第20話 休み時間は短すぎる
展覧会が無事に終わって次の週。
秋の気配が深まってきて過ごしやすい気温になってきた。
午前中の休み時間、ロマとルキの教室に、優雅に入ってきたのはシキだった。
いつもシキは休み時間自分のクラスにいるはずなのに、迷いなくロマの机まで歩いてくる。
「ロマ、ルキ、おはよう」
「シキ君おはよう。休み時間に珍しいね?」
「そうかな?ロマ、ちょっとこっち向いて」
その穏やかな声に顔を上げると、シキ君の指先がすっと伸びてきて――
「……寝癖。ほら、跳ねてる」
柔らかく髪を梳かれた。指が額に触れるたび、くすぐったくて心臓が妙に落ち着かない。
「これで大丈夫。……でも、あえて跳ねさせるアレンジも似合うかもね」
にこりと笑う顔に、思わず息が詰まる。
「……っ、あ、ありがと。俺癖っ毛だからあんまり気にしてなかった」
声が震えているのが自分でも分かった。
なんで……?シキ君、こんなに距離近かったっけ?俺、顔赤くなってないかな……。
隣に座るルキが気になってちらりと見ると、ルキは机の下で拳を固く握っていた。表情は変わらないけれど、どこか刺すような空気を感じる。
ルキ君……?なんか怒ってる……?
「シキ、わざわざそんなことで隣のクラスから来なくても……」
低くつぶやく声が、妙に胸に引っかかった。
けれどシキは、まるで気にしていないみたいに笑顔で答える。
「だって、ロマ達ともっと話したくて。僕は隣のクラスだし」
「それは俺だって話したいけど、シキは目立って落ち着かないからちょっとやだ」
ルキが困ったように言う。
ルキ君はシキ君にもっと構ってほしいのかな。
「そんなこと言われても僕の好きなようにするからね。そうだ、ロマ。もし良ければ今度の選択授業、一緒に受けたいなって思って。……体育とか、どうかな?」
何気ない口調なのに、その瞳は真っ直ぐ。
「えっ……俺と?良いよ」
不意を突かれて戸惑いつつも、ロマは頬が熱くなるのを感じながら答えた。
「ありがとう。楽しみだな」
シキはそう言って微笑む。
その優しい声音に、ロマの胸は妙に高鳴ってしまう。
そのやり取りを黙って見ていたルキが、ふっと顔を上げた。
「……じゃあ、俺も同じ授業、取る」
少し素っ気ない調子で、どこか拗ねたような響きがあった。
「それなら3人で一緒だね!」
ロマは無邪気に笑ったが、ルキの視線はシキを意識するように鋭いように思えた。
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