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僕に四季を  作者: ともる
第一章:春
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第一話:出会い

はじめまして、ともると申します。

初めて小説を書くので連載の更新がまばらになるかもしれません。

よろしくお願いします!


「.....もう春か。」


眠くなるような暖かさを(まと)った風が街中を駆け巡る。

過ごしやすくはなったが、肌を刺すような冬の寒さも嫌いではなかった。

新しい教室の窓側の一番後ろの席。快晴とは呼べないが、窓から爽快に晴れ渡った青空を眺めながら渡来(わたらい) 椿(つばき)はそう考えていた。


ここ県立山篠(やましの)高等学校に入学して早一年が経った。

しかし、消極的な性格をしている僕に友達と呼べるような存在はまだいない。行事や委員会などの業務連絡以外でクラスメイトと会話した記憶は一切ないくらいだ。たまに話しかけてくれるクラスメイトはいたが、僕の返しが下手なのだろう、うまく会話が続かないのがいつものことだ。


「まあ、当然だよな。」


掠れた声で自嘲(じちょう)気味に呟いた。


パッと見渡した感じでは去年も同じクラスだった人がちらほらいる。

誰も僕のことなど覚えていないだろうけど。

そうしていると、右隣の席の女子と目があった。


「あ、どうも…」


「よろしくね」


彼女、白波(しらなみ) 柚月(ゆずき)はそう穏やかに微笑(ほほえ)んだ。

髪は肩にかからないくらいで綺麗に切りそろえられている。少し(つや)感のあるサラッとした髪は、しっかりと手入れをされていることが伺える。整った眉、長いまつ毛、猫のような可愛らしい瞳、小さめの鼻と口。容姿端麗(ようしたんれい)とはこのことを指すのだろう。


「綺麗.....」


「なんか言った?」


しまった、と思ったが、小さく(かす)れた声だったため聞き取れなかったようだ。普段から誰とも会話していないのが功を奏した。


「いや、なんでもないよ」


「そう?」


不思議そうにこちらを覗いてくる。少し顔が熱くなったが、きっと春の陽気のせいだろう。


僕は自然と窓に視線を戻した。



***



HRが終わり、下校を(うなが)すチャイムが鳴った。


「今日どっか行く?」


「とりま飯行こーぜー」


いわゆる陽キャと呼ばれる部類の男子たちの会話が耳に入るが、僕には関係のないことだ。


「久しぶりに話したな.....」


椿はそう呟き、腰を上げゆったりと帰路(きろ)についた。

あれを会話としてカウントしていいのかは怪しいが、学校で声を出すこと自体が久々だった僕からすると立派な会話である。


新年度初日ということもあり、簡単な自己紹介や大まかな二年次の授業に関する説明、時間割が記されたプリントなどの配付だけでHRが終わり、十時前には下校となった。

遊びに行く友達もいなければ、部活にも所属していない。そのため、電車通学である僕は大人しく最寄りの駅へと足を進める。

高校の最寄り駅である山篠駅までは徒歩七分。そこから自宅の最寄り駅である倉郷(くらさと)駅まで十二分。そして自宅まで徒歩七分。まあ一般的だろう。



***



平日のこの時間のため、車内はあまり混んでおらず、席もまばらに空いている。なんとなく立ちたい気分だったので、電車のドアに背を(あず)けた。


スマホで天気やニュースをぼーっと眺めるのが通学中のルーティーンだ。

今日もいつものようにそうしている。


ふと顔を上げると、反対側には僕と同じように立っている白波さんがいた。帰る方面が同じなのに今まで見かけたことがなかったことを不思議だと思ったが、忘れっぽい僕のことだから覚えていなかっただけだろう。

そう考えていると、彼女もスマホから顔を上げた。互いに目が合い、軽く会釈(えしゃく)をする。


すると彼女がこちらに近づいてきた。


「渡来君もこの電車なんだね」


「うん。まさか白波さんも同じだったとは思わなかったよ。見かけた覚えもなかったし」


「そうだろうね」


「ん?」


なぜ分かるんだろう、そう考えていると…


「実は私転校してきたんだよね」


なるほど、これで辻褄(つじつま)が合った。


「道理で見かけなかったわけだ。ちなみにどの駅で降りるの?」


「倉郷駅だよ」


「え、僕も同じだよ」


偶然だな。アニメとか漫画だとこういう偶然からだんだん仲良くなって……なんてな。

椿はそんな淡い期待で胸をふくらませたが、あるわけがないと一瞬で頭からシャットアウトさせた。


「ほんとに!じゃあ途中まで一緒でもいいかな?」


「うん。大丈夫だよ」


白波さんは嬉しそうに微笑んでいるが、僕なんかと一緒で嬉しいのだろうか。


そう考えていると、


「渡来くん、この後予定合ったりする?」


これはもしやするのか。いやでも、まさかねえ…


「特にはないけど」


「じゃあちょっと倉郷駅の周り案内してくれないかな?」


まさかとは思ったが、こんなことになるなんて。二年生初日からハードルが高くないか。でも(ことわ)るすべもない。


「僕なんかで良ければ」


「ありがと!」


彼女はそういうと、またも嬉しそうに微笑んだ。

そんな顔で見られるとこそばゆいな。


椿は慣れない視線に戸惑いながらも、どこか胸を(おど)らせていた。


読んでくださりありがとうございました!

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