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劣等超能学級  作者: 冬城レイ
第五章「バイク(ギャグ編)」

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第三十六話「レースやるわ」

朝の風が心地よい。

 だが、俺の心は、どこか――渇いていた。


 二週間前に完成した、俺の愛機《NSF-∞(ナイトストームファング・インフィニティ)》は、確かに傑作だった。

 チタン合金フレーム、V6エンジンとハイパワー電動モーターのハイブリッドシステム、謎の猫耳AIナビ、異次元電池、空間すら歪めるパワー。


 でも……まだ何かが足りない。


「俺、もっと……速くなれる気がする」


「またそれぇ!?」

 ルカが台所からツッコんできた。バナナ食べながら。


「でもレースで勝たなきゃ証明できないだろ? “男でも速い”ってことを」


「え?また性差別されてんの?」

 姉・咲がトイレから出てきて、バスタオル一枚で参加してきた。


「Cクラス女尊男卑問題、バイク界にも波及してるからな」


 澪奈は冷蔵庫からチョコを取り出しながら呟く。

「まあ、レースとか……燃えるね!」


「よし、出よう。全員女。俺だけ男」


「逆ハーレムか?」

「違ぇよ!!」


◆【レース会場──“風斬杯(スカイ・スラッシュGP)”】


 会場に入った瞬間、視線が突き刺さる。


「え?男?」

「また観光で来たのかな?」

「マシンはかっこいいけど……なんか中身弱そう~」


 はい出ました!偏見!!


 女尊バイク界の実態は、華麗な外見と爆走性能の裏で、男子排斥が深刻である。レギュレーション上は問題ないはずなのに、なぜか事前ブリーフィングで俺の名前が「ユウマ子」になってた。誰だよ勝手に“子”つけたやつ。


「まあいい。見せてやるよ、“俺の走り”を」


 マシンにまたがる。隣のブロンドの女がクスクス笑ってきた。


「ふふ、坊や。エンジン音だけはイイじゃない。オモチャにしては」


「フラグ立てんなよ?」


◆【スタート】


 レース開始の号砲と共に、全員が一斉に“ブースト”──


 空間が震える。火花が飛ぶ。超加速、超反応。


 だが、俺は──しなかった。


「……“ハイブリッド・モード、カット”」


 モーターOFF。エンジン単独起動。


 そう、ここからが俺の戦略。


 V6エンジンの重厚な咆哮が響く。

 モーターを切ることで加速レスポンスは下がるが、トルク制御は圧倒的に安定。

 皆がコーナーでアウトに飛んでいく中、俺だけがラインをなめるように通過する。


「加速だけが速さじゃねぇんだよ……!」


《YUMAverse:Gフォース分析完了。最適ラインを提示します。》


《ネコナビ:♡バリアブルシフト入るよぉ〜♡》


「入るな!!」


 途中で“モーター単独モード”に切り替え。

 静寂。だが速い。風を斬る刃のような滑走音。

 V6の振動がないぶん、路面の状態を正確に感じ取れる。


 そして最後のストレート。


「両方使う!!“ハイブリッド・モード、最大出力ッ!!”」


 ブワアアアアアアアアアアアア!!!!


 火が出る。

 いや火どころじゃない、マフラーから雷と炎と謎の桜吹雪まで出てる。

 近くの観客が失神した。大丈夫か?


 そのまま──ゴール。


 俺の《NSF-∞》は、誰よりも速く、誰よりも正確に、そのゴールラインを貫いた。


◆【レース後】


「……勝った。けど……」


 不思議と、満足感はなかった。


「お兄ちゃんすごい!」

「さすが!」

「まあまあね」


 家族が駆け寄ってくる。


「……違う。これじゃないんだ」


 風は感じた。世界も震えた。だがまだ足りない。

 もっと……もっと俺は──速くなれる気がする。


「……V8だな」


「また始まったぁああああ!?」

 全員で同時に叫ばれた。


◆【深夜・開発室】


「V型8気筒。夢だろ、これは」


 白紙の設計図にペンを走らせる。

 モーターは四基に増設、タービンも二重化。排熱システムを一新、AIも複数人格搭載予定。


《ご主人様ぁ、マフラーは4本出しでお願い♡》


「了解した、ネコナビ」


「おい、それVM◯Xじゃね?」


 ルカが背後から顔を出す。笑顔が若干引きつってる。


「どうせならターボも積む?てか宇宙行けるようにしない?」


「それはその次のプロジェクトだ」


 俺はそう言って、設計図のタイトルを書き込んだ。


 《PROJECT:NSF-Z∞ “Overdrive Edition”》


「地球じゃ終われねえんだよ……この魂はな」



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