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39話 馬具専門店でお買い物を

 フィリップの愛馬はリピッツァナー種。真っ白で気品溢れる名馬だ。


 名はレゼルブランシュ。白い翼という意味だ。細身で敏捷。軽快に飛ぶように疾るその姿は麗しい王太子フィリップにピッタリだ。


 ニコラの愛馬はハノーバー。真っ黒で力強く立派な体躯が美しいこれも名馬だ。


 額に白く入った斑紋が稲妻を思わせるから名をエクレールという。閃光とか煌めきという意味もあり、ニコラはそっちの意味がこの馬に似合っているとお気に入りだ。


 一方、リリアンのラポムは・・・どうやら砂遊びが大好きらしい。灰色かと思っていたが汚れていただけだった。


 朝洗ってやりブラシをかけると見事な毛並みが現れた。


 神々しいほど艶やかなまばゆい光沢の毛並みを見るとアハルテケにも似ている。色は黄金というより銀色だが。ただ記憶のアハルテケより若干脚が太めで短い気もする。そのせいで逆に可愛さが倍増しているかも?


 しかしラポムは小さいながらその立ち姿はレゼルブランシュやエクレールと並んでも見劣りしない堂々としたものだった。


 皆で馬具専門店に向かっていた。


 フィリップとニコラはそれぞれ騎乗していてラポムはその後ろを歩いている。この一団の一員となったことが誇らしいかのように意気揚々と!


 だけどリリアンだけは馬車だ。帰りは荷物が増えるので2人乗りで行くのは諦めた。



 馬車の横でフィリップがリリィを見てニッコリと王子様スマイルで笑いかけてくれる。


 うう、リアル白馬の王子様!なんて王子様な事をなさるの?フィル兄様〜っ!!



 麗しい王太子フィリップの前を威風堂々とした領主の嫡男ニコラが先導する。


 フィリップとニコラはお互いを引き立て合う真逆のルックスだが、愛馬に乗ると更にお互いにその素晴らしさ引き立てあってしまうのだ。


 馬車の前後にはやはり騎乗した凛々しいリリアン専属護衛隊の皆様がゾロゾロと。


 いったい私、何様なの?



 王太子がベルニエに来られている事は日に日に人の耳に入り、今も行く道沿いに大勢の人たちが立ってこの一行を見物しているのだ。


 もう一度言う。私、何様?


 いたたまれない。

 みなさん、あなた方の領主の娘がね、ただ馬具を買いに行っているだけですから、そんな風に笑顔で手を振ってきたりしないでお願い。


 ニコラから昨日の内に王太子とその婚約者候補が馬具を買いに行くと伝えてあった為、今朝早く町には号外が出ていた。おそらく情報源はこれから行く馬具屋だろう。



『フィリップ王太子様と婚約者候補となった我が領主様の御令嬢リリアン様が馬具専門店シェルリへ本日お揃いでお買い物に!!』


 リリアン様〜と沿道から声がかかる。内心困りながらも笑顔で手を振り返す律儀なリリアンだった。




 馬具専門店シェルリに着いた。


 ベルニエは皮革や革製品も生産していて、特に馬具は近隣だけでなく広く供給している。

主に騎士団用だが今日訪れた店は貴族に向けた趣味用の高級品も置いている。


 ニコラは店主にリリアンが使う横乗り鞍はあるかと聞いたが貴族女性は普通は乗馬をしないので女性に向けた横向きに座る鞍は1つしかなく、それは仔馬に合う小さい物ではなかったので使えなかった。

 なので男性用の鞍にした。男性用は子供向けまで揃えてある。


 リリアンは横座りより前を向いて座る方が自然な気がしていたのでその方が良かった。


 ラポムのサイズに合う、仔馬用のブライドルレザーの頭絡は黒色の物ばかりだったので、それに合わせてラポムに装着する鞍などは全て黒色にした。


 その黒色がラポムに似合わないわけじゃないけれど、リリアンが使う物ならもっと可愛い方が良かった。それでもフィリップは「可愛いのは無いんだ」と残念そうに言っただけだし、リリアンは満足していたのだが店主は汗をかきかき平身低頭で言った。


「これからはリリアン様に喜んでいただける商品作りを致しますので、是非、是非にまた起こし下さいませ!!」



 それから間もなく「ラ・プランセス・リリィ(リリィ姫)」という大人の女性から女の子に向けた最高級皮革を使った高級馬具店が生まれた。


 後の超一流ブランド『ラ・プランセス』が生まれた瞬間だった。


 ブランド名は可愛くても、もちろん男性が使ってもOKだ。商品展開が広く品質が良いので好んで使う男性もいて逆にお洒落な人だという印象だ。


 細かいサイズ展開にカラフルな色合い、可愛さと気品を併せ持ちシンボルはリリアンにちなんで百合だ。そのシンボルはお店の看板にもなっている。



 ブランド発足の数年後には、もう百合のシンボルが型押しされただけで、馬具でなくても鞄もバカ売れ。しおりだろうがペン立てだろうが何でもかんでも売れまくる。


 婦女子の乗馬がブームになり、乗馬をしない人までもそのグッズを持つのがステータスとなるのだ。


 特にラポムシリーズと名付けられた赤いリンゴ色は別名「花祭リボン」とも呼ばれベストセラーになる。



 それから別の店にウェアを買いに行くと・・・以下略。



「ル・ポミエ(りんごの木)」という高級ブランドが生まれた。もちろんラポムとリリアンに由来する。シンボルはりんごの木の下に仔馬と女の子が立っているという・・・以下略。



 ル・ポミエのシンボルやロゴが入っているだけで・・・以下略。




 もうすぐニコラは王太子の婚約者候補というリリアンのブランド力に恐れおののく事になるのだ。





「フィル兄様、こんなに沢山買って下さってどうもありがとうございます。さっそくラポムと乗馬の訓練をして早く一緒に走れるように頑張ります」


「いいんだよ。リリィにお土産を持って来ると約束したのに、準備が間に合わなかったから本当にごめんよ、これで勘弁しておくれ」


 勘弁だなんて、そもそも怒っていませんし。それに本当に色々な物が必要ですごく大量な買い物になったのにフィル兄様が全部買ってプレゼントして下さった。予備までも買って下さって、いくら王太子様でも申し訳なさ過ぎるわ。


 リリアンはせめて早く一人前にラポムを乗りこなせるようになることを心に誓った。



 さっそく戻ってフィリップに馬との信頼関係の結び方や安全の為に注意することを教えてもらう。それから馬を引いて歩いてみたり、少し馬場でラポムに跨り正しい姿勢、手綱の持ち方なども教えてもらった。指示を出すのは明確に。初めてのことで覚えることが盛りだくさんだ。


 ラポムはリリアンを乗せて楽しそうで従順だ。逆にラポムからリリアンを気遣う思いやりを感じてしまう程で初めて乗るにはとても乗りやすく相性が良いと言えるだろう。


 それでもさすがに慣れない姿勢と動作で最後にほんの少し歩かせてみただけで、リリアンでもひどい筋肉痛になりそうだ。



 ディナーの時間が近い。夕刻近くになると風が強くなってきた。雨雲が近づいてきている。天気が悪くなりそうなので屋敷の中で食事をとることになったと、さっき使用人が伝えに来た。


 フィリップが汗を落とし、着替えて夕食の時間までを過ごすためにリビングに入ると、ニコラと両親がテーブルを挟んでソファに座って話をしているところだった。



 ニコラの前、そのテーブルには書簡が崩れそうなほど高く積まれている。


 これは多分アレだろう。釣書の山だ。

りりあんはいんふるえんさーになる?

_φ( ̄▽ ̄; )




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