第四十九話「NEIG」
朝。俺はリビングで炊きたての白米とともに、昨日の録画ニュースを見ていた。
画面には、例の“男子差別プロジェクト”――通称【南区画増築計画】の話題が流れている。
「教育委員会の女幹部たちの間で、男子へのSABETU☆がようやく議題に上がったようです。ただし、“とりあえずD組だけで様子見”とのこと」
……そりゃそうだ。今、男子ってD組にしかいねぇし(※俺は例外のB組配属)。
さらに、女子ばっかのA組やD組でもこの増築計画の噂は飛び交ってるらしい。
「でもそれ以上に、やべぇモン作ってる生徒がいるらしいっスよ?」
と画面にチラ映りする俺の自作バイク《NSF-Ω》。
……違う。今日のメインはそれじゃねぇ。
いや、バイクもすごいけども!
今日は銃だ。
それも――《Z-Energy-Injector Gun(仮)》。
【自室:工作スペース】
NSF-Ωの整備ステーションの隣に、新たな金属フレームが鎮座していた。
銃というより、もはや小型の砲塔。いや、武器工学オタクが涙しそうなレベルでパーツがややこしい。
俺:「……とりあえず、フレームはこんなもんでいいな」
咲:「はい、コンデンサ取り付け用アダプタ」
澪奈:「後ろのAIユニット、接続完了っとー!」
ルカ:「エネルギータンクの搬入完了~。重いってば!」
母・莉奈:「あんたたち、本当にこれ“武器”として作ってるのよね?なんか“息子を中心に開発される国家兵器”みたいになってきてるけど?」
俺:「……いや、半分くらい趣味だけどな?」
この“Z-Energy-Injector Gun”、略して【ZEIG】(ゼイグ)は、エネルギー弾を精製→圧縮→射出までをAI制御で行う“知性型戦術兵装”だ。
撃つときは、スイッチを入れると側面からガシュンとエネルギー注入器が展開され、銃口の弾にエネルギーを流し込む。
それをリアルタイムでモニターに表示:
密集率:83.21%
タンク残量:54%
内部循環温度:165℃
安全限界ライン:振り切ってる(赤)
……大丈夫かこれ。
【開発休憩:地下サーバールーム】
俺:「……これ、戦闘用っていうより、演出用じゃね?」
咲:「まあ、男子が主役の映画なら映えるわよ。男子がね」
俺:「言い方」
ルカ:「でも、強いでしょ?あなたの“能力”と組み合わせれば最強じゃん」
俺:「……まぁ、情報表示で内部出力値とか敵の防御特性とか見れるし、能力コピーで“相手の放出技”を逆算できれば、確かに」
母:「ええ、でもこれ、普段は“ただの金属塊”にしか見えないようにしておきなさいよ」
澪奈:「じゃなきゃ、通報されるもんねー。教育委員会のババ――お姉さま方に」
咲:「下手すりゃ“D組男子の反乱”とか言われて討伐対象よ?」
……これが一ノ瀬家の“団らん”です。
【テストフィールド:裏山】
とりあえず、試し撃ち。
スイッチON。
ズウウウウン……
側面が開き、液体エネルギーがぐるぐる光を描きながら中心に収束する。
銃口に青白い火球が、凝縮されていく。
音は、まるで命が震えてるような“鼓動”。
ルカ:「出るよ!」
俺:「出すよ!」
咲:「それ、ちょっと言い方がヤバい!」
澪奈:「発射ー!」
ズバアアアアアアアァァンッ!!!
……地面が半径10メートル抉れた。
俺:「……あ、これ、やべぇわ」
母:「はい、申請書提出と補修工事の予算確保、っと」
咲:「あんた、それ副業かなんか?」
母:「家庭内官僚なのよ」
【夜:自室】
完成した【ZEIG】は、NSF-Ωのフロント部にも設置できるように設計した。
何がしたいのか、自分でもわからない。
でも――
“自分にしかできない武器”を、
“誰にも真似できない頭”で作るのは、嫌いじゃない。
俺:「……これが俺の、居場所の証明だろ?」
ルカ:「それ、私のセリフパクったでしょ」
俺:「お前が“壊して作る”なら、俺は“作って壊す”だけだ」
ルカ:「……好き」
そんな静かな夜。俺