第四話
配置が整った後も警戒態勢が継続で気が休まる時間がない。警戒してるのは僕ら新兵だけで古参兵はあくびしながらカラフさんが敵陣地を見て、残りは仮眠したりライフルの整備してる。
夜になると緊張が続く訳もなく疲れたが出て眠りそうになる。夜中の監視は新兵が担当出来なく古参らでローテーションする事に決まり僕早々にアルベルさんの横で眠りについた。
早朝くらい突如と目が冴えて起きた。肌が感じる懐かしい感覚。
隣で寝ていたアルベルさんや古参兵たちが目を覚ましており、敵塹壕の方向を見ている。僕も感覚を思い出した。FPSしていた頃に曲がり角で感じた感覚………それは殺気だった。思わずライフルを掴み敵塹壕へと視線を向けた。
空気を切り裂く音が近いてくると、爆発音と衝撃が体に響いた。
「敵砲撃確認! 各員退避壕へ急げ!」
誰かの声なんて気に掛けてなかった。いや、気にしてなかった。ただ僕は砲撃されたという事実に何まで考えれなかった。前世でも平和な日本で育ち犯罪事故など巻き込まれた事がない、ただただの人にしか過ぎなかった。
「何、突っ立てるつもりだ! 退避壕へ急ぐぞ!」
真っ白になっている僕をアルベルさんが手を掴み引っ張ってくれる事でようやく現実に戻って来れた。
連れて来られた退避壕に入ると分かった。心臓が鼓動が激しい。呼吸も早い。中に入っても入り口に近い所にいたので、砲弾の刺激的な爆薬の匂いで噎せそうになる。
ドゥンドゥンと衝撃が訪れる度に上の土がパラパラと落ちてくる。砲撃が止むのはいつかと気になるが、ここに落ちて来ないのを願った。退避壕には僕たち以外に他の中隊の班もいる。その一人が騒ぎだした。
「いつまで撃ってくるんだ!」「落ち着いて座ってろ!」「いやだ! ここに居たくない!」「外は死ぬぞ!」
周りの人が止めようとしたが静止を振り切って外に出た瞬間、ここには直撃じゃないがすぐ側に落ちて出た人の体が爆散するのを見た。血が飛び僕の顔にも数敵の滴が飛び散った。悲鳴を上げようにもさっきまで生きていた人が死ぬのを目の当たりにして言葉に出来ない。荒い呼吸が出るのみだっだ。
短時間であるけど気が遠くなる砲撃が続き、また自分の所に砲撃が落ちない事をお願い、そして落ちるなら一瞬での死を望んだ。
砲撃の振動が収まると僕の生がある事を実感する前に次の命令が掛かった。
「敵歩兵が来るぞ! 配置に着け!」「よし、ディーグ兵どもを殺せ!」
自分で考える前に命令に従い、僕たちが守る場所へ戻った。血を拭う暇もなく持ち場に戻り、幸い班の人は誰も死んでなく全員集まりお互いのライフルや機関銃を構えて敵が来るのを待ち構えていた。さっき死んだ血の匂いがあるけど、その時にようやく生きている実感をした。
「レーナちゃん、厳しいなら後方へ下がっていいんだよ」
「だ…大丈夫で、す」
ライフルを構えるが左手を離すと震えるを見える。クラサさんが声を掛けてくれた。一見チャラそうに見えて僕の事を心配してくれていたみたい。
「訓練通りやれとは言わないよ。でも自分が生き残る事を考えたらいいよ」
「普通なら訓練通りやれと言うじゃないですか?」
「それが出来たなら戦況は簡単だよな~」
笑顔でアドバイスをくれるクラサさんには安心感があった。戦場でも古参兵たちの言葉は全部新兵を心配しての言葉が多い。でも裏返し、新兵は理解されない。戦場を知る者と知らないものがの差である。
「でも、生き残る事が一番大事なんだよ」
「もし生き残ったらどんな褒美貰えますか?」
「あ~、レーナちゃんが男ならそれ何あるだけど」
前世では男であった僕は察する。男なら仕方ないよね。でもクラサさんの軽口のお陰で震えが止まりボルトを引っ張り押して装弾する。




