61話 久しぶりのフィル兄様
初めて開く間の部屋へのドア、いやさっきエミールが開けたから僕としては初めて入る間の部屋。
知識としては知っている。わざわざここに別に寝室が設けてあるのは2人で使うためで。
そこは窓が1つ、ドアが両側から1つずつ、それにベッドとサイドテーブルに浴室があるだけだった。
この部屋がここにあるのは、それぞれの私室は侍女や使用人達が朝から夜まで多く出入りするからだ。だからここは直接外から入って来られないようになっていて、2人のプライバシーが守られるようになっているんだ。
うん。なんかグッとくる作りだ。
なんだか探検に来た気分になっていたけど、そうじゃない。リリィが寝てしまう。
リリィ側のドアをノックした。
「リリィ、もう寝てる?フィリップだよ。今帰ってきたんだ」
「フィル兄様?」タタタ
気配がしたけど、その後音沙汰がない。あれ、入っていいのかな?
またタタタと気配がしてドアがカチャリと開いた。
リリィの頬が赤い。テレてるようだ。
「フィル兄様!お帰りなさいませ。私、向こうかと思って外に出ちゃいました。でもジロー様しかいなかったからビックリしました」
ジロー(※)はリリアン専属護衛隊の1人だ。
(※既婚)←ここ重要
「リリィ、ジローにその姿を見られたの?ダメだよ外に出ちゃ」
そう言ってリリアンの身長に合わせて片膝をついて、その手をとる。
「はい。私、自分で開けたことが無かったのでドアが重くてびっくりしました。ジロー様も私が急に出て来たからびっくりなさってたけど、間違えましたってすぐ引っ込んで来たからあまり見えてなかったと思います」
「そうかな。ジローの目を潰すか、もしくは記憶が無くなるまで・・・。
まあそれは後でいい、こっちから来られるのは僕もさっきまで知らなかったからリリィも分からなくて当然だよ。どれ、顔を見せて。元気にしてたかい?何か困ったことは無かった?」
「はい、元気です。フィル兄様は元気でいらっしゃいましたか」
「ああ、少々疲れてたけどリリィの顔を見たら疲れもどこかへとんだよ」
「本当にその疲れを全部とって差し上げられたら良いのですけど」と言ってふふっと笑った。
うわ、可愛い。久しぶりだから免疫切れてる!
フィリップは堪らずリリアンをギュッと抱きしめた。
「リリィといると疲れがとれるよ本当だよ」
はぁ〜、可愛い。癒される。
もうこのまま顔をうずめて・・・したい。
「そういえば、僕の部屋にオコタンがいたけどリリィが置いてくれたの?」
「いいえ、あの・・・オコタンを捨てるように言われて。それでパメラ様が助けてくださってフィル兄様のお部屋に避難させてくれたのです」
「オコタンを捨てる?誰が言ったんだ?」
ちょっと怒って怖い口調になってしまうフィリップ。
オコタンを捨てるなんて許さん!
「えっと・・・」リリィはその者がフィリップに咎められるかもしれないと思ったのか言いにくそうだ。
そこで邪魔にならないように遠く後ろの方に立っていたエミールが声をかけた。
「リリアン様、私の愚妹パメラが一昨日から護衛に付いていると聞きましたが何かご迷惑をおかけしてはいませんか」
「いいえ、ちっとも!パメラ様とまだあまりお喋りできてないんですけど、とーっても良い方です。パメラ様がいてくださって本当に良かった!私、早く親しくなりたいのだけどなかなかお話する機会が無くて!」
「そうですか、それは良かった安心しました」そう言って、こちらを見たフィリップにうなずく。リリアン様に何があったか詳しいことはパメラに聞こう。
フィリップはリリアンに視線を戻し、
「リリィ、ちょっと指輪がキツそうだね。気がつかなかったけどこれを贈った後で大きくなっていたんだった。明日サイズを測って新しいのをオーダーしよう」
「ありがとうございます。ちょっとキツくなっていたから」と2人で指輪に目を落とす。
フィリップはその手を持ち上げて指輪にキスをした。流れでうっかりリリィにもキスをしそうになってすんでで止まる。
リリィ、逃げないの?
逃げなきゃダメだよ。
困った。
疲れているせいか、ストッパーが緩んでる。
逆にリリアンがフィリップの首に腕を回して抱きついてきた。
「フィル兄様、ようやく会えました」
「そうだね、明日からはこっちにいる予定だよ」
「では、殿下、リリアン様私はこれで先に失礼します。急用を思い出しましたので。
ゆっくりお休み下さいませ」とそこでエミールは2人に声をかけて辞去した。
待てないほど、長かったかな。
それとも気を利かせてくれたのか。
もう遅い時間だ。
「リリィ、今晩はここで一緒に寝よっか。シャワーを浴びてオコタンを連れてくるから待ってて。眠たかったら先に寝てていいからね」
「はい!」
ベルニエからの帰りの宿でずっと一緒に寝ていたおかげで、いやらしくなく自然に誘えた・・・はずだ。
ジローの身が心配です
_φ( ̄▽ ̄; )
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