表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劣等超能学級  作者: 冬城レイ
第五章「バイク(ギャグ編)」
36/66

第三十五話「V6バイク」

 休校になって二週間。

 家の復旧も終わり、スパコン“YUMAverse”は家族にフル活用され、俺はふと一つの真理に気づいた。


──俺、動いてなくね?


 地下に引きこもってコード書いてばっか。スパコンが全部やってくれるから、最近は筋肉どころか骨までサボってる気がする。


「そうだ。バイクだ」


 なぜか突然、そう閃いた。

 人は旅に出る生き物。ロマンはいつも風に乗る。

 ならば俺も──風になるべきだろう!!


「よし……作るぞ、最強のバイクを!!」



 まず、エンジン。

 既製品? 却下。

 V型6気筒エンジンを、自分で削り出す。カムシャフトもピストンもコンロッドも自作。削るたび火花が散り、母が台所から怒鳴ってくる。


「悠真ー! アルミ削るなら換気扇つけなさーい!!」


 すまん母さん、排気効率を追い求めてたら忘れてた。


 次、モーター。

 最大出力300km/h。サブ電源としてリチウム空間圧縮電池を実装。物理法則には、だいたい喧嘩売ってる。


「これ、電動なの? ガソリンなの?」


「両方だ。あと魔力対応」


「意味わかんない!!」


 おまけに、AIナビも当然搭載。声は、ネコ耳ボイス仕様。


《右折します♡……え?まだまっすぐ? ふーん、じゃあ左に曲がっちゃおっかな♪》


「うるせえ!!GPSに反抗すんな!!」



 バイクのフレームは、チタン合金とルカの謎3Dプリント技術で製作。

 カラーは“深紺”──夜を切り裂く狼の色。

 マフラーは特注低音型。エンジンをかけた瞬間、近所の窓が震える。

 タコメーターはアナログ+ホログラム。

 燃料ゲージには意味なく炎エフェクトが出る。


「バイクってか、もはや戦艦だな」


「失礼な。これは愛だ」



 そして完成──


 全長3メートル、横幅90cm。

 排気音は「ゴオォォオオオ!!」というより「ガァオォオオオ!!」に近い。

 名前は《NSF-∞(ナイトストームファング・インフィニティ)》

 通称、“走る棺桶”。


 ……というわけで、家族にも試乗させてみた。


◆【母・莉奈の試乗】


「……これ、車道走っていいの?」


「任意保険には入ってる」


「いやそういう問題じゃない」


 乗った瞬間、あまりの加速に街一個飛び越えた。戻ってきたときのセリフがこちら。


「すっごく楽しかった!でもブレーキ利かなくてパン屋三軒潰したわ!」


 被害は後で弁償した。


◆【妹・澪奈の試乗】


「うわ~これ超強そう!かっこいいー!」


 笑顔でまたがると、神獣モードに突入。


「ドラグニル、乗る!!」


「それはペガサスじゃねぇ!!」


 そのまま飛び上がり、国道から空へ飛び出した。

 降りてきた時には背中に金の羽が生えてた。

 能力使いすぎて、空間にヒビ入ってる。地球が心配。


◆【姉・咲の試乗】


「ふぅん、なかなかいいバイクじゃん。……でも遅いな」


「お前の基準おかしくね!?」


 最初は普通に走ってたが、5秒後にはスタント走行始めた。


「見てこれー!片輪走行ーー!」


「やめろ死ぬぞ!てか後輪片方しかついてねぇよな!?」


 姉はそのまま一回転して無事着地。

 道路がクレーターになった。修復中。


◆【俺・悠真の試乗】


「さぁて、俺も本気出すか」


 スパコンYUMAverseの自動走行制御をONにし、ヘッドセット装着。

 アシスト機能と連携して、俺の視界にルート、交通情報、気圧、そして妹の機嫌まで表示される。


《澪奈のストレス値:7%(チョコで回復可)》


《母:やや怒り気味(風呂掃除サボった)》

《姉:圧倒的上機嫌(最近何か爆破した)》


 スロットルを捻る。


 ゴォォォォォォォ!!!!


 風が、世界が、音速で流れていく。

 体が、魂が、空とひとつになる。

 それはまさに“生”の実感。全能感。地球最速の浪漫。


──これが、俺の作った《NSF-∞》。

 夢と技術と狂気の結晶。走る爆弾。泣く整備士。



 夜。


「……最高だったな」


「でしょ?」

 ルカが満面の笑みで隣に座る。


「でも、次はもっと速いのが欲しいよね。宇宙行くとか?」


「いやそれはさすがに──」


《次のプロジェクトを提案します。名前は“LUNAR BLADE”──月面走行対応型。》


「やっぱAI暴走してるじゃんかああああああ!!!」



──こうして。

俺のバイクは完成した。

家族は元気。家は揺れる。地面は割れる。


でもまあ、それが“俺たち”の日常だ。


《次は、地底帝国とレースしませんか?♡》


「やめてくれマジで!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ