第六十四話「思識大神」
「戦うのかい?」
「できればしたくないさ」
「だろうね。君はそういうと思った。では、交渉をしようか?」
光稲主神は笑いながら言った。
「交渉?なんのだ」
「簡単だよ。君の体の一部に入らせてもらいたい。もちろん、支配とかではなく、ただ、知識や技、能力を与えるだけだ」
「本当なんだな?」
「ああ。神は嘘をつかないさ」
「わかった」
「感謝する。では、この言葉を唱えてくれ。『光稲よ、我に宿れ。そして、知識、技、能力。光稲主神の力すべてをあたえたまえ』と」
「はいはい。『光稲よ、我に宿れ。そして、知識、技、能力。光稲主神の力すべてをあたえたまえ』」
ピカン…
「あああああああああああああ!!!」
何だこれは!?知らない知識、技、能力がすべて入ってくる!?
「はぁ…はぁ…」
頭が痛い。
いま頭に思い浮かぶのは、物質・物体転移の能力…?
えーとじゃあ、アレをここに。
ぽん。
「…ガチじゃん。こいつの能力他にももらったのか。ひとまずは帰ろう」
『まて。貴様を逃がすわけには行かない』
「!?だれだ!」
『余の名は、思識大神である』
「思識大神?」
『貴様は先程、光稲の力や知識、技を授かっただろう?そいつは渡さない』
「なぜ?」
『それは、簡単なことだ。人間風情に神の知識、技、能力など、与えてたまるか』
思識大神は続けて言う。
『ましてや、人間に、この力を使いこなせるわけがないだろう?たとえ、使えたとしても、暴走するだけであろう』
それはそうだ。俺だって、いつかは暴走するかもしれない。
だが、俺には、仲間がいる。母、姉、妹、ルカ、天音。この仲間が付いている限り、暴走など起こしてたまるか。
「ふふっ。思識大神は心配性だな。俺には、仲間がいるさ。俺の仲間がいる限り、絶対に暴走などしない。いや、させない」
『人間風情に言われたくない。それに、暴走しないと言う、根拠が無いであろう?もし暴走してしまったら、地球の秩序が、乱れるではないか。そんな簡単な理由で、やすやすと返すわけにはいかない。貴様には、ここで死んでもらう』
「!?うわぁ!!!」
何だこの殺気は。
「おい。長距離転移チャージはいつ終わる!!」
『長距離転移は現在60%です。時間に換算すると、100%まで、あと、30分あまりでしょう』
遅い。30分も耐えられるか?でもやるしか無いんだ。
「情報表示」
【思識大神。能力――粛清】
この能力は一体…まぁ、考えてる暇はない。
この能力はコピーさせてもらう。
早速使うか。
「能力。粛清!!」
カコン―――ゴォォォォ!!!
『この人間風情め!この私の力を、盗むとは!!許さぬぞ!!!』
シュパン
思識大神は消えた。
「あ…あっけないな…」
『連絡。長距離転移チャージ完了。指定帰還位置に転移します』
「頼む」
■■■
【転移中】
『連絡。残り、2光年。予想到着時間、10分です』
そんな、連絡はどうでもいい。
今は、ただ…俺の脳内にひたすら流れる、無限の知識。
未知の技術の知識から、能力の仕組み、神の構成図まで、様々。
特に気になったのは、『瞬間移動装置』だ。
こんな、転移装置より遥かに早いらしい。
しかも、この銀河からも、出れる。しかも一瞬。
今のやつを使って、銀河を出ると、最低一年…いや十年か。
それが、この、頭に流れる知識を使えば、作れると…しかも、スマートウォッチくらいの大きさしかないものを。
コレは期待大だ。
『連絡。まもなく転移が完了します』
シュパ
「あ、帰ってきた。悠真。おかえり。どうだった?」
「まぁ、特には」
天音が来る。
「悠真。神から、謎技術を教えてもらったでしょ」
「!?」
「生き返ったら、過去眼の能力をもらったの」
ニコッと天音が笑う。
「その技術を試そうね」
渋々。
「わかったよ…」
そうして、最初の敵?だったものを、自分の一部にし、思識大神を倒したのであった。




