第三十二話
直間の回避行動によってボルト一等兵のだぶん…即死は回避されたが、右肩に被弾してまともにライフルは撃てない。口を閉じながら呻き声を上げないよう被弾した右肩を左手で押さえて止血している。そして僕が出来る事は砲弾の跡など周りになくその場で地面に伏せる事だった。頭を地面に押し付ける勢いで。ライフルはボルト一等兵…ボルトさんを引っ張った拍子に死体の敵に転がった。
銃声からして遠くはないが、銃声が近くもなく位か。
確認の為音が聞こえた方に若干頭を上げようとすると弾が飛んできてディーグ兵士の遺体に当たった。ドス黒い血が顔に少し掛かりながら頭を伏せた。腕が良すぎない!?
しかもしっかり居場所をマークと言うか把握されてる。
顔に掛かった血が気持ち悪いので死体の袖で拭った。不衛生だけどついているよりマシだ。
「ボルトさん、これはちょっ……大変マズイ」
「ど…うマズイ…だ」
「敵は優秀な狙撃兵」
「なるほどな」
痛みに堪えてくれるボルトさんが理解してくれて嬉しい。これが無茶を言う味方ならどうするか悩むというか打開策を考えなければ……FPS時代では撹乱や命中率の低下の為に狙撃兵には煙幕…スモークを焚いていたが、ここにはない。
どうするどうすると頭の中で取捨選択の考えが浮かぶが消えてゆく。
すると近くからザッザッと歩く音が聞こえるので悟った狙撃兵が向かって歩いてる。どうするかは決めった応戦しないとこっちが殺されてしまう。
近く敵の音に合わせてそこらにあった銃剣ライフルを掴みながら銃剣を外し持つ。間近くに来たら足を刺して動きを鈍らしたお腹を刺す。敵の予測通り刺そうとしたが感触はなく上から押されて死体との圧力で銃剣が固定された。失敗したと分かってゆっくりと顔を上げると銃剣を足で踏んで固定している。頭を上げると敵狙撃兵が近くにいて僕の額にリボルバーを構えていた。銃剣を持っていた手を離して、両手を上げながら上半身を上げた僕と額にリボルバーを構えたディーグ兵……。だが構えていたディーグ兵が信じられないような目して構えていたリボルバーも揺れている。ディーグ兵は三十歳後半で澄んだ青い瞳に若干白髪も見えているが、顔も整っている……若い頃はモテただろうね。動かない僕にディーグ兵は更に近づきソッとリボルバーの銃口で僕が被ったヘルメットと上げると驚愕と泣きそうな感じがした。その時に僕も思い出した、戦場…慣れてない頃に狙った将校に似ている。あと時にラッキーにも砲弾跡に転んだ人物だ。
『…君の……名前は……とは言っても通じないか』
さっさと撃たないのと名前を聞いてきたのは僕は驚いた。こんな戦場でそんな小娘の名前なんて聞くんだろう。
『レーナ……レーナ・シュトラ』
『分かるのか!?』
『連邦の言葉は分かる』
何か聞きたそうにしているが、何を聞けばいいのか悩んでいる。そして苦悩して顔していた。
『こっちの塹壕へ行こうとしたが知らないが、さっさと自分の塹壕へ戻れ。君みたいな子供にはいていい世界ではない』
『塹壕は砲撃されてる』
『なら砲撃が終わり次第急いで戻れ……こっちの兵が突撃を仕掛けるからな』
リボルバーを仕舞い塹壕へと戻ろうとするディーグ兵。見逃されたと分かるが理由を知りたいと思ったが、今言うのはそれじゃない。
『そっちの塹壕だと味方が夜間浸透して制圧してる筈だから危ないよ』
『なるほど、いつまでも味方が来ない訳だ……すまんな』
方向を変えて去ってゆく…その姿はどこか悲しい僕がいた。
「シュトラ二等兵、一体何がどうなってる?」
「えっ……あぁ!?」
……ボルトさんの事を忘れていた。慌てて治療して左肩を貸してもらいお互い立つとさっきの会話を濁して伝えた。
「撤退するのか?」
「前に向かって撤退します」
「斬新な撤退だな」
二人でゆっくりと自分の隊に向かって歩いた。




