第十話
ずっと狙ってる訳にいかないので、次の目標を探す事にした。確か将校の次は下士官でも慣れている下士官又は手榴弾を持つ擲弾兵を優先する。
機関銃に向かって投げようとしている擲弾兵を見つけてると慌てて狙い体のどこでもいいので引き金を引いた。
手榴弾を持った手に当たり、手榴弾を落とすと同時に爆発した。それは周りの敵兵士も巻き込み呻き声が聞こえるが迷わない。政治将校が倒れたせいか敵は適当な障害物に隠れて出てこうようとはしない。味方の射撃が散発につれて必要以上に撃たない。むしろ敵が後ろ姿を見せてたら、威嚇程度に撃つくらいだ。
「レーナ、ここはもういい。次のポイントに向かうぞ」
「は、はい!」
アルベルさんに連れられて塹壕を走っていく。この時に狙っていた将校を忘れていた。
塹壕に貯まった泥水や汚水を走ってるが、正直ウンザリする。
「塹壕を走ってるとネズミになったみたい!」
「ネズミならもっ速いぞ! 防衛に遅れないように走れ!」
アルベルさん並みに足も長くないので歩幅は小さい。だからと言ってそれは理不尽過ぎないー!? ムキッーと思いながら必死にアルベルさんの速度を追って行く……もし倒れてもアルベルさんのせいだから!
着いた場所は敵兵士が近くて…下手したら手榴弾をバンバン投げられる所だった。これには馬鹿じゃない!?と思っていたが、払拭してれた。
「レーナは擲弾兵を優先! 俺は優先的撃つ! 近くの部隊は全力防衛!」
射的に着くやアルベルさんが周りに指示を出して安心させる。
「この距離なら着剣の所ですよね!?」
「そこまで来られたなら数の暴力に押し切られるぞ! さっさと敵将校を撃て!」
正論なんだけど、アルベルさんは未だかつてない僕に着剣を許してくれない。護身用に差してしたいるだけだ。身長差や力比べで僕は男の人に勝てない。
前世では刺されて殺されて、今回も刺されるのは勘弁してほしい。
距離が近く連れてディーグ兵の顔を見え必死の形相になっている。その頃にホーバス中隊長がやって来た。いや、今一番来たら駄目な人でしょ!?
「ハハハ、殺り合ってるな! う~ん、近くまで来られるのは不味いから歓迎会の準備! 俺様の合図待て!」
楽しそうにしているホーバス中隊長と正反対にアルベルさんたちはゲンナリとしている。それに気付かない僕はホーバス中隊長が言っていた歓迎会が何なのかを何な事と疑問を浮かんでいた。だけどライフルを撃つのは止めていない。
塹壕までの距離が20メートルを切った所で皆が座り込み、僕はアルベルに頭を押さえ付けて塹壕内に隠された。
ディーグ兵はこれは好機と思い足を進める音が聞こえる。
「よ~し、今!」
ホーバス中隊長の指示で誰かがスイッチを入れると15メートルくらいの所で横にへと連続して爆発していく。降りかかる土砂と一緒にディーグ兵の手の部分が僕の視界に入り、何をしたのか理解出来た。
「これって虐殺になるでは?」
「なるだろうな」
爆発の影響で味方は沈黙しているので、僕とアルベルさんの声が味方に聞こえた。ディーグ兵は恐怖で前に進めず、障害物を盾に後ろへと姿を消していく。負傷した仲間の回収も忘れてない。
「い…いや、これは戦争だからね!?」
珍しく慌てるホーバス中隊長を余所にゆっくりと塹壕から顔出した瞬間いきなり押し倒された。
「レーナ!?」
状況を確認出来たのは馬乗りされて、ナイフを振り上げ今にも振り下ろしそうなディーグ兵だった。あの爆発で運良く…奇跡的に生き残り、偶々顔上げたの僕の前いたという事か。
ナイフは振り下ろされず止まっている。むしろ驚いている。
『子供がなんでいる!?』
刺す前に僕を認識して驚いている所悪いけど、両手を顔の横に出して降参しながら連邦語で語り掛ける。
『それ下ろしたら、殺されるよ』
『喋れるのかよ!?』
更に驚くディーグ周りを確認したら、ナイフを僕の喉元に当てる。それはそうするだろうね。だってライフルを構えてるアルベルさんといつも笑顔であるホーバス中隊長の真剣な顔でリボルバーを構えてる。ナイフを横に引こうなら撃ち殺されるだろう。
『ここで殺されるならいっそ』
『折角生き残ったのに持ったない。上官を説得するから、捕虜にならない? 乱暴や拷問はさせないから、もしかしたら治療院受けて解放されるかも』
『そんな保証はどこにあるんだよ』
『あなたが僕を殺さず止まってる当たりで、普通はあり得ないよね』
そうだ、助ける為ならもうアルベルさんだって撃っているだろう。それにあの僕を押し倒すディーグ兵の左目から出血している。もしかして眼球にまで及んでるかも知れない。
『ナイフはちょっとだけ上に上げて…うん、そのままで、同じ話しを中隊長に言うから』
素直に従ってくれるディーグ兵にホーバス中隊長にさっき会話を伝えると、真剣な顔からいつもの顔に戻り親指を上げた。それからはさっきまでの緊張感が失くなった。アルベルさんは構えたライフルを下ろし、ディーグ兵は見えるようにナイフを放してから塹壕の外へと投げ退いてくれた。
それからはディーグ兵は一応両手を拘束されるが憲兵が来るまで僕が通訳をやらされた。内容は「あの一瞬でよく子供だって分かったな!」「子供を殺さない精神素晴らしい」など好感が高くて、ディーグ兵も戸惑いがあったがどこか誇らしげだった。
みんな、子供子供言い過ぎだと思う。




