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77話 新学期に起こる変化

 フィリップとニコラは寮生活に戻り新学期が始まった。


 今日から男女共学で新しいクラス分けは掲示板に張り出されているらしいが護衛をしているニコラはフィリップとクラスが分かれることはない筈だ。



 朝、寮を出るなり囲まれた。

 待ち伏せされたかのように全員集合しているじゃないか。


「おいニコラ、嘘だろ?婚約したって家に告知文書届いてるんだけど」とテオドール。

「本当だよ」


「いつの間にそんな相手が出来たんだよ、俺たち聞いてないぞ」とデジレ。

「言う暇なかったんだ」


「ソフィー・オジェって階段の君じゃないか、くっそ羨ましい」とジェラルド。

「軽々しく名を呼ぶな」


「ああー!ごっつい指にえらく華奢な指輪をつけてやがる!」とニコラの手を掴み上げるフェルゼン。

「ソフィーが選んだ婚約指輪だ」よく見えるように目の前に出してやり、ニッと笑う。


「ぎゃふん!」


「あはは、フェルゼン初めて聞いたぞリアルでぎゃふんって言うの」とフィリップ。


 わいのわいの言いながら団子になって掲示板に向かっていると、あそこに居るのは?



「おいちょっと待てあれ見ろよ、ルネが中庭で女と話してるぞ」


 そう言えばこう言う時に一番騒がしい奴が居なかった。相手の女性は遠目からもルネに笑顔を見せているのが分かる。



「あれ誰?」

「さぁ」

「誰かの姉とか?」

「また?」



 始業式の前にルネがカトリーヌ・アングラード嬢を見つけた。


 と言うか、探して見つけ、これ見よがしに皆が通るであろう中庭でカトリーヌをベンチに座らせると自分はカッコつけてベンチ横の木に手をついて立ってお喋りをしていたのだ。


「あの格好、イケメンのつもりか!くっそ、ルネと楽しそうに」


 それを見た男性陣は相手が誰なのか誰も分かっていなかった。


 カトリーヌはルネの薦めで髪型を変えて縦巻きカールをストレートにしていたし服も化粧もイメチェンしていたからだ。


 見た事のない美女だ。


「あいつ、後でシメる!」



 新学期から同じクラスになった2人が一緒に教室に入って来た時は場が騒然とし、ニコラとソフィーの婚約どころではない、そんなの頭から弾け飛ぶほどの大混乱になってルネを大いに満足させた。


 さらにそれがカトリーヌだと皆が知った時の騒ぎときたら!



 夏休み中、ルネはカトリーヌと毎日一緒に犬と猫の散歩をしてかなり打ち解けてきた。


 今日はカトリーヌの本来の姿をセンセーショナルに皆に知らせることが出来たし、自分とカトリーヌが特別な関係だと匂わせて他の男達が彼女の魅力に気づく前に牽制することが出来た。


 後はカトリーヌに名を呼ぶことを許して貰って、名実ともに恋人になるだけだ。


 それはまだ遠い道のりだということを知らないルネは、鼻高々で友人達に囲まれ嬉しそうに小突かれていた。




 リリアンもフィリップの新学期に合わせて王宮での個人授業が始まった。


 バレリー夫人の(王妃王太子妃用の)マナーとロクサンヌ夫人による(王妃王太子妃用の)教養でどちらも50分ずつで午前中には終わる。

 マナーはある程度学んだらしばらくは教養だけになるらしい。


 初日は国王陛下が父親参観だと言ってリリアンの後ろにずっと座って観ていたので、夫人方はちょっとやりにくそうだった。

 それからも時々前触れなく宰相や文科相、エミールが様子を見に来てくれたお陰か厳しく言われることはすっかりなくなってあの最初の頃が嘘のようだ。




 午後は自習で試験対策と学園入学前の事前学習だ。

 アングラード侯爵家の次女ルイーズ様が一緒に勉強を進める為に来てくださった。



「まだ義姉も在学していますから一緒に通えるのが嬉しいですわ。それに兄も1年早く進学することにしましたので、2つ違いですけど同じ学年になるんですよ。双子みたいでちょっと嫌ですけど」


 兄のマチアスは現在10歳、ルイーズは8歳だ。

 義姉というのはカトリーヌのことだ。


「まあ、でしたらルイーズ様のお兄様も誘って一緒に勉強なさいませんか」


「では声をかけてみます」


 と、初日に話していたのに翌日になると


「兄は王太子様の婚約者候補でいらっしゃるリリアン様と同席させる事は出来ないと父に言われました」


「そうなんですか、ではこの試験対策の問題をお兄様も使って勉強なさったらいいですよ」


 などと話していたが翌日になると今度は


「リリアン様と同じ年に入学したいと早期入学希望者は女性が圧倒的に多いそうで、初めての試みで男女混ざると準備が大変だから男性の受け入れは見送ることになったそうです。

 だから兄は通常通りの年齢で入学しますから私の方が1年先輩になるんですよ!

 うふふ、飛び級して追いつかれないように頑張りますわ。俄然、勉強のやる気が湧いてきました」


「まあ!」


 どうもリリアンがいるせいで兄と妹の逆転が起きたような気がしてルイーズの兄に申し訳ない気がした。




 週末、フィリップが帰って来た夜にその話をした。


 広いベッドの上に座っている時でも会えなかった数日を取り戻すかのようにフィリップの腕の中だ。



「へえ、早期入学は女性だけにしたんだ。また極端な事をしたね父上は!

 きっとリリアンに虫がつくのが嫌だったんだろう。まあ、僕でもそうしたかもね」


「虫ですか?私、蝶やトンボならついても平気ですけど。あ、でも蝉だったら嫌かもしれません」


「ぶはっ!さすがニコラと兄妹。蝉が嫌とは!でもその虫じゃないよ、悪い虫!

 僕以外の男はリリィに近づいて欲しくないって意味だよ」



「え?何ておっしゃったのですか、後半聞き取れなかったのですが」



「この新学期から共学に戻したんだけど、早まったなって。あーあ、こんな事ならずっと男女別にしておくんだった」


「ルイーズ様もいらっしゃいますし、皆さんと同じ事をすればいいのですからきっと出来ますよ」



 男女共学だと授業が厳しくなるとでも思ったらしい、このお姫様は。

 心配しているのが伝わらない。


「そんな事を言うから余計心配なんだよ、大丈夫かな?本当にリリィは箱入りだからね。

 12歳から通う学園に超絶可愛い7歳の箱入り娘なんて超絶ヤバいだろ」


 あ、後半うっかり声に出てた。



「まあ、リュシー父様もフィル兄様も過保護ですよ。有難いことではありますが心配しなくても大丈夫です。私だって頑張れますから」


 とリリィは安心して貰おうと言い募る。



「もうリリィはー、そうじゃないよ」



 そう言ってフィリップはリリアンを支えながらゆっくりベッドに押し倒した。



 こういう男心に鈍いところも可愛い、でも何かモヤモヤする。


 純真無垢な7歳の少女なんだから仕方がないとは思うけど、呑気すぎるリリアンはもっと危機感を持つべきだ。

 僕にとっては都合が良かったけど、これで狼が集う学園に通うなんて危険過ぎる!



 リリィ子羊がどう猛な狼男達に囲まれ詰め寄られメェメェ怯える光景が目に浮かぶ。


 ああもう!



「?」


 リリアンは優しくだけど、前触れなく押し倒されて何が起こっているのか分からなかった。視界は天井ではなく真剣な顔の、・・・そんな表情も麗しいフィリップだ。



 フィル兄様は何か怒ってる?

 取っ組み合いでも始めるつもりなのか、それともねじ伏せようとしているのか、従兄弟のマルクがふざけてすぐ馬乗りになってこようとするみたいに?

 でもフィル兄様がそんなマルクみたいな乱暴な事をするとは思えない。



「フィル兄様?」どうされたのですか?



 誰にも渡さない。誰にも触れさせない。


「リリィは僕だけのお姫様だ」



 そう言って、ゆっくり顔が近づいてきて、その小さな可愛い唇についばむようなキスをする。



 リリアンが起きている時に口づけをしたのはこれが初めてだ。


 実を言うと、朝起きた時に腕の中で安らかに寝息を立てるリリィが可愛くていつの頃からか唇に『お早うのキス』をするようになっていた。それからしばらくその寝顔を愛でてからリリィの私室のベッドに運んでやるのだ。

 朝なら困った衝動に突き動かされて眠れなくなるなんて心配がない。

 いや、いつの頃からかって間の部屋で寝るようになって2回目の朝からだったな。



 ゆっくりと閉じていた目を開けてフィリップはリリアンを見た。


 リリアンは押し倒した時のまま身を固くして・・・でも、みるみる顔が真っ赤になり、首や腕まで赤くなってきた。

 そしてフィリップのシャツの胸の辺りをまだギュッと握っている。



 もう何それ、可愛いが過ぎるんですけど。ねえリリィ、唇にするキスの意味は知ってるってことでOK?




 それで、ジッとしているってことは?


 OKってことでOK?


我慢の子フィリップが

とうとうリリアンにキスしちゃいました


途中登場するのは

短編「ルネの猫」のルネとカトリーヌです

あれから少しは仲良くなったようですね


その内、続きが書ければいいのですが

ブクマ200は遠くて無理っぽい

ルネ、スマンが片思いでいてくれ

_φ( ̄▽ ̄ ;)



いつも読んでくださいまして、どうもありがとうございます!


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