第四十話
久しぶりのベットに熟睡しまって、晩御飯が出来てから起こされてしまった。お客さんとは言え、手伝うつもりだったのに。
服は軍服以外持ってないので上着だけ脱ぎリビングへと向かった。
テーブルにはアルベルさんとたぶんアルベルさんのお兄さん(?)が席に座っている。サーシャがキッチンから料理を運んでいる。キッチンにはエトナさんが作ってるんだろう。
次々と料理を作っては運び、作っては運んでテーブルがその重さてギシギシと音が聞こえそうだ。
「おいおい、エトナ…いったい何皿出してくるんだ? これ以上作ってもテーブルに場所がないぞ」
「レーナちゃんも来たんだから、早く食べてね。料理はまだまだあるからね」
「そうかぁ…大変だ、これは」
楽しそうな家族同士の会話を聞いていたら羨ましいなぁと思ってしまった。
僕も席につくと長男さんから挨拶された。
「レーナさん、こんばんは。僕はセルスと言う。アンダーソン家の長男でエトナの夫だ」
「こ…こんばんは。僕はレーナ・シュトラと言います。アルベルさんの部下です」
セルスさんはサーシャと髪や瞳の色は一緒でアルベルさんは似てない。両親のどちらに似たか隔世遺伝かも知れない。
「レーナさん、ちょっと覚悟してね。テーブルに敵(料理)が征服を防ぐ為にも、僕たちは料理を食べて尽くさないといけない」
「は、はい」
セルスさんがズボンのベルリンを緩めているあたり本気で食べるつもりなんだ。アルベルもベルトを緩めていた…冷静そうな顔から一筋の汗が流れている。まだまだ出てくるんだ。
二人ともひたすら脇目もふれずに食べ物を口に運び、皿を空けようとしている。
途中からサーシャが参加してくれたお陰様で大量の料理は僕らのお腹に入った。サーシャが一番食べていた。
アルベルさんやセルスさんは苦しいのか背もたれにもたれながら顔を上を見ている。僕はほどほどゆっくりと食べていたので満腹ですました。
「レーナちゃん、軍服はいいだけど私服に着替えたら?」
お腹に余裕がありそうなサーシャが聞いてきた。君、僕より食べていたよね……なんでそんな平気そうなの?
それにしても私服か……孤児院に返してしまったし、休日なんだから私服でもいいんだけど。
「服は孤児院に返してしまって軍服以外持ってないんです」
「ありゃ、孤児院出身なんだ……それなら仕方ないねー」
意外と理解と言うか知ってるのかな?
深く聞いたら昔遊びへと首都に遊びに行った時に孤児院出身の子と友達になったみたいだ。その交流も今と続いているらしい。
「なら、私の小さくなった服あげようか? 幸いにもレーナちゃんとは一歳差であまり体型も……あるね」
「何も言わなくていいです」
胸の方がサイズが違う。サーシャは平均より少し大きいのに対して僕は小さい……胸の方がスカスカとなりそう。
遠い目になりながら笑っているとお腹が重いのに立ち上がり出ていこうとするアルベルさんが目に入った。
「アルベルさん、どこに行くですか?」
「あぁ、ちょっとな」
親指と人差し指で輪を作り口元で何かを飲む仕草をして出ていく。日本ならその仕草は酒を飲む仕草だ…この国でもあるんだ。妙な感動があった。
「村の男たちに戦場の話でもしてくるんだろ」
セルスさんがさっさと同じ体勢で教えてくれた。そして納得した…ご時世的に戦場ではどうだったかとかどんな感じなのかを話したり聞かれたりする訳だ。
「それならクラサさんもいるんですね」
「クラ兄ならいるだろうね……ウエイトレス目当てで」
嫌悪感ある言い方をするサーシャに言われて、もしかして嫌ってる?
まぁ、クラサさんの軽い感じでは嫌う人もいるよね。




