表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/262

94話 むせるパメラ(あの続き)


『87話 冬なのに春到来!?』の続きから始まります。


時間的にはリリアンの初めての公務の前の話です。そして後日談に公務中の話、公務後の話が入っています。



 

「ねえ、パメラ、私なんかどうかな?」


 誰も他にはいない談話室で、両ひじをテーブルに付けて身を乗り出すようにしてレーニエは言った。



 ちょっと待て、こんなイケメンが突然口説いて来るなんて!どうも胡散臭い、女だてらに男勝りな私のことを揶揄っているに違いない。

 びっくりして思わずむせてしまったパメラだが、おさまったら怒った顔をして睨んでやった。


 いつも親切なレーニエが、実はこんなふざけた男だったとはガッカリだ。



 レーニエは睨まれても意に介す様子もない。


「パメラ、鉄仮面の騎士まだ持ってる?」


「え?」


 何で知ってるの?あの絵本のこと。



「覚えてない?私のこと」


「え?誰?」


 パメラの頭の中は?でいっぱいになった。



「そっか。覚えてないかー、まだあの時は小さかったもんね」とレーニエは息を吐き背もたれに背中を預けた。


「昔、私の妹が病弱でね、ゴダールがよく見舞いに来てくれてたんだ。

 その時にパメラを連れて来たことがあって、鉄仮面の騎士の絵本をひどく気に入ったみたいだったからあげたんだけどな」


「あ、」なんか思い出しそう・・・。「あ?あーなんか」


「そうそう、どう思い出した?」



 再びテーブルに身を乗り出してくるレーニエ。近い、近い、ちょっと下がって!!



「んー、思い出したっていうか、おぼろげにそうなのかなって。ちっちゃい頃、兄とどこかに行って、そこであの本を貰ったんだけど・・・」


 思い出せそうで、思い出せなくてモヤモヤする。



「昔さ、ゴダールが私の妹の事を好きでさ、よく見舞いに来てくれてたんだよね。私とゴダールは同い年だけどすごく仲がいいって程でもなくて、あいつインテリじゃん?私は体を動かしたい方だったからゴダールが来ても侍女もいるし2人を放置して剣術の鍛錬をしていたんだ。

 ある日、妹がいるの羨ましいって言われてゴダールがパメラを連れて来た。

 だけどしばらくしたらパメラもあの2人といるのがつまらなかったらしくて、ふらふらとあの絵本抱えて1人で鍛錬場に現れたから一緒に遊んでやったんだよ、剣術の稽古だーって言ってチャンバラだけどね。

 ちっこいくせに負けん気が強くて本気でかかってくる。なかなか筋が良いって言った時の嬉しそうな顔!キラキラしてて忘れられなかったな。

 妹は体が弱くて寝てばっかりだったから、世の中にはそんな風に元気な女の子もいるんだなって思ったよ」



 聞いているうちにその時の剣を振る光景が断片的に蘇ってきた・・・気がする。


 そして本を「はいこれあげる」と渡してくれたお兄さんの姿が薄っすらと蘇ってきた瞬間に、急激にいろんなパーツがパーっと繋がって来た!



 私がなんで幼い頃から騎士になりたいと強く願っていたのか、なんで剣術が一番好きなのか・・・それは。




 そうだよ、あの時に会った剣術を教えてくれたお兄さんが「騎士になるんだ」って言ってたからだ。



 だから私もなりたいって思ったんだ。

 あの人の目指すところを目指したかった。


 初めて持った剣を振り回して楽しかったこととか、飽きずにたくさん遊んでくれて嬉しかったこと、そんな原初の体験が私を突き動かしてきた。



 今、騎士でいることの発端、それが目の前にいる・・・?




「レニ?」


「思い出した?」


「うん」


 なんとレーニエはパメラの初恋の人だった。


 おぼろげな記憶の中の憧れのお兄さんのイメージが目の前の人と重なってきて。



「嘘でしょ?まさかレーニエがレニとは・・・」


「そうそう私だよ。あの頃、舌ったらずでレーニエって言えなかったんだよね」とレーニエは嬉しそうに笑った。



「まさか、こんな偶然ある?あのレニがレーニエだなんて」


「偶然じゃないよ。あの時パメラは『だったら私も騎士になる』って言った。

 僕と同じ騎士を目指すって『約束』したんだから僕たちがここにいるのは必然だよ。だけどすごいね、パメラ。本当にここまで来るなんて」



「はい、お陰でここまで来れました」


「あはは、さっきは僕のこと胡散臭そうに見てたけど、今度は信じてくれるかな?」



「・・・レニは私の、初恋の人だからね」


 パメラは格好つけてクールにバラそうとしたけど、我慢できずに途中から嬉しそうにニヤケてしまった。



「ほんと?じゃあ・・・」


「うん、レニを追ってここまで来たのに、断るなんて出来っこないよね?」



「やった!うれしいよ。

 パメラが配属されて来た時、あの時の子だって思ったのに、全然こっちのことを覚えてる感じがなくてさー。

 気にして見てる内に好きになっちゃったんだよね」


 再びの告白に、再びむせるパメラ。



 ゴホッ、ゴホッ、ゴホゴホ・・・。



「大丈夫?」と言ってテーブルをぐるっと回ってきた。


「フフッ、パメラって照れるとよくむせるよね」


 そう言って、背中をポンポンと叩いてくれるレーニエ。



 ケホ・・・ケホ・・・ちょっとおさまってきた。ちょっと近い、こら、そんなに人の顔を覗き込むな。



「パメラって小さい時舌ったらずだったし、すぐにむせるし、ベロの使い方が間違ってるんじゃないかな?普段、舌先をどこに当ててる?これって意外とパフォーマンスにも影響してくるよ」


「そうなの?」


「うん、舌の上手な使い方を教えてあげるから、ついてきて」


 レーニエは、ようやくむせるのがおさまったパメラの背中と後頭部に手を回して・・・。


「ん!」



 パメラはさっきチョコとビスケットをいっぱい食べたことを後悔した。先に歯磨きさせて!歯を磨いて出直して来させて〜!



「パメラ、こっちに意識を集中して」


 一度唇を離してそう囁くと、もう一度唇をふさいで続きを始めた。


 さすが剣の達人は相手が何を考えているのか気取るのもお茶の子さいさいらしい。



「ん」




 レニ、・・・途中で見失っていた私の宝物、ようやっと見つけた。



 パメラは心に空いていた穴がじわじわと塞がってくる、そんな気がした。




 椅子にパメラを座らせたまま腰に片方の手を移して上から覆いかぶさるようにしてくるレーニエの首に腕を回し、彼のすることに意識を集中することにした。


 それにしてもレニのこの体勢、腹筋すごくない?





 部屋まで送るというので、夜の廊下を並んで歩く。


「それで、兄上はレニの妹さんとどうなったの?」


「どうもこうも最初から妹には婚約者がいると言ってるのになかなか諦めないんだよ。

 相手が年下だから何とかなると思ったんだろうけど、あいつ等いとこ同士で物心ついた頃にはもう好き合ってたんだから横恋慕はダメだろって話」


「兄上は失恋か」


「まあね、でもその後だんだん元気になってきて妹が普通の生活が出来るようになったのはあいつのお陰だから私はもちろん家族皆んな感謝してる。

 この間妹と話してて知ったんだけどはっきりと断って失恋したと分かった後も薬を長いこと届けてくれていたらしいんだ。その薬をどうやって手に入れてたんだろう?・・・ゴダール、本当にあんなイイやつは居ないんだ。どうしてるかな、今頃」


「うん、どうしてるんだろうね。

 ゴダ兄は宮内相を押し付けられそうになって外国で勉強したいって口実つけて逃げたんだけど、出て行ってから港からの手紙を最後に全くの消息不明なの。逆に国内にまだ居たりしてね」


「さすがにそれは分かるだろう名門バセット家の嫡男だし。きっとどこか遠い外国にちゃんと着いて上手くやってるよヤツなら」


「だといいけど」


「ああ、じゃあおやすみ」


「おやすみレニ」


「ん・・・」



 ほんの何時間か前まで、ただの同僚で、他人だと思っていたのに不思議。


 あまりにも一緒にいるのが当たり前で、もうレニ以外、考えられない・・・。





 数日後、レーニエの休み明けに周囲は度肝を抜かれることになった。


 騎士は怪我などをして危ないからと指輪やピアスは付けないことを推奨されている為、レーニエがパメラと同じ色の真っ赤に髪を染めてきたのだ。お揃いの指輪をするより強烈に特別な関係であることをアピールすることになり、付き合い始めた事を誰もが知ることになった。


 パメラに唯一の存在ができたのは、奇しくも兄エミールがエマにプロポーズした日と同じで、バセット家にとって最良の日になったが、レーニエ赤髪変身事件から更にその数日後にリリアンによってゴダールの行方が発覚し喜びに沸くことになるとは、この時はまだ知る由も無かった。



 リリアンの初めての公務では、真っ赤な髪の美男美女の凸凹コンビが後ろに並んで立っていたので人目を浴びると共に、そこだけやけに華やかに見えたという。


 それでアイルサ王女とキース夫妻がゴダールの話を聞かせる為にバセット家との会食をした時に、先ほど後ろに並んでいた2人はたまたま同じ髪色なのかと聞いてきた。

 パメラが恋人が指輪の代わりだと言って合わせてきたのだと答えると、アイルサ王女が面白がって是非2人にプレゼントを贈りたいと言って部屋の前まで連れて行き、特別綺麗に色が残っている上物というグロテスクな色をした爬虫類の干物2体と何か木の皮を乾燥させたものと小皿をくれた。



 こんな物を包みもせずそのまんま手に乗せられていったいどうしろと?


 はっきり言って気持ちが悪いだけなのだが・・・。



 ずっと持っておくのもアレなので、しばらくしてケネス王国博物館に寄贈すると『アイルサ王女様から恋人たちに贈られたプレゼント』という札を付けて展示された。

 博物館の学芸員に任命されたケネス王国人にもそれが何でどういう用途に使うものか分からなかったようだ。


 フィリップはそれを聞いて「当たり前だ。ケネス人が皆んなあのレベルでオカルト好きだったら怖いだろ、逆に分からなくて安心したぞ」と言っていたという。


イケメンのレーニエは

パメラの初恋の人でした!!


後日談のレーニエの赤い髪が『初めの公務』中の話になるので87話と分けました

_φ(* ̄▽ ̄* )



この作品を読んでくださいましてありがとうございます


ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです

とても励みになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ