第二十一話
ミアさんや面白がって参加してきた他の女性兵士にもみくちゃにされながら服を整えくれた。とは言ったが、服は私服を持ってないのでキレイなった軍服。ノリで襟もきっちりしている。
「あとは化粧したいけど、これが限界ね」
「ここまでされるのに驚きなんですが」
お姉様方相手に疲れてしまった。なんと言うかノリが凄い。今はミアさんに髪を整えてくれている。なんでも小さい頃の妹を思い出すとか。そう言われると素直にして貰っている。
「それにしてもレーナちゃん、この髪止めどこで?」
菱形の小さい黒いダイヤの事を聞いているのかな?
珍しいモノであるよね……黒いダイヤなんて。
「僕は孤児院出身で……たぶん両親のどちらかが置いて行ったと思います。詳しくは聞いてないですが」
「そう、なら大事にしないとね」
ポンポンと頭を触ってくるので終わりなんだろう。鏡を見して貰うと配属された頃の僕がいた。
後は待ち合わせでの駐屯地の入り口で待っているが、ミアさんが遠くに置いてある荷物の隙間から顔出してこっちを見ている。
ちょっと待っているとアルベルさんがやって来た。いつモノの軍服に髪を整えていた。
「すまない、待たせたか?」
「あまり待ってないです」
「そうか……食事しに行くか」
アルベルさんの後を着いて行き、街の入り口となる関所を抜けるとガヤガヤと賑やっている。住人も見掛けるがほとんどが軍服を来た兵士が多い。そして大抵は顔を赤くしてるのが見える……酔っぱらい共。
キョロキョロして見回すがある事に気づいた。住人でも若い人が見掛けない。中年の男女や老人ばかりだ。
なんでだろうと疑問に思っていたら、アルベルさんが答えてくれた。
「避難指示は出されてるが、多くの住人は故郷にいるや帰りを待つと言ってな。夜の商売はこの反対側に集めている。もし前線が突破されたら真っ先に避難出来るように」
「ここに残るのは反対なんですが、分かる気がします。僕たちが行くのはそこなんですか?」
「その手前だな……食堂となってる店がある」
まぁ着いて来いと言うので行く。街の中央からちょっと奥に行ったら店があった。
多分アルベルさんが言っていた店なんだろう。楽しそうな声も聞こえてくる。
店に入ると中は簡易的な丸い机と椅子代わりの小さい樽。お客さんも程よく入って食事を取っている。
適当に空いてあるテーブルへと席に着くとウエイトレスがやってきて注文を取っていく。僕は何があるのか知らないのでアルベルさんに任せた。
「こんな食堂があるんですね」
「まぁな。ここの店主が首都に店出してるのに、兵士たちの為に臨時で出してるんだ」
「ここまで来るなんて命知らずと言うか」
呆れるようなため息を吐くのを見て苦笑してしまう。どうもアルベルさんの知り合いっぽい。
戦争中に前線の近くに店を出すとは命知らずな人だ。でも兵士としては嬉しい限りだろう。毎日似たような食事よりもこうして食事が出来る所があると。
笑っていると再びウエイトレスがやって来て食事を置いてゆく。
鉄板の上ステーキがあり、ソースが掛かって鉄板に触れるとジュアと音を立てて香ばしい香りがする。またスープはコーンポタージュで丁寧に作られた筈だ。サラダもみずみずしくて新鮮度が分かってしまう。
「ここまでの出すなんて凄いですね!」
「まぁ、本店ならあいつはもう少しいいの出すだが」
ウズウズしてる僕だが、それを頬笑みそうに見てるアルベルさんだった。
手を合わせてい「ただきます」と言ってしまうと不思議そうに僕を見てきた。うん、前世のノリでやってしまった。気を付けていたけど、気を抜いてしまった。
「えっと、昔読んだ本で遠い東の国で作ってくれた人や食材に感謝しますと書いてあって……その」
「勉強熱心なんだな……なら俺と見習って、いただきます」
手を合わせて言うアルベルさんを見て笑ってしまう。それは違和感しかなかったからだ。




