第十九話
タイヤを潰してしまえば、あとはただの鉄の障害物となりあとはなぶり殺しだ。隣で撃っていたアルベルさんは引き金に指を掛けていつでも撃てるようにしている。
ボシュ!と音を出して隠れている鉄の壁から赤い煙が上に向かって飛び出した。何事だと呆気に取られる僕らだが、僕は嫌な予感がした。直ぐ様ホーバス中隊長を探そうと離れようとした時に聞き慣れた音がやってきて爆発してゆく。アルベルさんに首根っこを捕まれて地面へと引っ張られると爆発が起こった。あのまま顔を出していたら砲弾での破片や衝撃波を受けていたみたい。
退避壕は前の味方の砲撃で潰されているから隠れる場所はなく屈んで砲弾が来ない事に掛けるしかない。
「た…助かりました」
「敵は何を考えてるだ」
呟くアルベルさんにさっき考えたいた事を話して、ホーバス中隊長に伝えて貰うと思った。
「敵兵が来ます! 鉄の壁を障害物変わりにして塹壕へ来るつもりなんですよ!」
「中隊長に伝えてくる! レーナは頭を出すな!」
ヘルメットを押さえながら、ホーバス中隊長の元へと向かうアルベルさんを見送る。
僕はいつでも塹壕から出れる用意をしておき、周りの兵士たちにも声を掛けておいた。不思議そうにしてるけど、絶対にそうなると確信している。
砲撃が終わると煙が漂う中でホーバス中隊長の命令が行き渡る。つまり予備塹壕へと退避し迎撃すると。
土や泥の入った前線塹壕は腰を低くしないといけないくらいになって塹壕の意味をなさない。そこを死守するつもりはなく、塹壕として使える予備で迎撃。更に味方からの砲撃もある。
FPSで鍛えた勘のお陰で迷う事なく塹壕から飛び出し予備へと走っていく。それに着いて行こうと出てくる。
予備塹壕に滑り込むように入るなり、前線に向かってライフルを構えた。次々に入ってくる兵士たち僕の所にホーバス中隊長が飛び込んできた。
「おぉ、シュトラ二等兵! 進言のお陰で敵の策を知れた! 手柄だぞ!」
「最初に言っていた手柄を立てたら高級お菓子ですよね」
「覚えていたか」
あちゃーと片手で目を被せがら悔しいがるホーバス中隊長を見て周りが力を抜けてゆく。
ディーグ兵たちの姿が見えてくる。鉄の壁を越えて前線塹壕に入るが隠れるのは難しい。
「よーし、お前らシュトラ二等兵より多く倒したら一級の酒を出してやる!」
「「「よっしゃ!!」」」
「なぁ!? それだとアルベルさんが一番じゃないですか!?」
抗議の声を上げようが周りの兵士たちのやる気な凄い。ホーバス中隊長、大人気ない。
それからはディーグ兵に向かってライフルを発射する。完全に隠れる事が出来ないので容赦なく体に当たる。応射してくるディーグ兵たちだが、頭しか出てない僕らには当たらない。
弾が切れたのでポーチから弾丸が五発付いたクリップを取り出し開けている機関部にクリップを挿し込み、弾丸をガチャガチャと押し込みクリップを外した。もう一回同じ事をしてからボルトを戻した。
飛び出そうとしているディーグ兵がいたのでお腹に狙いを定めて撃つ。
短時間ながら撃ち合いしていたが限界だと察したのか撤退を始めている。
やがてディーグ兵がいなくなると警戒しながら僕を含めた数人で前線塹壕へとゆっくりと足を進める。
土嚢に足を掛けて覗くとさっきの腹を撃たれた兵が傷口を押さえている。
危険はないと判断して入ってディーグ兵を見るが目の焦点があってない。もうすぐ死ぬだけだ。
『死にたくない…死にたくない…』
『死にたくなけらば、来なかったらいいのに』
『死にたくない……助けて』
声の位置でわかったのか右手を僕に出すが、僕はライフルで手を払い構えた。
『助けないけど………楽にしてあげる』
そう言って引き金を絞った。




