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56話 宰相の独り言

 娘の試験明けの休日、私も久しぶりに休みでゆっくり家族と家で過ごそうと楽しみにしていたのだが、ブリジットがソフィーは今日は予定があるから居ないわよという。


 朝早くから部屋で侍女達とお出掛けの支度に余念がなかったソフィーは私が今日は家に居ることも気がつかなかったようで顔も見せずに出かけてしまった。


 まあいい、たまにはこんな日もある。年頃の娘が友達と出掛けもせず家にこもってばかりでも心配だからな。



 などと言ってゆったり紅茶を楽しんでいる場合ではなかった。


 夕方近くになり家に戻って来たソフィーは・・・。



 上気した顔で頬はツヤツヤ、瞳はキラキラ、たまらない喜びに満ちた表情で帰って来た。

 よく見ると髪の乱れが直しきれていない。


 お目付役の侍女に目をやるとチューンと縮こまった。


 何かあったな、これは。



 というか明白だろう!!!



 後で侍女に私の書斎に来るよう呼んで尋ねると今日はニコラ・ベルニエ と一緒だったという。

 いつの間に知り合っていたのか花祭の時にはそんな素振りはふたりともなかったが。


 そして侍女に話を聞くに連れ私は血の気が引いた。


 侍女は観劇の間、ボックス外の控えの間にいて娘の傍を離れていたというではないか。そして終演後ニコラ・ベルニエ に呼ばれてボックスに入るとソフィーが・・・ソフィーが自分でどうしようもないほど服も髪も乱れていたと。


 そして吸引性皮下出血が服で隠れるところ全身に入っていたというのだ。娘の話でそこまでは聞きたくなかったぞ生々しい。


 くそう、ニコラ・ベルニエ あの野郎〜っ!!

 うちのソフィーになんてことをしてくれやがった!


 もう頭から湯気を立ててシュンシュン沸騰中だ。



 呼び出して文句を言おうにもあやつは今殿下とベルニエ領だ。幸運なやつめ命拾いしたな!帰ってきたら覚えておれ。




 と、そう思っていたこともありました。



 数日経って、ブリジットにも「ソフィーの幸せを考えてあげて、それに私たちの若い頃を思い出してみて?」と寄り添われたら怒り心頭だった私も強いことを言えなくなった。


 ソフィーは見るからに雰囲気が華やいでドレスを作ったり、刺繍をしたり、侍女達と話す様子も楽しげだ。


 確かにこちらは花祭の直後にベルニエ伯爵本邸に婚約の申し込みを送っていたのだ。百歩譲ってこれは喜ばしいことだと思っていいのかもしれない。

 正式にと思って本邸に送ったがタウンハウスにいるのが分かっていたのだからそっちに送れば返事がまだかとこんなにやきもきすることも無かったのだが・・・後悔しても今更だ。


 こうなったら断ってきたらタダじゃおかんぞ。


 早よ帰ってこんかニコラ・ベルニエ !!





 ところで我が息子マルタンはあんなに自分が2人のキューピットになると息巻いていたのにいったい何をしているのだ。もう花祭からどんだけ時間が経ったと思う?

 今は相手が不在だから何も出来ないのはともかく、ソフィーの様子を見ればそんな世話はもう用無しだと分かるだろう。


 いまだにブツブツと「図書館でバッタリ恋のご教授大作戦」だの、「うきうきわくわく幽霊屋敷で怖いの助けてラブラブ大作戦」だの言ってあれじゃないこれじゃないと頭をひねっているが、もうとっくにお前の出る幕は無いぞ。


 はぁ、あれで宰相が務まるのか、いまだにソフィーの様子が変わっているのに気がついていないのだからそんなに鈍感では国の明暗を左右する事態になっても気がつかないだろう。



 とうことで今回の件でほぼ腹が決まった。


 次期宰相候補にソフィーの幼馴染シリル・マルモッタンを推そうかと思っている。

 宮殿務め希望だと聞いているしあれは気が効く有能な男だ。まだ学生だがうちうちに打診しておいて卒業したら補佐につけ勉強させればいいだろう。


 大体、殿下と同い年の世代は有能な者が少ないとか年上には有能なのがごまんといるのになどという噂は自分の息子達を国の重要ポストに付けたいあまり王太子様の同い年で側近を固められると困るカルメやバタイユが流したものだ。

 出産ブームで最も人口比率の高い殿下世代にも有能な者が沢山いると考える方が自然だ。今はゼロだがこの世代をもっと国の中心に起用しければならないだろう。



 私の息子に私の後を継がせることが出来ないのは残念だが元々宰相職は実力主義で親から子へ引き継ぐものではないのだ。マルタンがやりたがっていたので、つい甘やかせて私の補佐につけてしまったが。

 急な配置転換でいまだにごたごたしている宮内相のポストにでも付けておくか。手が足りずしょっちゅうヘルプに行って向こうの仕事の方が詳しくなってるくらいだからちょうどいいだろう。なんだかすごい名案な気がしてきたから陛下にすぐ相談しておこう。




 マルタンに宮内相への起用を打診したら自分が国内過去最年少の重要ポスト着任記録を5年も更新することになると喜びに打ち震えていた。それを見て私が自分で蒔いた種なのだが、宰相じゃなくても良かったのかとちょっとガッカリした。



 まあ、まさか妹とニコラ・ベルニエの仲をとりもてなかったことが宰相になれなかった理由とは思ってもいないだろう。 ソフィーが恨まれても可哀想だからそれでいい。


 我が息子ながらマルタンが素直な良い子で良かったよ。

初デートは親にモロバレしてた

おそろしや・・・

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