第五十六話「校内のLAN落とします」
【一ノ瀬家・地下ラボ:早朝】
――7ヶ月前、俺は希望と不安と絶望のすべてを背負ってこの高校に入学した。
そして今。
俺はA組にいる。最高峰のクラス。エリート女子の巣窟。男子の立ち入りは原則、物理的にも精神的にも「有害」。
なのに、なぜか俺はそこにいる。
……まあ、咲(姉)による“コミカルフォント推薦状”の暴力でね。
けどA組に来たところで、男子への視線が柔らかくなるわけもなく、むしろコンクリより硬い目線で毎日メンタル削られてる。
授業中、鉛筆を落としたら“地雷処理班呼べ”って言われるし。
くしゃみすれば「撒いた!ウイルス撒いたわ!」って叫ばれるし。
正直、クラスメイトの女子たち、前世で俺に親族皆殺しにされたんかってレベルの敵意だ。
でも、今日は違う。
今日は、俺が牙をむく日だ。
なぜなら――
俺「PCだ。俺だけの最強ノートPC、今こそ作る!」
ルカ「え、PC買えばよくない?」
俺「バカめ! 高校支給PCは“メモリ4GB”に“Pentium世代”だぞ! 爆速でゴミ箱直行レベル! あれで動くのは“遅延”だけだ!」
澪奈「にーに、そんなPCで資料開こうとすると“しょぼーん”て顔のマスコット出るよね♡」
俺「しかも『セキュリティのため』って理由で、男子だけ“ネット制限付きモード”だぞ!? こっちはGoo◯le検索すら“上限10件”に制限されてんだ!」
ルカ「それもう情報鎖国じゃん……!」
だから作るんだ、最高のPCを!
【ラボ:設計図前】
悠真「ベースはTitan R◯XとCo◯e i9-14900KF。メモリは256GB。冷却は独自液冷ユニット“YUMA-X”(自作)」
俺「OSは自作“Yμ-OS”で、男子専用の逆差別対応UI搭載。起動時の音声は澪奈の録音『にーに、がんばって♡』。最高かよ」
(※ただし録音中に「焼き芋食べる?」って声も入ってた)
完成まで、わずか3日。食事は点滴。睡眠は1時間。妹が見かねて母を呼んだ。
でも完成した。
――YUMA-GEAR《極(KIWAMI)》、爆誕。
【A組教室:翌朝】
悠真「はい。俺の愛機、爆誕な」
(開くと起動音)
PC「おはよう、にーに♡ 今日も地獄だね♡(from 澪奈)」
女子A「……え、あの男子、ノートPC出したわよ」
女子B「男子に“電子機器”って大丈夫? あれ爆発しない?」
女子C「そもそも、男子にキーボード操作できるの?」
女子D「てかさ、電波使ってるなら“違法電波干渉罪”じゃないの?」
悠真「なんだその罪状!? 俺は電波法違反の破壊神かよ!!」
【担任:通報】
担任「学園司令部へ通報しました。男子が“電子頭脳”使用。念のため空爆待機」
悠真「待て落ち着け!! 俺のPCのLAN速度見てから判断してくれ!!」
(カチッ)
――ポォン……(速度計測)
\速度:11Gbps/
クラス全体「ギャアアアア!!なにこれえええ!?!?」
女子E「私のPC、今フリーズした!隣接だけで死亡!?」
女子F「ウチのスマホ、勝手にアップデート始まったんだけど!?」
女子G「これって男の“能力”じゃないの!?発電とか制御とかじゃなく“システム破壊”系男子じゃない!?」
悠真「ちがう!!技術の力だ!!ロマンと金の結晶だ!!」
【通話:姉・咲】
咲「……あらぁ、まさか男子が“女子支配ネットワーク”に逆アクセスしたのかしら?」
悠真「なにその戦時中みたいな言い方」
咲「まあ、全校女子の端末が君のLANに接続されてるっぽいけど。やったね♡」
悠真「怖ええええよ!? ナチュラルに乗っ取るなよ!?!?」
【数時間後:校内広報】
校内放送『本日、A組所属男子・一ノ瀬悠真の所持PCより“校内無線支配疑惑”が浮上しました。男子への電子機器所持制限が追加されます。』
悠真「おいィィィ!! 結局そうなんのかよ!!」
【帰宅後:地下ラボ】
悠真「……結果的に、俺が作ったPCは『学園最強』と認定されたが、同時に“男子は情報兵器として危険”という噂が拡大した」
ルカ「男子、ほんとに肩身狭すぎだよね……。男子ってだけで、悪魔扱い……」
澪奈「でも、にーにはすごいよ♡ A組のネットワーク、今日だけで8回落ちたし♡」
悠真「どこを褒めてんだよおおおおおお!!!」