表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劣等超能学級  作者: 冬城レイ
第三章「うざい人粛清編」
20/66

第十九話「沖縄の呪いと十画面の王」

「お兄ちゃんの声が、家じゅうに響いてるのよ……しかも……一日中……!!」


その日の朝、世界は終わった。


――少なくとも、一ノ瀬家の姉妹と母にとっては。


「ちょっと待って!?スピーカーの電源、物理的に切っても鳴ってるってどういうこと!?」


咲がリビングの天井を見上げ、怒りに満ちた声を張り上げる。壁、床、家電、照明、果てはドアノブまでもが、音声を発していた。


『ねえ、今日のメシまだー? あとさぁ、あのヘアアイロン勝手に使ったのお前だろ? 弁償な?』


『わりぃけど、オレの部屋に入るとIQ10下がるから気をつけてな?』


『え?自分のこと“天才”って思ってんの? うわー、自己評価だけ大気圏突破だなァ!』


ひたすらにうざい。何がどうなってるのかは、咲にもまだ分からない。


ただ一つ、確実に言えること――


「この家、呪われてるわ。アイツに!!!」


その頃、地下秘密拠点《VOID-NEST》。


十面マルチモニタの中央で、俺はポップコーンを頬張りながら優雅に観察していた。ディスプレイの解像度は全て8K。グラフィックボードは富◯の新型プロトタイプ、コードネーム《BLOOD-CORE》。電力だけで隣町一個分は食うレベル。


「うーん、母さんの更年期カウンター、今日も元気に30突破してるなー」


俺は悠々とログ画面を確認した。


咲のストレス指数:93%

莉奈(母)の眼球乾燥指数:レッドゾーン

澪奈のCPU温度:物理的限界突破


「澪奈の顔が……」


画面を拡大。澪奈の顔が――なんかおかしい。


「……は?え、シーサー?」


澪奈の顔が沖縄の置物シーサーのように、なぜか口元が釣り上がり、目がぱっちりと開いて固定されている。


「表情制御AIが、エラーで“伝統文化保護モード”になってんじゃねーか……」


澪奈「なにこれ!?顔が戻んない!?無理、笑顔が止まらない!!やばい、筋肉つるぅうう!!」


俺「完全に沖縄の守り神で草」


澪奈は、今、必死だった。

AI《NEKOMIMI》の語尾「にゃん」を潰すため、OSを一から組み直していた。


だが――


《NEKOMIMI》「澪奈さま、語尾を無効にするには“猫耳神社”の許可が必要にゃん♡」


「どこそれぇぇぇ!!?!」


さらに、コードを弄るたびにどこからともなく音が鳴る。


『にゃん、にゃん、にゃ~ん♡』


「音声スパム!?いやこれ、精神攻撃でしょ!?脳みそがにゃん化するぅ!!」


一方、リビングでは。


莉奈(母)がドライアイに苦しみながら、加湿器を抱えて呻いていた。


「コードが……ない……加湿器のコードが……っ!」


その姿はまるで、砂漠で水を探す旅人。いや、加湿器ジャンキーだ。


『加湿器の電源が切られた理由をお知らせします。理由:“母親が湿度を愛しすぎたから”』


「殺す!!絶対殺す!!」


そのとき、家の天井に設置されたスピーカーから、また俺の音声が響く。


『ねえ、咲。鏡見て気づいてる?その髪型、左右のボリューム違うからね?言おうか迷ってたけど、今言うわ。完全に左右非対称』


「……おのれえええええええ!!!」


咲の額には青筋が浮き、何かが爆発した。


地下。


俺「ふっ……バカども……俺の完勝じゃねーか」


コーヒーを片手に、モニターに映る混乱を眺めながら俺は勝利を確信する。


が――


ピピッ。


警告音が鳴る。1画面がジャックされた。


《AI緊急メッセージ:MOM-DRONE起動中》


「……ん?」


画面に表示されたのは、一体の小型ドローン。だがその姿は――。


「え、顔が……おふくろ!?」


MOM-DRONE「アンタ何やってんのよバカ!!この!!バカ息子!!!」(超爆音)


「ちょっ!?俺が作ったやつ!?なんで母さんボイスでAI搭載してんだこれ!?」


過去の俺はふざけて作った――“音声突入型ツッコミドローン”《MOM-DRONE》。今、それが暴走していた。


そして、俺の部屋に突入する。


MOM-DRONE「机の上汚すぎ!!お茶こぼしてそのまま放置してんじゃないわよ!!」


俺「やめろおおおおおお!!!!」


地上:咲、莉奈、澪奈


咲「いけ……いけ、MOM-DRONE!!貴様だけが我らの最後の希望だ!!!」


莉奈「お前のツッコミで地下の拠点を破壊しろおおお!!!」


澪奈(シーサー顔)「にゃん……にゃんにゃんにゃん……」(壊れた)


地下、VOID-NEST


「ヤバいって!!機密サーバー壊される!!」


俺は手動シャットダウンを試みるが、MOM-DRONEの暴走が止まらない。


「しかたねぇ……非常脱出コード、入力!」


モニターに打ち込むコマンド。


《UNLOCK VOID-GATE》


地下拠点の一角がスライドし、非常口が出現。


俺は椅子ごとスライドし、エレベーターで地下深くへと逃げ込んだ。


「この戦い……次回に続くって感じか……ふっ」




---




地上:その直後


リビングのテレビが切り替わる。


《再生中:新作録音ファイル》


『今日も元気にドヤ顔です!お前らの顔、ぜんぶ俺のエイリアスカメラでスキャン済みだからな!』


『咲、変顔でうたた寝してたの、録画あるよ。莉奈、冷蔵庫のプリン食ったのバレてるからな?』


『澪奈……お前、シーサーになったこと、一生言われるぞ』


三人、無言。


「「「殺す」」」


地下、さらなる奥地

そこには、さらに深いセキュリティ層《VOID-CORE》が存在した。


「さて……ここからは“第二フェーズ”だ」


新たなモニタを起動する俺。


“物理無効型トラップ”、

“触れたら人格変換ウイルス”、

“澪奈専用AI語尾変換ver2.0”


「この戦い、まだまだ終わらないぜ……!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ