第四十三話「車作りますね」
B組に転入して、三週間目。
俺は、休みが欲しかった。
理由はシンプル。「車を作るため」だ。いや、学校がめんどいとかじゃない。前代未聞の“V20エンジン搭載・AI付き超次世代マシン”を開発するために、まとまった時間が必要だった。
ただし、普通に申請しても、そんな理由で休校が通るわけがない。
なので――俺は高校の体育館を爆破した。
合法的に。
【作戦名:バカ休校爆破大作戦】
金曜の夜、俺と妹・澪奈は体育館に潜入していた。
「兄ちゃん、ほんとにやるの?」
「ああ。俺の“開発”は国家規模だ。許されるべき」
「“開発”って響き、なんかヤバいね☆」
俺の手には、模擬爆弾型強制解体ドローン。もちろん市販品を魔改造しただけで、人畜無害。けど見た目は爆弾。通報されるとアウト。
だが、その夜、俺のドローンは天井を爆破し、体育館の梁を半分だけ崩壊させた。
翌朝――
『安全が確保されるまで、学校は休校とします(期間未定)』
「ッッシャアアアアアアア!!!!」
俺は勝利の雄叫びを上げた。作戦名通り、バカのためのバカによる休校爆破は、見事に成功したのだ。
【開発:V20超絶バカ車プロジェクト始動】
翌日。俺は自宅の地下、通称《開発ベースΩ》にこもっていた。
設計図はすでに完成済み。名前は――
《Ω-CODE:Z-REVOLVER》
V20型12,000ccエンジン(※実物大、地球に不要)
モーター内蔵型ターボAI補助推進機構
AIナビ(アル○ァードから抜き取り済)
20段変速マニュアル・セミフル可変対応
マフラー音:低音/重音特化(※近所迷惑)
チタン焼き仕上げのリア2本出しマフラー
リアに刻まれる『V20 REV』のエンブレム
問題点:俺一人じゃ絶対に無理
なので、家族を巻き込んだ。
【強制召喚されたチーム《家族バカ四重奏》】
姉:一ノ瀬 咲
「男がエンジンなんて語るな。見とけ、これが溶接ってやつよ(火花ドバァ)」
妹:澪奈
「AIナビは任せて☆ 代わりに“ニートモード”って入れていい?」
母:莉奈
「夕飯はV20定食ね。おかわり?ないわよ?」
ルカ
「ウヒョ~ッ!チタン焼きすっげぇぇ!!これ、戦争できるレベルだろ!?」
このチームで、一ヶ月。命を燃やした。
【完成の日:Ω-CODE:Z-REVOLVER、起動】
八月の終わり、ついにその時は来た。
地下ガレージのシャッターが開かれ、黒く輝く流線型のマシンが姿を現す。
エンジン始動。排気音、爆音。壁、揺れる。
「ん゛ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
近所の犬、20匹が同時に吠え出す。
「兄ちゃん……これ、飛ばない……よね?」
「多分」
俺は震える手でシフトノブを握る。クラッチを踏み、ギアは……1速。だが、表示は**『1 of 20』**
「行くぞ。Z-REVOLVER、出撃だ」
住宅街に怒鳴り声を響かせながら、俺はアクセルを踏み込んだ。
【試走:近所崩壊】
加速開始。
0→100km/h:0.4秒
道路に亀裂、郵便ポストが爆散。カーブを曲がるたびに遠心力で近隣の電柱がなぎ倒される。
「これ、合法かあああああああああ!!?」
「兄ちゃん、ダメだって!!道が燃えてる!!!」
ナビのAIが言った。
「次の交差点、300km先を右です☆」
「遠っ!!!!!」
そして、試走終了地点――
海岸
俺は砂浜にZ-REVOLVERを止め、波打ち際に一人座る。
「……完成した。俺の車が」
「兄ちゃん。後ろ、見て」
振り返ると、家族とルカがいた。全員、満身創痍。
母:髪にスス
姉:溶接機に腕を吸われた
妹:シーサーモード発動中
ルカ:爆音で鼓膜が一時停止
でも、全員――笑っていた。