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7話 ニコラと家族会議

 ふう、と息をついて両親が成績について誤解をしていないか表情を伺うと、母は俯いて胸を抑え父の腕に縋っている。苦しそうだ。


「っおう」


「母上?体調が悪いのですか」


 近寄ろうとすると顔をバッと上へ向け、拳を作ると嬉々として上下上下しながら早口でまくしたて始めた。


「もぉ、もぉっ、殿下、いったいどしたの、どしたの、高等部の進学式のときだって私たちの前では無表情、いえ、それを通り越して目が死んでいたのに。公式行事でしかキラキラ見られないのよって奥様方が言ってたのに、今日は笑顔のキラキラ大盤振る舞い。初めて見た〜!殿下ご機嫌顔初めて見た〜。リリィちゃん、殿下のハート射止めちゃった?いやいや、まだ6歳よ?でも、そうなの、そうでしょ」


 母上が壊れた。

 殿下も壊れてたけど。


「大丈夫だ、国王のリュシアン様が若い時も学園で度々ジョゼフィーヌはこんな風になってた。言うだけ言ったら戻るから」


 大丈夫なんだ。


「だけど、リリィちゃんは至近距離であのご尊顔と対面して、更に笑顔でおしゃべりして、近い近すぎてまばゆい、普通目が潰れる。ああああ、そうだったお膝に乗ってた!ああああ!抱っこもされてたわぁ、うわわ」


 本当に大丈夫なのか。


「いくら小さくても女としてあのシチュエーションに動じないなんておかしいわ。厳つい男にばかり囲まれて育ったから、リリィちゃんの美的センサー壊れちゃってるのかしら?ねえあなた、心配ね」


「母上、壊れているのはあなたですしっかりして下さい。あと失礼な。私だってリリィのセンサーを壊したりしませんよ。学園では一部のご令嬢から素敵と言われているのですから」


「一部のその方達、なんて言ってるって?」


「・・・。『筋肉がすてきよね〜』と」


「でしょうね」



 そこで話が落ち着いたとみたのかクレマンが腕に縋り付いたままのジョゼフィーヌを屋敷の中へ歩かせながら言った。


「殿下からのお話だが、結論から言うと誤解を生みそうなので最初から順番に聞いてくれ。そして直近のお茶会の対策、我が家での意思統一について話し合おう」


 せっかくなので3人は密談っぽく執務室に来てみた。


「殿下は妹のような交流をお望みだ。そして少なくとも月イチで会いたいらしい。お出かけもしたいらしい。花祭では我々も一緒に離宮に招待するとおっしゃっていたし、来月下旬には我が領に訪問・・・・、工房に行く為と言っていたがこれもどうせリリアンの顔を見ずに帰るとは思えないからな、しかし我が伯爵家本邸でも王太子様をお招きするなど恐れ多い(今日はサラッと来てたけど)だいたい何を準備すれば良いのやら。最も高級な宿でもな〜、我が領は観光地ではないからちょっとな〜。立て直させる、のは間に合わないか」


「あなた、あなた〜。また考え過ぎて独り言になってるわ。いいじゃないの、本人が来たいんだから文句は言わないわよ。安全面も自前の護衛を連れてくるのでしょうし。試験休み明けなら多少猶予があるわ。邸の客室を大至急リフォームして、付け焼き刃でもマナー講師を呼んでみっちり全員鍛え上げましょう。訪問は今回だけで終わらないかもしれないもの。すぐにエリックに指示しましょう」


「それより、血縁関係のない令嬢を妹と言って連れまわすなど前代未聞だろう?名誉なことだと思うのはうちだけでやっかまれて外聞の悪いことにならないかと思ったんだが、ニコラが良い事を思いついてね、対外的には婚約者候補という発表をしようと言うんだ」


「待ってあなた。対外的って、どこをどう見ても殿下のあの豹変ぶり。リリィは完璧に『愛され婚約者』で良いしょう?何を妹とか血迷ったことを言って全く回りくどい!」


「しかし冷静になって考えればリリィはまだ6歳だぞ、早くもハイエナ達が!くそぉ!!」


「父上、冷静になってませんし脱線し過ぎです。殿下の申し出を断る選択肢は我が家にはないでしょう。現在もっとも問題なのは、先に決まっている侯爵家からのお茶会をどうやって関係を悪化させずに無事に乗り切るかです。しかしこれも殿下の婚約者候補になったと陛下に認められ発表が間に合えば侯爵家も殿下と競り合うわけにいかず相手が黙って引いてくれるでしょう。プライドがあるのです、ごねることはありませんよ。あと殿下と侯爵をハイエナ扱いするのは不敬です」


「まあニコラ、あなた脳筋かと思ったら問題解決能力が案外高いんじゃないの?お父様より領地経営に向いているかもね。我が領もこれなら安泰ね安心したわ。この人ったら芋づる式に独り言に入っちゃうから話が長くて解決の糸口がこんがらがってもつれちゃうのよ。で、後は大抵は私に丸投げよ」


「丸投げではなく、信頼して任せているんだよ?ジョゼフィーヌぅ」


「私は脳筋ではありません。それから提案ですがリリィには婚約云々は言わない方がいいでしょう。変に意識してリリィの態度が変わると殿下の気持ちが離れるかもしれませんから。殿下は女性に関することに非常に繊細です。こちらからは常に受け身で自然にいくのが望ましいでしょう」


「女嫌いという噂ですものね、私も自然体がいいと思うわ。しかし、いくら女性が嫌いで親しくすることがなかったと言っても恋と兄妹愛の区別がつかないなんて、殿下もお子ちゃまね〜」


「母上、不敬です。大丈夫かな本邸に殿下を招いて。母上もマナー講座をしっかり受けておいて下さいね」


「はぁい」


「不満げに返事しない」


「はいはい、これではどっちが親か分からないわ」


「んじゃ解散!」ニコラの一声で家族会議は終わった。




 一方、その頃のリリアンといえば、自室でお絵かきをしていた。


 背景にいっぱいキラキラ星を飛ばしたフィル兄様の絵を。

リリィちゃんの目にもキラキラして見えてたみたいですよ〜

 _φ( ̄▽ ̄ )



登場人物紹介


エリック ベルニエ伯爵家の家令です

 領地にある本邸にいます

 何でも任せておけば万事うまくやります


ここまで読んでくださいまして、どうもありがとうございます!


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