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劣等超能学級  作者: 冬城レイ
第四章「Cクラス移動編」
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第二十九話「付き合ってみたけど」

◆俺(悠真)視点


「なあ、付き合うって……何をすればいいんだ?」


翌朝、俺は教室で頭を抱えていた。


誰かに相談するわけにもいかない。

なんせ、相手は女子だ。しかもルカだ。

そのうえ、“女子に好かれた男子”というレッテルは、この国では合法的に「公然わいせつ予備軍」と認識されかねない。


(つか、昨日付き合ったはいいけど……何すりゃいいんだよ!?)


手を繋ぐ?

どこかに遊びに行く?

弁当作ってもらう? 逆に作る?

いやそもそも女子と昼飯食ってるだけで男子更生プログラムに送られる国だぞ!? この国どうなってんだよマジで。


「お前の脳内モノローグ、顔に全部出てるからな?」


後ろから声がして振り向くと、ルカがいた。


……白い。


……ふわっとしてる。


昨日と同じ制服なのに、なんか違って見えるのはなんなんだ。

あれか、彼女フィルターってやつか。


「で、ルカはどうなんだよ。俺と付き合うって決めて、何かこう……したいことある?」


「はい! 全裸で朝のランニングを」


「それは一緒に捕まるやつ!!!」


「冗談ですよぉ。……でも、ちょっと悩んでるのはこっちも同じです」


ルカはそう言って、少しだけ寂しそうに笑った。


「“普通のカップル”って、何するんでしょうね……。今まで、組織の命令で人の裏をかくことしかしてこなかったから……正面から好きって言って、相手と過ごすの、初めてなんです」


(……ああ、こいつ、本当に俺のこと好きでいてくれてるんだな)


そんなルカを見て、思わず頭を撫でた。


「ま、わかんねーけど、ぼちぼちやっていこうぜ」


「……はい」


その瞬間、後ろから、


「ギルティィィィイイイイイイ!!!!」


叫び声が響いた。


◆澪奈視点(風紀委員、モニタールーム)


「姉ちゃん! あいつらまたイチャついてるってば!!」


「うるさい。法に触れないギリギリを攻めるしかないわ……。澪奈、放送室の鍵は?」


「ないってば! もう一度言うけど犯罪!!」


咲は震える手でメモ帳を取り出し、《交際規制法案・案その233『手を繋いだ場合、風紀委員に報告義務』》と殴り書きしていた。


「そんな法律、国が発表したら即内閣吹き飛ぶわ!」


「仕方ないでしょう、妹を取られた姉の気持ちは国境を越えるのよ」


「私、誰の妹だよ!?」


「私のよ!!!」


咲の瞳がマジすぎて怖かった。


◆天峰ルカ 視点(放課後)


「――で、組織の話なんですけど」


二人で帰り道を歩く中、ルカは急に真面目な顔になった。


「例の“浄化計画”、動き出したみたいです。“男子の思想再教育”を強制的に行う実験施設が、郊外に建設されてる」


「またかよ……。それ、以前に潰されたプロジェクトの残党がやってるやつだよな?」


「はい。しかも今回、その計画を仕切ってるのは、私の直属の上司です。代々、“感情排除教育”を受けた、感情を持たない女」


「え、それ人間か?」


「人間です。でも、心がない」


「……あんたも、昔はそうだったのか?」


「……はい。でも、変わったんです。変えてくれたのは、あなたですから」


ルカは、俺の手をぎゅっと握る。


「私は、あなたの味方です」


「……ありがとな」


けれど、そんな穏やかな時間は、長くは続かなかった。


◆深夜、悠真の部屋


スマホが震えた。


ルカからのメッセージ――


“至急、明日。例の施設に一緒に潜入してほしい。

正体がバレれば、処分される可能性あり。

でも、私はもう逃げたくない”


(……始まるんだな)


俺は、スマホを握りしめた。


彼女と付き合って、たった一日。

でも、この一日で、確かに世界が変わった。

たとえそれが“世界に牙を剥かれる未来”だったとしても。


「もう一回だけ、言っとくか……」


そう呟いて、スマホに返信した。


“俺がそばにいる。だから、やれるとこまでやってやろうぜ”



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