第十一話
前日の攻勢が最後にその後は静かになった。5日となり塹壕に込もって3度の攻勢にはみんなも疲れが見えている。疲れがピークで座り込んでしまう。もう一回攻勢があったら、ちょっとヤバいじゃないかな。
「よし、皆な。敵からの攻勢を完全に退けたぞ。流石は俺の中隊メンバーだな。これより他の中隊と交代して基地に戻るぞ」
ようやくの終わりに安堵する。兵士たちも嬉しそうに肩を組んだりしてる。残念ながら死亡者は少ないがや負傷者は多い、だけど重傷の人は少ない。それはいいのか分からないけど、良かったと思う。それでも生き残ったのなら運がいいのか。
最初に来た時とは反対に出ていく僕らと入っていく他の中隊。せめて多くは生き残って欲しい。
歩きながらヘルメットを脱ぎ胸の上に置き入っていく中隊に敬意を捧げる。それを見ていた僕ら中隊も同じ事をしてゆき、反対の中隊は擦れ違い様に敬礼をして過ぎてゆく。
用意されていたトラックに乗り込み、北部戦域本部へは行かず街の近くで降ろされる。街の近くに多くのテントが張ってあり、木の箱が積んでいたりして兵士たちもゆったりしてる。僕も本部へ行く前はここを通ったので知っている。
「各自、テントでゆっくり休めよ。戦争はまだまだ続くからな!」
ホーバス中隊長が指示で己のテントへと散って行くけど、僕の場合どうしたらいいのかな? 女で新兵……テントの場所すら知らない。
「そうだ…シュトラ二等兵。貴様は俺様のテントと一緒だ」
ホーバス中隊長が言った後に肩に掛けたライフルや持っていたリュックを落としてしまう。ライフルは安全装置をかけてるので暴発の心配はないが、さっきの言葉は周りに聞こえたみたいでホーバス中隊長に不信な目をしている。
ホーバス中隊長から両肩を抱いて一歩引いてしまう。確かに昔は愛人的は隊長格ではいたみたいだけど、ロリコンさんはアルベルさんじゃなくてホーバス中隊長の方だったのか。
「待て待て! 俺様は妻子がいる! ほら、写真もある!」
慌てて懐から白黒写真を取り出して否定してくる。そんなの見せられても全然信用する要素がないだけど。
「お前を中隊テントに入れても…その…変な事されないようにだね!」
ようやくホーバス中隊長を信用出来た。つまり、僕が襲われないように自分のテントで寝るようにって事か。
「中隊長の配慮分かりました」
懐疑的な表情から笑顔で答える事でホーバス中隊長はホッとしてくれた。周りも自分のテントへと戻って行く。まぁ、ロリコン扱いを受けたら、不名誉過ぎるよね。 それにたぶん兵卒的な扱いなるんだろうな。雑用みたいな。
中隊長の後を着いて行きテントへと入る。中はそれなりに広く、奥に簡易的なテーブルと手前に木の箱を二つ並べたのが左右にある。箱の上にはシーツがあるだけだ。お湯を沸かす為の焚き火がテントの前にある。ベットはどこかなと思っていたが、嫌な予感が走る。
「ちゅ…中隊長、ベットが見当たらないですが?」
「ハハハ、そんな上等なモノある訳ないだろう」
笑いながら箱の上のシーツを広げて箱に掛けていく。やはりそうか。孤児院でも二段ベットはあったが、ここはいつ戦場になるか分からない。そんなモノより安価なモノで代用する訳だ。久しぶりのベットでの睡眠を期待してたが、心の中で泣きながら荷物を置きシーツを広げる。
「俺様は先日の戦闘レポートを書くので、後は好きにしろ。こっちはこっちで大変なんだぞ」
若干遠い目をしながら机の紙に書いてゆくホーバス中隊長を見て同情した。いつの時代も上司上官の天敵は書類仕事なんだ。




