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劣等超能学級  作者: 冬城レイ
第三章「うざい人粛清編」
16/66

第十五話「コンテナハウスなくね?」

――残り、五秒。


《制御ブロック:一時解除まで、残り――5、4、3……》


(来る……来るぞ)


脳内のカウントダウンと共に、意識が鋭く研ぎ澄まされていく。


――2、1、0。


その瞬間、ドクンと体内で何かが跳ねた。

視界が一気に開け、全身の感覚が再接続されていくような感覚。


(……戻った。いや、違う。上書きされた)


情報が脳に流れ込む。


この数分間、俺の《演算蓄積》はただ耐えてたわけじゃない。干渉されていた情報波形を全て記録し、分析し、模倣可能な状態にまで落とし込んでいた。


つまり――


「俺に干渉してた力、こっちのモンだわ」


《情報表示》、起動。


現れるのは“さっきまで俺の能力を封じていた何か”の正体。


《干渉型制御特性:領域ジャミング》

発動者:不明(推定:俺の妹)

ステータス:擬似再現済み


(……やっぱりか。あいつ、まだ完全に殺す気で来てるってことだな)


立ち上がる俺を見て、女子二人がギョッと目を見開く。


「お、おい……また立った……!」

「今の殴打、まともに喰らったでしょ!? なんで……!」


そりゃあ痛いよ。あばら三本くらい逝ってるし、左肩も外れかけてる。あと、吐きそう。


でもな――


「こっからは、俺のターンだ」


指を鳴らす。ガチで鳴らす。ボキボキじゃなくて、パチン、って音で。


次の瞬間、空気がねじれる。


「な、なにこれ……っ、体が……動かない!?」

「うそ……私の《拘束蔓》が、自分に絡まって――」

「ほら、返却しといた。ついでに、《爆裂制御》も若干増幅させといたから、気をつけてね?」


叫び声と共に、自爆モード突入の一人が吹っ飛んでいく。自分の拳が自分に炸裂するって、なかなか見れない光景だな。R指定モノの惨状だけど。


残り一人。


俺はゆっくりと歩み寄る。


「ち、近寄んなっ……お、お願い、もう降参だから……!」

「うーん、どうしよっかなー。でもさ、朝言ったよな。“男子なんてゴミ”って」


女子が青ざめた顔で首を振る。


「ご、ごめんなさい! あれは、その……場のノリというか……!」

「へー。じゃあ俺がこれからぶん殴るのも、**“場のノリ”**ってことで」

「ぎゃああああああああ!!」


ドサッ。

勝負、終了。

場内、静寂。


空気が止まったような感覚。誰も声を発せず、ただ呆然と俺を見ている。


そして――


「うぉおおおお!! 男子勝ったぁあああ!!」

「やっべぇええええ!! あれマジで人間かよ!」

「ちょ、さっきまでボコられてたのに、何あれ、主人公ムーブじゃん!!」


……ははっ、なんか、いい気分だな。


ボロボロの体で立ち尽くしながら、俺は空を見上げる。


(……でも、気を抜くな。あいつらは、俺を消すまで止まらねぇ)


そう、今の一連の能力停止――

あれは俺の妹による干渉だった。


あの時の奇襲、そして家での殺害未遂。全ては段階的に進行していたんだ。今度は能力ごと俺を**“使えなくする”**作戦ってわけか。


(上等だよ……妹)


そろそろ帰るか――と思って、自分の“家”に向かう。

そう、例のコンテナハウス。

物置みたいでショボいけど、俺にとっては“拠点”であり、唯一の安息地だった。


だった。


「……は?」


そこに、俺の拠点はなかった。


跡形もなく、消えていた。


コンテナがあった場所には、立ち入り禁止のロープが張られ、「撤去済み」と書かれた立札が無造作に立てられている。


(……マジかよ)


「……どんだけ用意周到なんだ、アイツ……組織もグルってことか」


俺は肩を落とし、額に手をやった。


けどな。


そんなこともあろうかと――


俺はコンテナの真下、土の一角をポン、と叩いた。

カン、という金属音。

そこに、仕込んでいた“隠し扉”が反応する。


「ふっふっふ。俺を誰だと思ってんだ。こうなるの、予想してなきゃやってらんねーよ」


パスコードを入力する。生体認証もオッケー。


――カシャン。


地面が静かに開き、冷たい階段が地下へと続いていた。

ボロボロの身体を引きずりながら、俺はその中に姿を消す。


(……妹がどんなに先を読もうと、こっちはさらにその上をいく)

(次は、絶対に――“こっちから仕掛けてやる”)


ガチで、そろそろ戦争だな――


俺の地下拠点で、静かにその幕が上がった。

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