第五十九話
予備塹壕へと引き摺られ入った。
意識が混濁しているとツンとした刺激臭がして咳込んでしまった。
「よし、意識が戻ったな」
パットの声ともに意識がハッキリする。鼻の前には頭を取ったアンプルがあった。これ、気付け薬だ。
土嚢からアルベルさんはライフルを撃っていた。
「ごめん、助かった」
「気にするな、お前との仲だろ」
握った拳を前に出してきたので、僕も握りパットの拳を合わして離した。親指を上げてからパットも戦闘に戻った。
僕も戦闘に戻ろうと思ったがライフルがなく、変わりになる武器を探したがシャベル位しかない。
シャベルを握って来た敵兵の武器を奪いとってやると息巻いてたが、通路から顔に土汚れをつけたホーバス中隊長がやってきた。そして右手に何を持ち、左手には小さく細長いポーチを持っている。
「よし、我が隊のエースは生きてるな! シュトナ一等兵、シャベルを握って土遊びの時間ではないぞ!」
「武器がないです!」
ピリピリとしていた兵士たちも軽口を聞いて若干気を緩くしていった。戦闘中でも軽口を忘れないホーバス中隊長だ。
近くで爆発して土が降ってきてもホーバス中隊長は平気そうにしている。
「武器をなくしたのか? ほら、この武器を使いたまえ」
何を持っていた右手を僕に投げてきた。慌てて受け取ると独特のグリップ…トリガーの前方に弾が納めるマガジンのピストル。マウザーC96、別名モーゼル拳銃…とあるゲームではレッドがついてた。使用弾薬は7.63mmマウザー弾又は9mmパラベラム弾。装弾数は普通だと10発でロングマガジンだと20発になる。このマウザーは10発だ。しかも、ショルダーストックも装着している。ストックのおかげで命中精度が高まり、連射も楽に行う事か出来るが…このマウザーはフルオートはない。セミだけだ。
まぁ、前世では時代遅れであるが今の時代では適している。
「この銃はどうしたんですか!?」
「当然、気絶した下士官から拝借したに決まってるだろ。シュトナ一等兵、後方に前線塹壕への砲撃要請を伝えに走りたまえ」
「通信はどうしたんですか!?」
「壊れてなければ、呼びに来る訳ないだろ。後予備の弾だ」
やれやれ当然と言わんばかりのホーバス中隊長に次の言葉がでなかった。そして、左手のを投げ渡されて中身を確認すると弾のついたクリップが入っていた。次いでに拝借したと聞こえたが、戦場で武器を拝借するなんて……。
「パット、一緒に行くよ!」
射撃しているパットとの背中を叩いて合図を送るとパットが前を歩いて塹壕の出入口へ向かった。
パットは途中からボックから弾薬が入ったポーチを取っていた。
僕もマウザーはデコッキングとなっているので、セイフティレバーを下げてた。ファイリングピンを少し引いて弾薬が入ってるか確認する。何発入ってるかは確認出来ないが弾が入ってるのが見えたので離すとガチャと音を当てて戻った。これで撃てる状態だ。
マウザー…モーゼル拳銃…がこんな状況でなければ、嬉しくて仕方ない。グリップを握ると更に実感する。
塹壕の出入口に来るとパットは立ち止まりライフルのボルトを少し戻して弾薬を確認してる。
「レーナ、街まで戻るのか?」
「それは最終手段で、中継場所を目指す…」
中継場所というのは、最初に僕が連れて来られた農場地だ。後方から来てはそこで集まり部隊配置へとなるから。あそこなら、有線の通信があるはずだ。
だが、不安がある…戦場では絶対安全という事は一切ない。でも、ここまで生き残ってきた……。
目を閉じて深呼吸して気持ちを落ち着かせる。そして目を開いてパットの肩を叩いて走り出した。それに続くようにパットも走ってくる。




