れたルキの頬を見ながら、胸の奥がじんわりと温かくなる。

 光の粒が揺らめくたび、二人の笑顔が少しだけ眩しく見えた。


 こうして、美術部はリディたちのライブ映像の中で流すホログラム映像を制作することになった。

 リディたちの演奏を存分に楽しんでもらうためにも、美術部との共演は最後の一曲だけ。

 午前中は美術部のライブペイントパフォーマンスと、来場者のホログラムアート体験。

 午後はリディたちのライブ――そして、フィナーレでの共演。


 その構成が正式に決まった瞬間、みんなの表情がきらきら輝いた。

 胸の奥で何かが灯るような、そんな瞬間だった。


 ⸻


 翌日の放課後、ホログラムフィールドには美術部みんなで描いた秋の紅葉が映し出されていた。

 モミジやイチョウの葉が舞い、練習の合間に笑い声が響く。

 その光景があまりに綺麗で、思わず息を呑んだ。


 ヴェルテが、ライブペイントのための新曲を披露する。

「こんなに素敵な曲使わせてもらって良いの?」

 ロマがヴェルテに尋ねる。

「もちろん。ずっと前から温めてた曲があって、美術部のみんなのイメージにぴったりだと思ったんだ」

「本当にすごいなぁ」

ヴェルテの頬がほんのり赤くなる。


 ルキは徹夜で映像を仕上げ、サンプルデータを渡していた。

 リディたちはそれを確認する。


「ボクたちの曲が視覚的になるとこういう感じになるんだ……思ったより悪くないね」

「リディ、素直に褒めれば?」

 珍しくシャルムが口を開くと、柔らかな笑いが広がった。

「本当に短期間でここまでしてくれるなんて、ありがとう」

 クレアの笑顔が光を受けて揺れる。

 その言葉に、ルキの目の下のクマが少し報われたように見えた。


「文化祭でやる曲のテーマは、『お昼間のナイトパレード』にしようってことになって……」

 ヴェルテがライブのコンセプトを説明する。

「わぁ、楽しそう! 今よりもっとイメージに沿うようにMVを調整するから、頑張ろう!」

 思わず声が弾む。


「美術部の絵を地味とかつまんないなんて言って……悪かった。改めてよろしく頼む!でも、ボクの要求は絶対だから!」

「まったく!最後の一言は余計よ」

 プリスが呆れつつも笑い、場の空気がやわらいだ。

「みんなで良い舞台にしよう!」

 拍手のように返事が重なる。


 アレンが筆を構えながらぽつりと呟く。

「俺、ホログラムもいいんだけどさ……やっぱり絵の具で描くほうが好きなんだ」

「分かる。手で描くって、やっぱり実感があるよね」

 ココナが頷く。

 ロマにも、同じ思いが浮かんだ。


「じゃあ、絵の具や他の画材で実際に描く班も作ろうよ」

 自然と口から出た言葉に、アレンたちの目が輝いた。

「文化祭の絵として残るし、いいな!」

「楽しみだね!」


 アナログとデジタル、二つの表現が少しずつひとつの作品へと変わっていく。

 光と絵の具の匂いが混ざり合う中で、ロマの中の“調和”も静かに形になっていく気がした。

お読みくださってありがとうございます!

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