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67話 ニコラとパメラ

 部屋の外まで来ていたエミールは話がひと段落着いたと見て声をかけて入室した。


「ニコラ、遠くまで大変だったな」


「ああ、エミール久しぶり。リリアンが世話になる」


 ここ 2、3年でエミールはその存在感を増していた。ニコラもそれを知っている。


「いや、こちらこそ。

 そうだ、まだ紹介されていないようだから私からさせてもらおうかな。ここに立っているのはこの度リリアン様の専属女性護衛の任に就いたパメラ・バセットだ」


「えっ?パメラ・バセット!?あの?」


 見慣れない真っ赤な髪をした鋭い目つきの騎士服の女性、だけどよく見るとその顔は確かにパメラだ。


 パメラは子供の頃から殿下一筋だったのに、殿下の婚約者候補であるリリアンの護衛とか大丈夫なのか、一番危険な人物をどうして側に付けることにしたのか。殿下が一番判ってるはずなのに。


 フィリップの方を見ると今はリリアンの横に立ってその表情は困ってる様子はなく、落ち着いてなんなら笑みさえ浮かべて事の進展を見ている。



「そう、私の妹のパメラだ。

 パメラ、お前の憧れの君、長年慕い続けたニコラ様に挨拶を」


 ニコラの後ろで何やらどよめきが。

 エマとリリアンが両手を口に当て見守る様子が手に取るように伝わってくる。


「まあ!」

「パメラがニコラ様を?」エマは小声だがワクテカなのが丸わかりだ。


 絶対ここにいる奴ら全員、事の成り行きを面白がってるに違いない。



「リリアン様の令兄ベルニエ様、私はこの度リリアン様の専属女性騎士に任命されましたパメラ・バセットです。誠心誠意リリアン様をお守りしますどうぞお見知り置き下さい」とエミールの悪ふざけのようなフリに動じず、ごく真面目に挨拶をした。


「ああ、・・・よろしく」そんな風に言われたらこう応えるしかない。



 そう言えばパメラからも婚約の申し込みが本邸に届いていたんだった。マッハで送り返してはないと思うが流石にもう返事は届いているだろう。が無視するのもアレだから一応断りを入れておいた方がいいかな。


「あの、バセット嬢から釣書を送って貰っていたんだが」


「ええ、送らせていただきました。少しでも印象を残せれば学園で共学になったときにお声をかけていただける事があるかもしれないと考えてのことでしたが2週間ほど前に学園は退学しました。なのにこのようにお話する機会が持てるとは僥倖です」


 確かにあの金ピカの封筒は印象的だったが、だからと言って話しかけるキッカケにはなりそうになかったが・・・。余計、近づかない自信がある。



「実は私はもう婚約する予定の人がいるんだ、だから」


「ええ、存じております。ソフィー・オジェ宰相令嬢ですね。

 すっかり有名になっておりますよ。

 試験が終わった翌日に手を繋ぎ、カフェでお茶をしたあと劇場で何をしてたかと。あなたは目立つのですからもっと人目を気にされた方が良かったですね。

 数日後、宰相がひどく荒れていたとか耳にしましたし。

 既にF&Nファンショップに2人がカフェデートしている萌え絵なるものが出て、もうその場にいない人にも知れ渡っていて最早知らないのは本人のみという状態でしょうね」


「ええー?何それ?は?どこまで?宰相が?あと萌え絵って何?」


「どうどう、落ち着いて下さい、親分。

 噂になっているのはボックス席でしていたことですよ。萌え絵っていうのはセントラル広場にブルーとイエローのストライプテントでゲリラ出店するフィリップアンドニコラファンショップの商品です。

 普段は姿絵なんですけど今回は花祭の殿下とリリアン様、デート中のニコラ様とソフィー嬢の初めてのカップル絵が出品されたとあって倍の値でもめちゃめちゃ売れて長蛇の列だったという話ですよ。私も見ましたがよく描けていましたね。ただしどちらも女性は後ろ姿になってましたが」


 ちょっと待て、ツッコミどころが多すぎて追いつけない。


 あのボックス席でやってしまったことは自分で最後まで至らなかったことを褒めたいとさえ思っていたが、こうして聞くと今更だが失敗したと思わざるを得ない。


 彼女の為を思うなら、場所を弁えるべきだった。



 その上フィリップが首を突っ込んで来た。


「ちょっとちょっと、パメラそんなことは早く教えなさい。リリィ、明日セントラル広場に僕らの絵を買いに行こうか。僕らが並んでる絵も描いて貰いたいね」


「はい」リリアンも嬉しそうに返事を返す。



「いえ、ゲリラ出店なのでいつ店を出すか分かりませんよ。たぶん絵がある程度描けたら出すのでしょう」


「なるほど、広場の警備に店が出たらすぐに知らせるように言っておこう」


「逃げ足も速いからこそのゲリラ出店です。許可なく殿下の絵を売っているわけですから親分が広場に来た時や警備が出るときは店を畳むか他の商品を売るような擬態をしますから平民女性の格好で広場に張っておくのが正解だと思いますね」


「なるほど、なるほど」


 フィリップはリリアンとどんな絵を描いてもらおうかと相談し2人の世界に行ってしまった。



 ニコラは改めて言った。

「しかし、てっきりお前は殿下が好きなんだと思っていたのに。私のことは邪魔だといつも睨んでいただろう」


「貴族の令嬢は大抵親から殿下に気に入られろと言われて育つのですから。しかしすぐに自分には分不相応の願いだと気づく訳です。

 それに私が親分のことを睨むわけがないではないですか羨望の眼差しで食い入るように見つめていたと解釈下されば幸いです」


「ちょっと待て。そのちょいちょい挟んでくる親分っていうのは何なんだ」


「よくぞ聞いて下さいました。実は私、ずっと護衛という職に憧れていまして、その頂点は王族方の護衛。まさに私の理想の姿それを体現なさっているのが親分なのです!

 だから尊敬し、憧れ慕い続けているのです。主君の信頼を受け絶対的な強さを誇るその姿!ぜひ親分と呼ばせて下さい。子分にしていただきご指導いただければこれほどの喜びはございません」


「慕うってそっち?

 親分なんて嫌だよ悪いやつの親玉みたいじゃないか」


「では師匠!」


「うっう〜ん、親分よりまだマシなのか」


 パメラの表情がパッと変わった。心底嬉しそうだ。

 笑うと怖い目の眦が下がって人懐っこい顔になるの止めろ。どうやら化粧で目つきをより悪く見えるように修正しているようだ。


「師匠〜っ!

 これからはパメラとお呼びください。このパメラ師匠の一番弟子としてリリアン様の護衛として立派になるよう精進します!」



 ああ、なんか勢いに押されていいように丸め込まれてしまった・・・。


 そんなのもう師匠失格じゃない?失格にして。




 それを見届けてエミールは「良かったな」と笑って去って行った。あいつ何しに来たんだ。



「師匠!これからご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします!!」と珍しくにこやかに心中丸分かりな様子で言ってくる。


「はぁ、分かったよ。よろしくな」


 たまにでもこいつに付き合わないといけないなんて、あ〜面倒。

 だけどパメラはリリアンと始終一緒にいる事になるのだから、良好な関係を作っておいた方が良いと諦めて受け入れる事にした。その師弟関係とやらを。



 この後、殿下は執務に戻りリリアンとパメラは昼食までの空き時間に遊戯室に行って少し身体を動かすつもりらしい。


 そんなことを言って2人で体術の訓練でもするつもりだろう。パメラにリリアンが強くなり過ぎるとイメージが色々と崩れるからほどほどにしとけよと言って自分は帰ることにした。


 ニコラの言うことを直立不動で「はい!師匠!!」と受け賜るパメラがちょっと面白くてクセになりそうだった。

師弟関係が結ばれました

_φ( ̄▽ ̄; )



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