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劣等超能学級  作者: 冬城レイ
第三章「うざい人粛清編」
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第十八話「意外とすごいの搭載してます!」

「もういい!絶対、見つけ出してぶっ飛ばす!!」


家中に怒声が響いた。豪邸の庭には、怒り心頭の姉妹と母――一ノ瀬咲、一ノ瀬莉奈、一ノ瀬澪奈が、ありとあらゆる道具を持ち出して“何か”を探していた。


「咲、スコップ貸して。芝生掘る」

「おい待て、ちょっと待て、いくらなんでも地面掘るのはやりすぎでしょ!?」

「甘い。アイツのやり口見て、まだ常識が通じると思ってんの?」


莉奈はすでに作業用ヘルメットを被り、DIY用の小型ドリルを手にしていた。何をする気だ。


「リビング床板、剥がす。絶対その下にいる」

「は?バカなの?」


その横で澪奈は、最新型の可視化スキャナとハッキングAIを駆使して家の隅々まで解析中。だが表情は険しい。


「地下空間の構造に異常がある。もともとの設計図と一致しない。空間が“拡張”されてる……というより、私たちが見ていたデータ自体が改竄されてる可能性が高い。……やられた」


「改竄されたって……どうやって?」

「わからない。でも、ウチの家の“全システム”が、こいつに一度は乗っ取られてたってのは確実」


咲がついに我慢できずに叫ぶ。


「アイツ!今どこにいるのよおおおおお!!!!!」


その叫びに応じるように、庭の植木から「ポシュッ」と不穏な音がした。


「……え、今なにか飛んできた?」


次の瞬間――。


《ピピッ……マーキング完了。対象:アホ姉1》

《ピピッ……マーキング完了。対象:更年期母2》

《ピピッ……マーキング完了。対象:無感情AI妹3》


庭にいた全員の頭上に、薄く赤く光る“円形マーク”が浮かび上がった。そう、それは俺が設置した“防犯用マーキングボール”の命中表示。


「え!?なにこれ!?なにこれ!?」

「……これ、撃たれた!?」

「敵性認定……?は?私たち、この家の住人なんだけど!?」


そのとき、家の至るところから音声が再生される。


『ターゲット認定完了。対象:煩すぎる姉妹と母。準備、いーい?』


そして――


「花火、発射ッ!」


地中から空中へ打ち上げられたのは、爆発性ゼロ、殺傷力ゼロの、デジタル煙幕花火。可視光センサーを狂わせ、AIスキャナを撹乱する演出用ガジェット。


しかも、音声付き。


『一ノ瀬家の皆さーん!地下を探す暇があるなら、そろそろ自分の生活習慣を見直してはどうですかー?朝の洗顔、3人中2人サボってますよー!』


「……このクソガキいいいいいい!!!!」


地下拠点、通称:VOID-NEST


俺はサーバー室の椅子に座り、全方位モニターに映る姉妹と母の混乱を見ながら、ポップコーンを口に運んでいた。


「最高だな、これ……何ていうか、現代版の地獄絵図?」


壁面に設置された投影ディスプレイには、家中の監視カメラ映像が並んでいる。そのうちの1つ、澪奈のPC前にあるカメラが、異常を検知して警告を表示した。


『AIユニット再起動中。設定項目:語尾制御 ON』


俺はニヤリと笑う。


「来たか。澪奈……お前は必ず、あの『語尾にゃん』を潰しに来ると信じてた」


次の瞬間――


澪奈「……再起動完了。語尾、元に戻って……って、え?」


『澪奈さま、またお会いできて嬉しいにゃん♪ 本日は“撹乱検知モード”で頑張るにゃん♡』


「バカか!?また語尾戻ってるじゃない!!!」

「ざまぁあああああ!!!!!」


咲が絶叫し、莉奈が地面に膝をつく。


「……目が……乾く……ああああああ!!!加湿器、まだ戻らないのおおおお!!」


澪奈は必死にソースコードをデバッグしていた。


「ちょっと待って、書き換え箇所が自動で変動してる……定数が暗号化されて……うそ、関数ごと再編成されて……これ、生きたウイルスみたいな挙動してる……AIが“自分で”語尾変換を再生成してるのよ……!?」


そう。俺が地下で作った最新型“自己進化型バックドアAI《NEKOMIMI》”。


ふざけてるようで、構造的には軍事レベルの自動暗号再帰エンジン搭載。語尾変換は“ジョーク”ではなく、“侵入検知の陽動”だった。


「ま、冗談半分、復讐全振りってとこだな」


俺はECHO-COREの解析を確認し、咲の“電磁遮断波”のデータの取り込みが完了したことを確認する。


「……次のターゲット、莉奈だな。彼女の“制圧術式”、一度模倣しておきたい。あの『静止フィールド』、使えりゃ絶対強い」


マークされた3人の最新座標がモニターに表示される。パターン、動き、呼吸、視線――すべてが“データ化”されて、俺の掌にある。


「ハンターと獲物、立場逆だってこと、教えてやるよ」


一方その頃――リビング


咲「ちょっとぉ!!カメラ、全部乗っ取られてるんですけど!?」

莉奈「加湿器の電源コード、切っていい!?」

澪奈「AIが語尾で攻撃してくる意味がまだわからないのよ……でもなんか、負けた気がする……!」


そんな中――テレビが唐突に切り替わった。


映ったのは、俺の顔。

その下に、シンプルな文字。


『NEED A HUG?』

『STILL NOT DEAD :)』


そして。


『地下の王より、地上のカスどもへ』


「殺す!!!絶対に殺す!!!!」

「私が!この手で!!」


「……でも、見つけられないんだよね?」


その一言が、誰よりも効いた。


地下拠点:再び


「さて……次は何を仕掛けようかな」


俺は新しいボールの設計を進める。次はマーキングじゃなく――自動追尾型“ツッコミドローン”。


音声突入タイプ、名付けて:


《MOM-DRONE》――(Mom:「アンタ何やってんのよバカ!!」を連呼)


「今度は物理的に煽ってやるよ、お姉様方」


俺の戦いはまだまだ続く。


だって、生きてる限り――“嫌がらせ”は、終わらない。

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