第25話 サバイバルゲーム⑤
モニタールームの大型スクリーンには、桃色チームと赤チームの戦闘の余韻が映し出されていた。
ココナの頭上に【戦線離脱】の赤い文字が浮かぶと、周囲の教師陣にわずかなざわめきが広がる。
「……ロマもココナも、どちらも優しい子達だ。この授業は酷だったかもしれん」
カリーヤ先生が小さく呟き、映像に映るココナの姿を見てすぐ立ち上がる。
「少し様子を見てくる。ここは任せた」
そう言い残すと、軽やかな足取りで救護セットを手に部屋を出た。
静寂が訪れる。
残ったのはリアムと、グレゴリー先生だけだった。
リアムは黒縁の眼鏡越しに視線をスクリーンへ走らせる。
その視線は周りから見れば冷静だが、瞳の奥に熱を帯びていた。
隣のグレゴリー先生は白衣を整え、端末を眺めている。
白衣は清潔感に溢れ、袖や胸元にはほとんど汚れがない。短く整えられた黒髪が光を反射し、落ち着いた佇まいが漂っている。
「桃色チーム、順調ですね」
リアムの声は淡々としている。
「そうですね……でも油断はできませんよ」
グレゴリー先生は、柔らかな微笑を浮かべながらモニターに視線を向ける。
「ホログラムフィールド、以前よりかなり実用的になりましたね。生徒たちは素晴らしい成果を見せてくれます」
リアムはグレゴリーの言葉に静かに頷く。
気がつけば桃色チームのロマ、シキ、ルキの動きを注意深く追っていた。
黒縁の眼鏡越しに視線をスクリーンへ走らせながら、リアムは高鳴る心を抑え、息を整えた。
マイクの音声をこちらで自在に設定して拾えば聞こえる。
桃色チーム、実に興味深い。
シキ君はかなりの美男子だし、見ているだけでも眼福なのに!!
ロマ君との間に流れる空気、何なんだ!?
えっ……もしかしてルキ君もロマ君のこと好きだったり?
ルキ君もよく見たらかなり格好良いじゃないか??
そうだとしたら修羅場!!
……青春の香り!!!
はぁ〜〜なんて尊いんだ……!
やば……。
この施設作りには苦労したが、協力した甲斐があった。
心の中では生徒たちによる青春のときめきに心を弾ませて喜んでいるが、表情は微動だにしない。
無表情を貫くことには自信がある。
元々感情を表に出すのは苦手だ。
しかし万が一顔がにやけてしまわないか心配になり口元を手のひらで隠す。
スクリーンに映るシーンは、緑と黄色のチームが戦闘を続ける様子に切り替わる。
光弾が飛び交い、石柱が鮮やかに塗り替えられていく。
「シュバババッ!」
「パシュン!」
緊張感と活気がモニタールームに伝わってくる。
グレゴリー先生が端末に手をかけ、静かに操作を始めた。
ほんの僅かな瞬間、画面の隅に送信アイコンが浮かぶ。
リアムは即座に気配を察し、声を低める。
「グレゴリー先生、何を……?」
グレゴリー先生は笑みを崩さず、鋭利な眼差しで答える。
「特殊武器のパラメーター確認です。授業直前まで調整をしていましたから。生徒の安全は第一ですよ」
リアムは訝しげに頷く。
スクリーンの端で、青チームが数の差で赤チームを圧倒する様子が映し出される。
アレンやダリオが次々と戦線離脱し、2人は色塗りに移っていく。
その光景を、グレゴリー先生は研究者らしい微笑で眺める。
「面白い……想像以上です」
リアムは無言のまま視線を桃色チームに戻す。
探索を続ける桃色チームに青チームの影が忍び寄っていた。
お読みくださってありがとうございます!
誤字、脱字、感想などお気軽にお寄せいただければ本当にありがたく、励みになります。




