第五十話「訪問」
【朝:校内放送】
校内放送「本日、男子生徒に対する特別家庭訪問調査が行われます。女子生徒の皆様は笑顔で送り出してあげてくださいね♡」
俺:「特別……家庭訪問調査……?」
友人男子A:「いやそれ、俺らだけ監視対象じゃね?女子は通常訪問って言ってたぞ……」
友人男子B:「うちなんか昨日“男子家庭評価アンケート”配られたし。“危険物所持の兆候がありますか”とか書かれてたし……」
俺:「なんだよその公安みたいな項目……」
【自宅前:午前】
咲:「あー、今日家庭訪問かー。咲ちゃん面倒だから出かけよーっと」
俺:「姉として最低限の責任とかないんですかね」
咲:「男子の家庭訪問でしょ?どうせ“指導対象”チェック入れられるんだから無駄でしょ」
澪奈:「お兄ちゃん、部屋片付けた?前に女子検閲で“男子っぽい匂いがした”って再訪問されてたじゃん」
俺:「なにそれ!?どんなフェロモン探知機だよ!?」
母・莉奈:「うちは男子を更生中ってことで補助金もらってるから、適当に“前向きに改善してます”って言えばOKよ」
俺:「更生中って言い方やめて!?俺、犯罪者なの!?」
【正午:訪問開始】
先生(女性):「こんにちは、特別指導課から派遣されてきました、男子家庭評価官の水城です」
俺:「なんか名前がすでに警察っぽい……」
水城:「今日は“男子生徒が家庭でどのように女子基準へ適応しているか”を確認させていただきます」
咲(帰ってきた):「おー水城先生!まだこの弟、男ですけど一応命令は聞くんで☆」
俺:「“まだ男”ってどういう意味!?」
水城:「あ、こちらが噂の男子専用機器……?」
(部屋の隅にあるスパコン《MOTHER·CORE/零式》が警告を鳴らす)
\アクセス検知:分類=権限外女子。自衛モード移行します/
咲:「やば、うちのAI、女子にも容赦なく撃つの?」
俺:「いやこれは仕様外だって!!おい止まれ!MOTHER!!」
MOTHER·CORE/零式:「男子オペレーターの命令優先順位:第一位。自動制御、再起動中……」
水城:「……ふむ。男子による自作超AI。これは監視対象追加ですね」
俺:「何その発言!?これが評価項目にマイナスなのかよ!?」
【リビング】
水城:「この家の男子(=あなた)は、明確に“女子の生活感覚”から外れていると評価されます」
母・莉奈:「でもこの子、最近学校の実技試験で女子3人倒して校内表彰されたんですよ?」
水城:「……女子が敗北したこと自体が、教育上望ましくありません。“空気を読んで負ける”のも男子教育の一環です」
俺:「えっ、じゃあ本気で勝つのって罪なの!?」
咲:「だ・か・ら言ったじゃん。男が本気出すと怒られるって」
水城:「“男子は周囲の女子が快適に過ごすために存在する”。これは文科省直轄の基本理念です」
俺:「思想が昭和の社畜以下なんだけど!!」
【突如:地下からアラート】
MOTHER·CORE/零式:「外部アクセス検出。“深層プロトコル:アダム”より侵入試行中。敵性認証、完了」
水城:「なんですかこれは?」
咲:「えー、なんか地下のスパコンが“男子差別撲滅連盟”ってとこからアクセスされてるっぽい」
水城:「え、なにそれ!?違法団体じゃないですか!?」
俺:「いや知らねーし!!こっちが被害者なのになんで俺が通報対象になるんだよ!」
MOTHER·CORE/零式:「通告:対男子差別プロトコル“イヴの檻”発動可。許可を求む」
俺:「名前やばすぎるって!!なんでお前そんな厨二病モード搭載してんの!!」
【夕方:家庭訪問終了後】
水城:「本日の評価:男子生徒は“要改善対象”に分類。早急な女子配慮型教育への転換が必要です」
母・莉奈:「まぁ予想通りよね」
咲:「でも男子の癖に努力してるのは偉いと思うよ?」
俺:「“男子の癖に”って枕詞がつく時点で尊敬ゼロなんよ……」
澪奈:「来週、男子だけ夜間巡回があるらしいよ。門限オーバーすると連行されるって」
俺:「それもう自由ってなんだっけ!?」