第四十四話「合法改造車」
B組、休校三週間目。
俺は、目覚めた瞬間、天井を見ながらこう思った。
「……あと、燃費だけだな」
前回作った怪物マシン《Ω-CODE:Z-REVOLVER》。
0.4秒で100km/hに到達し、排気音だけで近所の犬を恐怖に陥れ、道を爆砕したあの伝説の超バカ車。
しかし――致命的な問題が一つあった。
リッター1km
戦車かお前は。
しかも、街中走るたびに「地面が燃える」「電柱が根本から折れる」「電気メーターがバグって3万ボルト」などの副作用を伴い、最寄りの役所から「道路損壊に関する通知」が届く始末。
……まぁ無視してるけど。
だから俺は次なる進化に挑んだ。
【プロジェクト名:Z-REVOLVER Phase.II】
目的は明確。
“燃費60km/L・超絶パワー・合法ギリギリ”の三拍子を達成すること
ついでにライトを変え、マフラーを**“四本出し・低音重音特化型”**にし、V20エンジンにターボを追加、モーターも鬼強化。そして――
「モード切替ボタンをナビにぶち込む」
【選択肢】
ハイブリッドモード
エンジンモード(※地面が割れる)
モーターモード(※静かに光速)
これにより、状況に応じた走行が可能に。燃費向上&合法性強化。もちろん、合法性は“俺基準”だが。
問題は――
「パーツが足りない。てか、こんな部品、売ってない」
だから俺は再び、召喚した。
【強制再結成:家族バカ四重奏(+1)】
・母:莉奈(CV:大人の余裕・再)
「ハイブリッドにしたら、ガソリン代いくらになるの?」
・姉:咲(CV:修羅改)
「マフラー四本とかアホじゃん。……いいね。燃える」
・妹:澪奈(CV:シーサー2nd)
「ナビにボタン追加しとくね☆ ただし“自爆モード”は押さないでね!」
・ルカ(CV:爆音の中の知性)
「音が……音が足りねぇ……もっと響かせろォ!!」
この五人で、一ヶ月。
V20エンジンにさらにターボを追加するため、俺と姉は夜な夜な火花まみれで溶接し、モーターを強化するためにルカは深夜まで謎の演算式と格闘。
妹はナビのUIを「可愛いけど怖い感じ」に設定していた。ボタン一つで世界が終わりそうなやつ。
母はその間、燃費向上にあわせて夕飯を「カロリー60kcal定食」にした。いらん気遣いだ。
【改造完成:Ω-CODE:Z-REVOLVER Phase.II】
八月の終わり、再び地下ガレージのシャッターが開く。
フェーズツーの姿は、前回よりさらに攻撃的かつ洗練されていた。
マフラーは四本出し・チタン焼き加工、マジで太鼓の音が聞こえるレベルの重低音。
フロントには新型LEDライト――まぶしすぎてカラスが墜落した。
そして、ナビが喋る。
「おはようございます。エネルギー収支最適化完了☆ 現在の推定燃費:62km/Lです。すごくない?」
すげぇよ。
けどその直後、爆音すぎて家の茶碗が10枚割れた。
試走開始。
【近所試走:合法崩壊】
アクセルを軽く踏むと――
ギュオオオオオオオオオオオン!!!!!!
V20ターボがうなり、四本出しマフラーが怒鳴り、地面が「すいません!」って謝った。
妹:「兄ちゃん、速度メーター壊れたよ☆ “∞”って出てる!」
ルカ:「音圧で前の軽トラが後ろに飛んでったァ!!」
姉:「やっぱマフラーは四本が正解だな。魂が震える!」
母:「帰ったら晩御飯、耳栓着用ね」
ナビ:「現在、法的境界線を高速で横断中です☆」
俺は叫んだ。
「これが合法だああああああああああ!!!!!!」
【申請書類:国土交通省への挑戦】
そして俺は――
この車を、国に提出した。
「合法です、見てください。燃費、静粛性、AI搭載、安全装備もつけました。四本出しマフラーです」
提出後の返答:
『あなたは正気ですか?』
即日却下。
……まぁ、予想通り。
でも、俺たちは笑っていた。
家族で作ったバカ車は、法の壁なんぞ超えていく。
【ラスト:砂浜のその先へ】
再びZ-REVOLVERを砂浜に停め、俺は助手席に乗ったルカを見た。
「次は……どうする?」
ルカは微笑み、言った。
「もっと速く、もっと遠く。兄ちゃんとなら、地球の外でもいけそうだよ」
――燃費60km/L、最高速度8000km/h。
俺たちの物語は、まだ止まらない。