表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劣等超能学級  作者: 冬城レイ
第六章「B組編」
54/66

第五十三話「リアウィング」

【地下ガレージ:深夜】

(ヴゥゥウウ……)


Z-REVOLVER Phase.IIが静かにエンジンを唸らせる。

こいつはもう、ただの“乗り物”じゃない――家族を乗せ、地獄から加速する希望そのものだ。

でも、まだ足りない。


俺「ハンドリングがな……まだ甘い」


ルカ「えっ、これ以上どこに不満あんの……?」


俺「ギア24速にしただろ? ハンドルも強化しないと、カーブで曲がれずに“未来”へ突っ込む可能性がある」


ルカ「いやそれもう車じゃなくて時空戦闘機だよね!?」


【作業台】

(ガチャリ、キィィィ……)


俺は手元の設計図を見ながら、次なる改修に取りかかる。


俺「まず、ハンドリングアシスト機能を追加する。操作力をAIが補正して、超高速でもぬるっと曲がるようにする。あと、メーターも改修だ」


ルカ「……ぬるっと?」


俺「うん、ぬるっと」


(タブレットに表示された設計図には“ニュルンッ補正”と書かれている)


ルカ「……名前からして不安なんだけど?」


俺「だが安心しろ、このAIには《咲モード》《澪奈モード》《ルカモード》の3段階補正機能がある」


ルカ「待って!?私も組み込まれてるの!?」


俺「《咲モード》は強制自爆回避。《澪奈モード》は温度管理付き運転。《ルカモード》は……ツッコミ強化」


ルカ「車がボケたら私がツッコむの!?斬新すぎる!!」


【メーター改造】


次はメーター。既存の表示じゃ24速MTに対応できない。

なので、俺は手製のLEDリングを設計。ギアを変えるたび、メーターの中心にあるインジケーターが発光し、回転数とギア段数が視覚的に連動するようにした。


俺「これぞ“ギアが光るクルマ”……!」


ルカ「厨二病の極みだな……。てか12速あたりで眩しすぎて前見えなくなりそうなんだけど?」


俺「だから“目を閉じても走れる補助AI”も搭載してる」


ルカ「いよいよ何がしたいんだお前!?」


ウィング制作】


そして、今回最大の目玉――Z-REVOLVER用リアウィングの製作。

空気抵抗を抑え、接地圧を高め、ハイギア帯でも安定して走行可能にするパーツだ。


俺「問題は素材だ……市販品なんか使えねぇ。だからこれを使う」


(ガサッ)


ルカ「これ……パラボラアンテナじゃん!?ご近所の!?」


俺「貰ったんだよ。“N◯Kもう映さないから好きにしていいよ”って言ってたし」


ルカ「それ“契約しない”って意味でしょ!?翼にしちゃダメだろそれ!!」


(しかしパラボラアンテナを加工してウィング化。エアダクトと合成することで、逆流気流を逃がす構造に変換)


俺「仕上げは……このロゴ」


(Z-REVOLVERのリアに“FREEDOM RUNNER”の文字が浮かび上がる)


ルカ「え、なんで急に厨二タイトル……?」


俺「これはただの車じゃない。“自由を乗せて走る器”だ。俺の名前なんかいらねぇ。走る理由があれば、それでいい」


【翌朝:出発準備】


咲「えっ、今日それで登校すんの? 法律的にギリギリアウトじゃない?」


俺「いや、ギリ“セーフ”だ。ブレーキランプつけたから」


澪奈「にーにー、お願いだから捕まる前に帰ってきてね♡」


ルカ「助手席チェック完了! てかこのメーター、夜に走ったら宇宙船っぽくない!?」


俺「宇宙も逃げ場になるかもしれんからな……」


咲「お前、もう地球捨てる気じゃん」


【Z-REVOLVER Phase.II 起動】


ヴゥゥゥン……ギュゥゥン!


Z-REVOLVER Phase.IIが、朝日を浴びて唸る。LEDギアメーターが1→2→3と点灯し、ハンドルが僅かに自動補正を始めた。


俺「この街に希望は少ねぇ。だけど……」


(ギアをさらに上げていく)


俺「俺たちには、逃げ切るだけのギアがある!」


ルカ「そして私は、助手席でブレーキを叫ぶだけの肺活量がある!!」


(爆音を響かせ、Z-REVOLVER Phase.IIは校門へ向かって加速する――その速度、光より早く、教師の怒鳴り声より鋭く)


【ナレーション:俺】


――俺が走るのは、未来から逃げるためじゃない。

絶望という名の渋滞を、アクセルでぶち破るためだ。

ハンドルの先にあるのは、俺たちの“生き場所”。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ