第27話 サバイバルゲーム⑦
モニタールームでは、ロマがエドガーに撃たれ、戦線離脱した映像が映し出されていた。
その場を去るロマの背中が、ゆっくりと小さく画面から消えていく。
リアムの隣でグレゴリー先生が眼鏡を押し上げ、硬い表情で言う。
「……すみません。ロマ君の様子を見てきますのでこれで失礼します」
リアムはグレゴリー先生に妙な違和感を覚えながらも桃色チームのほうが気になって仕方がなかった。
残されたシキとルキの間に、凍りつくような、あるいは燃え上がるような怒りの感情が場を満たしていた。
息が詰まる静寂。
ルキはゆっくりと伊達眼鏡を外した。
ラベンダー色の瞳がいつもより暗く冷たく光る。
「……許さねぇ」
「ああ。手加減する必要はない」
シキの声は低く、ロマを守りきれなかった怒りで震えているかのようだ。
クロマブラスターを構えたその瞬間、空気がさらにひりついた。
リアムはスクリーンを凝視した。
あの2人が、あんな表情をするなんて――。
怒りと悔しさの混じった形相。
彼らの体育の授業は一体どこへ行ってしまったのか。
でもシキとルキの本気が見られる!
⸻リアムは不安より期待の方が勝っていた。
「ルキ、弾の残りは?」
「10くらいだな」
「僕は12。無駄撃ちはせず、距離を詰めて確実に撃つ。高台の奴は僕がやる」
「俺も撃ちのめしたい」
「じゃあ早い者勝ちだ」
シキとルキは目を合わせるとうなずいて同時に駆け出した。
ホログラムフィールドの森は、2人の怒りの冷たい炎がものすごい勢いで燃え広がるようだった。
ルキの放つ一発一発が、精密で予測不能。
シキの動きは、まるで雪豹のようにしなやかで素早い。
エドガー達が照準を合わせるより早く、シキは青チームを翻弄する。
「ルーカス!逃げ――うっ!」
ヴィムの声は最後まで続かなかった。
シキのクロマブラスターが彼の後頭部を桃色に染め、戦線離脱の表示が浮かぶ。
「くそっ!当たらない!?」
ルーカスが叫ぶより早く、ルキの狙撃が木の間を光の弾丸が貫いた。
ルーカスが桃色に染まり、戦線離脱の表示が浮かんだ。
残ったエドガーが歯を食いしばり、クロマティック・バニッシャーを構えた。
「……まだだ、俺は負けない!」
エドガーは照準を合わせようとしたが、指が震えていた。
静寂の中で、なぜか自分の鼓動だけが耳を打つ。
何とかしてシキを足止めしようと引き金を引いた瞬間――
シキの姿が消えた。
「一体どこに……!?」
周囲を探すが見当たらない。
「はぁ……はぁ……はぁっ……!」
エドガーの息が粗く、鼓動が速くなる。
「うわぁっーー!!!」
気がついた時には遅かった。
エドガーの前にはクロマブラスターの銃口。
鳥肌が立つほどの凍てつく紫の瞳と目が合った。
「後でロマに謝れ」
抑揚のない声の後に、エドガーは悲鳴と桃色にまみれた。
青チームは瞬く間に全滅した。
⸻
モニタールームはリアムの興奮で賑やかだった。
リアムは眼を輝かせて、しばらく画面から目を離せなかった。
すごい……なんて格好良いんだ!!
ここに今誰もいなくて良かった!!
思わずリアムの表情が緩んでにやける。
久しぶりに表情筋を使ったせいか、興奮のせいなのか、元に戻らない。
こんな顔誰にも見られたくない。
もうすぐカリーヤ先生が帰ってくるかもしれない……!
リアムは急いで眼鏡の位置を直し、真面目な無表情の教師に戻した。
お読みくださってありがとうございます!
誤字、脱字、感想などお気軽にお寄せいただければ本当にありがたく、励みになります。
よろしくお願いいたします。




