第十二話
孤児院では普通であったベットがなければ、木の箱を二つ並べて簡易的なベット……しかもシーツだけは固いよね。周りを見渡しても使えるモノが見当たらない。
心の中で涙を流しながらシーツを掛ける。枕あるだけ幸運だと思っておこう。
する事も終わると何をしたらいいのか悩む。机にはホーバス中隊長が難しそうな顔しながら、紙に書いてるのを見て外でお湯を思い出した。カップにあるモノを入れて外でお湯を貰い、ホーバス中隊長の机に置いた。
「シュトラか、飲み物はありがたいが俺様はコーヒーはちょっとな」
「見た目はコーヒーですけど、代用コーヒーです」
「代用?」
タンポポの根を刻み、乾燥し焙煎したらコーヒーと似た風味があるのだが味が悪い。なので孤児院時代は改良を重ねて苦みと香ばしさあるが濃いめに入れた麦茶に近くなるまでなった。コーヒー好きには「これじゃない」とあるが、戦場ではコーヒーなんぞ中々手に入らないので売れていた。
「苦みや香ばしさがあるのにコーヒーじゃないとは、俺様好みだな。どこで手に入れたのだ?」
美味しそうに飲んでくれるので入れて良かったと思う。
「自前の物です。孤児院で作ったのを売って予算の足しにしてました。軍に入るのでちょっと貰いました」
「孤児院出身か。なるほどなるほど、だから最年少なのか。南部戦域の知人が言っていたな。コーヒーが手に入りにくいが代わりがあってよかったと」
軍人さんはコーヒー好きが多いからよく売れた。戦争中は嗜好品が手に入りにくいから、前線となれば特に。
「あとはハーブティーなんかもありますよ。これはオリジナルブレンドで売った事はありません」
「私物には何も言わんが、こればかりは同じテントにして良かった」
次はハーブティーを所望されたのでポットにハーブとお湯を入れたら机に置いておく。あとはハーブから滲み出るので僕は必要ない。
ホーバス中隊長から了承は必要ないけど一言言ってから外にでる。待機中の兵士がウロウロしてたまに聞こえてくる雷が鳴ってるような音が…どこかで砲撃されてる。そんなでも兵士たちは冷静だ。これが日常となってるんだ。改めて戦争に来たんだなと思う。
臨時の食堂になってる運動会で見掛けるテントの所で食事を貰い……固いパン、野菜が少ないスープ、塩茹でされたジャガイモ…デザートの細長いクッキーを1個多めにくれた。テーブルで食事を取るが、前線で最初に食べた料理が恋しい。なぜ、こうも違うと思うと予想が出る。死ぬか分からない前線だからこそ、せめて最初は美味しい食事なんだろう。
後方へいる部隊にはこんな食事なんだろう。こっちでのせめては食事担当がある程度は美味しくなるよう考えているだけだ。テーブルにはジャガイモに掛けるようにソースがある。掛ける人が多いが僕は掛けずそのまま食べる。ホクホクだけど前世でのお菓子を思い出すから。でもバターが欲しくなる。クッキーはそのまめ食べてず、食べる前に折る。中身を確認してから食べた。これは理由があるが置いておく。
食べながら周りを見るがお酒を飲んでいる人は一切見えない。後方待機出来るなら飲んでると思いながら、千切った固いパンをスープに浸けて柔らかくなったのを口に入れる。
食べていると向かいにミクーさんが座り込んだ。
「やぁ、レーナさん」
「レーナでいいですよ」
「敬語が口癖ですね」
数学教師みたいな感じなんでニコニコされたらギャップ感じる。
「何を不思議そうに見回しているんですか?」
「お酒飲んでる人が見えないなと思って」
メガネを上げようた鼻の所触ると思ったが横を触って上げる。それは何と言おうと悩んでると判断する。僕も15歳で女の子……言葉は選ぶよね。
「ここではお酒は出ません。出るのは街の所となりますので……あとは飲むお店は二種類あるんですがね」
目を背けながら呟くミクーさんを見て察する。言い難い所なんですね。




