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劣等超能学級  作者: 冬城レイ
第三章「うざい人粛清編」
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第十話「能力バレ」

家に戻ったのは、試合から二日後の夜だった。


――いや、正確には「コンテナハウス」に戻った、が正しい。

大会で勝ち上がったというのに、家族から連絡は一切なかった。母からの祝福も、姉からの皮肉も、妹からの軽蔑もなかった。

それは逆に、不気味だった。


だから一度帰ろうと思った。ただの確認のつもりだった。どうせ顔を合わせたくもないし、向こうもそうだろうから、寝て朝になったらすぐ出る予定だった。


コンテナのドアを開ける。狭く、古びていて、まるで物置の延長にしか思えない。布団も薄い。だが、今夜は疲れていた。深く考える余裕もなかった。


静まり返る深夜。時刻は午前一時を回っていた。

外は風が強く、トタンの壁を叩く音がリズムのように響いている。

俺は布団にもぐり込んだ。


――その瞬間だった。


「……音が、しない?」


違和感があった。

風が吹いているはずなのに、音が途切れた。完全な静寂。何かが“消された”ような不自然な空気。

俺は、ゆっくりと瞼を開けた。

……ドアが、開いている。

閉めたはずのコンテナのドアが、静かに開いていた。

そこに、二つの影が立っていた。


「……」


言葉はなかった。が、その目を見た瞬間、俺の体は本能的に跳ね起きていた。


「お姉と……みおな……?」


夜目にもはっきりわかる。


――殺気。


咲の手には、黒い槍。能力《絶対反射》の応用――反射構造を一点収束させた「侵入無効化の刺突兵装」。

みおなの手には、糸のように揺れる赤い光。精神系能力《人間操作》の派生型、“認識干渉”。

その両方が、俺に向いていた。


「おかしいと思ってたのよ、悠真」


咲が口を開いた。静かで、冷たい声だった。


「男のくせに、あんな勝ち方するなんて。見せ場が多すぎた」


「……バレた、か」


「当然でしょ。私、観察力だけは母譲りなの」


その瞬間、みおなが言った。


「能力、コピーなんでしょ?」


ドクン、と心臓が跳ねた。


「どうせ“情報表示”は偽装でしょ? 本命はコピー。ねえ、見てみたかったなあ……私の能力を使ってる悠真」


その目は、獲物を眺める蛇のようだった。


「だからさ、死んで?」


言葉の直後、咲が飛び込んでくる。

速い!


《直感補正・起動》


体を反転させ、布団ごと後方に転がる。コンテナの狭さが逆に幸いし、咲の槍が壁を貫いた。


「っち……逃げんじゃないわよ!」

「悠真……お兄ちゃん……さよなら」


みおなの赤い糸が、空中に螺旋を描いた。触れた瞬間、精神を壊す“操作干渉”。


《構造分析・即時展開:防壁術式・簡易版》


俺はコピーした《構造変化》能力の一部で、腕に“盾”を形成。赤い糸をぎりぎりで防ぐ。


「やっぱり、コピーしてるじゃない!」

「悠真、お前……なんで隠してたのよ!? 家族に嘘つくとか、最低!」


最低、ね。

ふざけんな。


「隠すしかなかったんだよッ!」


叫び返すと同時に、窓の小さな明かりから一瞬でも外を視認。逃げ場はある。

俺は、力いっぱい窓に突進した。

咲の槍が飛んでくる。みおなの糸が追う。

ギリギリのところで、俺は窓を蹴破った。

ガラスの破片が頬をかすめる。痛みと風が同時に襲う。地面に転がり落ちたが、立ち上がる。

心臓が爆発しそうだった。背中に殺意を感じる。


咲の声が響いた。


「逃がさないわよ、化け物」


みおなの笑い声が重なる。


「男のくせに……目立ちすぎだよ」

「目立たないと、生きてけなかったんだよ……!」


俺は、走る。

ただ、走る。

星も見えない夜だった。だが、俺の中にだけは――確かに火が灯っていた。


『このまま殺されてたまるか』


俺は、生きる。

この力が呪いでも、贋物でも。

その“偽り”を力にして――俺は、必ずこの世界をぶっ壊す。

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