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78話 アレの正しい使い方

 心臓が早鐘を打つ。目を閉じていてもフィル兄様の視線を間近に感じてる。


(うわぁ何、この空気。緊張し過ぎて困る〜!)


 唇にキスをされて身体がポッポと熱を持つ。



 ガチガチの緊張に耐えきれず、リリアンはそうっと目を開けた。



「リリィ」


 そう小さく呟いたフィリップは目を見開いて驚いた顔をしている。





「フィル兄様?」


 どうしたのだろう、ジッと見つめられているけれど私を見て驚いているみたい。



「瞳が」


 あの時の色と一緒だ。


 あの時は見間違いかと思ったけど、そうじゃなかった。




 リリアンの瞳の色が、また変わっている。

 前に薄桃色に染まったのを見たのは確か初めて指輪を贈った時?


 フィリップの脳裏に指輪のはまった手を胸の前で握りしめた薄桃色の瞳の、今より少し幼い顔をしたリリアンの姿が浮かぶ。あの時も可愛かった。



 もしかして、もしかすると・・・僕のことをすごく好き、とか僕に何かされてすごく嬉しい、って感じてる時に瞳の色が変わるとか?


 銀の民は色々と不思議な民族っぽいし、この有り得ないような仮説も案外有り得るかも。


 あの時は一瞬で元の水色に戻ったけど、今はまだ薄桃色のままだ。



 ギューンと来た。


「リリィ!ああ、リリィ」


 仰向けに寝転がされたままのリリィに覆いかぶさって瞼に額に、頬に・・・と口づけを落とす。


 ああ、ダメだ。これ以上は!


 だってリリィは7歳なんだから!!合意の上でないとダメだから!



 っ!



 ちょっと、ヤメて〜!リリィの瞳の桃色がさっきより、より濃くなってるんですけどっ!これってこれって、そういうこと?喜んでるってこと?もう、ダメ!ダメだよ!!



 自分で勝手に作った仮説のせいで、もう愛しさMAXギュンギュンだ。




「ほら、リリィ!あれ、子守唄を歌って欲しいな〜!今日は特別疲れてて!!」と早口に渾身の精神力で懇願する。


「え?子守唄ですか?」


「そう、子守唄歌って!」


「でもあれはお母様にオコタン以外に歌っちゃダメだって止めっ」


 リリィをギュッと抱きしめてもう一度必死に懇願する。


「お願い、今すぐリリィの子守唄を聴きたいっ」


「・・・はい」



 ウネクスィー

 ウネクスィー

 ヌクー ニュ

 ミナ ラウラン シヌッレ



 リリィは誰に教えられたのかも覚えていない、言語かどうかも分からないけど自分の脳裏に染み付いている子守唄を歌う。


 フィリップはアッという間に眠りに落ちた。



「お、重い・・・フィル兄様、ちょっと起きて下さい。フィル兄様〜、ちょっと、起きて」


 フィリップは微動だにしない。



「ええ〜!?本当に寝てしまったの?」



 成長するにつれ幼児期の記憶はなくなっていくものだ。子守唄でニコラや周囲の人達をよく眠らせていたのは2、3歳の頃のことで、リリアンは既にそのことを覚えていなかった。


 ただ母に子守唄はオコタンにしか歌ってはいけないと言われているし、ニコラにおままごとがつまらなくて寝てしまうなどと揶揄われる事はあったけど。



 フィリップの胸の下敷きになったままでは身動きが取れず寝られない。


 手も一緒に押しつぶされていて自由が利かず、うんうんと身を捩る。



 なんとかもがいて抜け出した。


「よいしょっ」


 ネグリジェの端も破らないようになんとか引っ張って抜き出せた。


「ふう、大変だった」


 それに体力を使い果たしてさっきのフィリップの様子とか、キスされた事とかどっかにいってしまった。


「ふう、疲れた」もう一度息をつく。ヘトヘトだ。


 フィリップを見るとうつ伏せで寝ているから仰向けにして枕を頭の下に入れてあげたいけれどリリアンの力ではちょっとひっくり返そうと試してみたけど無理で、人を呼ぶのもなんか・・・仕方がない。もう寝よ。


 フィリップにくっ付いて寝た。いつものように。





 朝になって目が覚めた時、リリィがベッドにいなかった。

 昨夜の事を思い出す。



 やば。

 あの後、怒って出て行って自分のベッドで寝たのかも。


 しかも寝過ぎた。

 ぐっすり寝た感があってそういう意味では気分は爽快なんだけど。



 謝っておこうと思ってリリィの私室に続くドアを開けた。


「リリィ、ごめん・・・あっ、ゴメン!」

「きゃっ」


 リリアンはお風呂から出たばかりで着替え中だった。急いでドアを閉めたが向こうからパメラとエマの怒声が追いかけてきた。


「貴様、よくもリリアン様に無礼を!」「殿下っ!何なんですか!淑女の部屋に失礼ですよ!」


 僕、王太子なんだけど、言い方がひどくない?



 脳裏に今見た姿が蘇る。

 そして昨夜の姿も。


 あの白い肌が赤く染まるのを。


「はぁ、でも昨夜は何とか凌いだ」


 過去最大の危機を乗り越えた。


 ニコラに子守唄の話を聞いた時、これは使えると思った。

 僕の理性が飛びそうな時に抑止効果があるかもと。


 だからまだ余裕のある時にリリィにバレないように本当に眠くなってくるのか試してみて、いつかここぞの時に最後のカードとして使おうと考えていたんだ。


 とは言え、リリィがその効力を知った時に僕を拒絶するのに使われたらショックだから、永遠に使わなくてもいいとも思っていたんだけど。


 なのに、さっそく使ってしまった。思ったより即効性があったし強力だった。





 もうちょっと子守唄の力を借りなくても自力で頑張れると思ってたんだけどな・・・。



 でも、これがリリィの子守唄の正しい使い方だと思うけど、どう思う?


最初に使う最後のカード

それ、最後とは言わない気がするな

_φ( ̄▽ ̄ )



いつも読んでくださいまして、どうもありがとうございます!


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